
結論: 2025年の訪日外客数は4,268万人で過去最高、和歌山県の外国人宿泊客数も71万3,562人泊で過去最高でした。ただし2026年に入ると様子が変わり、中国からの旅行者は1〜7月で前年同期比56.3%減、全体も1.7%減です。南紀の事業者が今週やるべきことは「過去最多」に浮かれることではありません。自店の客層が白浜型(中国・アジアが中心)なのか田辺型(欧米豪が中心)なのかを数字で確かめ、取りに行く国を2つに絞ることです。
この記事の要点 対象読者: 和歌山県(特に田辺・白浜・新宮・みなべ・串本・那智勝浦・御坊)で宿泊・観光・飲食・小売・農水産を営む事業者と、現場の責任者 読了後にできること: 公表済みの一次情報から自分の町の客層を数字でつかみ、取りに行く国・単価帯・予約経路を絞り込んだうえで、今週中に受け入れ準備の最初の一歩を踏み出せる状態になる
「外国人のお客さんは増えているらしいですね。うちには、まだ来ていませんけど」
そんな言葉を耳にすることがあります。ニュースは「過去最多」「過去最高」と伝える。けれど自分の予約台帳を見ると、去年と大きくは変わらない。この落差は、どこから来るのでしょうか。
理由ははっきりしています。全国の数字と、あなたの町の数字と、あなたの店の数字は、まったく別のものだからです。全国では中国が最大級の市場ですが、熊野古道沿いの宿ではオーストラリアとアメリカのほうが多い。白浜のホテルでは中国が圧倒的に多い。同じ和歌山県内、車で1時間の距離でも、来ている国の構成がまるで違います。「訪日客が増えた」という一行のニュースからは、この違いが読み取れません。
もう一つ厄介なのは、2025年の数字と今の数字が同じ方向を向いていないことです。2025年は過去最高でしたが、2026年に入って最大市場の中国が急減しました。過去の統計をそのまま将来の予測に使うと、仕入れも人員配置も外します。
この記事では、日本政府観光局(JNTO)・観光庁・和歌山県が公表している一次情報だけを使って、南紀の事業者が今週進める7ステップと、そのままコピペで使える8本のプロンプト、受け入れ準備のチェックリストをまとめます。手元に「去年、外国人のお客様が何組来たか」の記憶を1つ用意しながら読み進めてください。
目次
まず結論:訪日統計を自店の打ち手に落とす7ステップ(即効テンプレ)
最初に全体像です。設備投資も新しい契約も要りません。7つとも今週から着手でき、5つはスマホと無料のAIだけで終わります。
| ステップ | やること | 今日できる最初の一歩 |
|---|---|---|
| 1. 客層の把握 | 自店と自分の町の外国人比率・国籍構成を1枚にする | 去年の外国人予約を国別に数える |
| 2. 狙う国を2つに絞る | 全部を相手にせず、伸びている市場を2つ選ぶ | 町の統計で上位2つを書き出す |
| 3. 予約経路の確認 | どの経路から来ているかを確かめ、直販の受け皿を作る | 海外OTAの管理画面を開く |
| 4. 多言語の掲示 | 掲示・メニュー・館内案内を選んだ2言語で用意する | 一番聞かれる質問を3つ書き出す |
| 5. 口コミとGoogle | 外国語の口コミに全件返信し、地図の情報を整える | 未返信の外国語口コミを数える |
| 6. 単価を上げる商品 | 値上げではなく「体験」で客単価を上げる1品を作る | 自店にしかない体験を1つ選ぶ |
| 7. 現場ルール | 決済・免税・トラブル時の対応を紙1枚で決める | 使える決済手段を書き出す |

ポイントは順番です。多くの事業者はステップ4(翻訳)から始めます。ところが、来ていない国の言語で掲示を作っても効果は出ません。先に「誰が来ているか」を数字で確かめれば、作る言語も、置く写真も、載せる料金も自動的に決まります。
もう一つのポイントは、7つのうち5つが「増えても減っても価値が残る作業」だということです。客層の把握・予約経路の整理・口コミ対応・体験商品・現場ルールは、訪日客数が来年どう動いても資産として残ります。統計は毎年変わりますが、この5つは変わりません。
何が起きたか|2025年の訪日客数と和歌山の宿泊数(公表済みの事実)
まず用語を1つだけ整理します。ニュースに出てくる「訪日外客数」は、日本に入国した外国人の人数です。一方、県や市町村が発表する「宿泊客数」は、1人が2泊すれば2と数える延べ人泊です。単位が違うので、両者を直接比べたり足したりはできません。
公表が確認できた事実は、次のとおりです(参照日: 2026-09-06)。
- 2025年の訪日外客数は4,268万3,301人(2024年は3,687万148人、前年比+15.8%)。日本政府観光局(JNTO)が2026年8月19日に公表した資料に、2025年の確定値として掲載されています。2026年1月21日発表時点の推計値は4,268万3,600人でした
- 市場別(2026年1月21日発表の推計値ベース)は、韓国945万9,600人、中国909万6,300人、台湾676万3,400人、米国330万6,800人、香港251万7,300人、タイ123万3,100人、豪州105万8,300人
- 2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円(前年比+16.4%)、1人当たり旅行支出は22.9万円(同+0.9%)。観光庁が2026年1月21日に公表した速報値です
- 2026年に入って全体は微減しています。2026年1〜7月の訪日外客数は2,452万7,200人で、前年同期の2,495万5,693人から1.7%減。7月単月は344万2,100人(前年同月比+0.1%)で、7月としては過去最高でした
- 市場ごとの動きは真逆です。2026年1〜7月は、中国が248万6,500人で前年同期比56.3%減。一方で韓国656万9,800人(+20.3%)、台湾473万6,000人(+21.8%)、香港157万1,000人(+8.6%)、米国210万7,900人(+6.5%)、豪州64万3,100人(+4.2%)、フランス27万8,000人(+8.6%)はいずれも増えています
そして和歌山県です。和歌山県の令和7年観光客動態調査(速報値)(2026年4月23日資料提供)によると、2025年の県内の外国人宿泊客数は71万3,562人泊で、過去最高だった前年の51万293人泊を上回り、前年比139.8%となりました。県全体の宿泊客数は約547万人泊(前年比108.0%)、観光入込客総数は約3,392万6千人(同103.7%)です。

現時点で公表されているのは、ここまでです。2026年の年間値、2026年の県内市町村別の外国人宿泊客数、そして「2026年後半に中国市場がどう動くか」は、本記事の執筆時点(2026年9月6日)では公表されていません。ですからこの記事では、将来の予測ではなく、すでに出ている数字から自店の打ち手を決める手順だけを書きます。
和歌山の事業者への影響|同じ南紀でも客層はこれだけ違う
ここからが本題です。県の速報値には市町村別・国地域別の内訳が載っており、これを読むと「南紀」とひとくくりにできないことがわかります。
| 市町村 | 2025年の外国人宿泊客数(前年比) | 最も多い客層と、実務上の意味 |
|---|---|---|
| 白浜町 | 14万7,547人泊(135.9%) | 中国9万257人泊が最多。香港1万4,323人泊、台湾1万182人泊が続く。中国語圏の受け入れ設計が中心になる |
| 那智勝浦町 | 11万4,821人泊(142.3%) | 中国5万2,132人泊が最多、台湾1万3,235人泊。欧米豪も2万3,943人泊あり、二本立てになる |
| 田辺市 | 9万1,309人泊(132.9%) | 欧米豪4万6,438人泊がアジア3万8,541人泊を上回る。豪1万1,917人泊・米1万1,106人泊で、英語圏が主戦場 |
| 新宮市 | 2万2,040人泊(111.5%) | アジア1万516人泊・欧米豪8,349人泊が拮抗。豪2,433人泊は町の規模に対して大きい |
| みなべ町 | 2万8,913人泊(383.3%) | 前年7,543人泊から約3.8倍。母数が小さく振れ幅が大きいため、単年の数字だけで判断しない |

同じ紀南で、車なら1時間ほどの距離です。それでも、白浜町は外国人宿泊客の6割強が中国からのお客様で、田辺市は半分以上が欧米豪。全国ニュースの「訪日客が増えた/減った」を自店に当てはめられない理由が、この表に出ています。
参考までに、串本町・すさみ町・上富田町・太地町などは市町村別の内訳表では「その他」(4万7,314人泊・前年比203.6%)に含まれており、単独の数字は公表されていません。ただし主要観光地の入込状況では、旧串本町の宿泊客数が51万9,058人(前年比119.6%)と県内でも高い伸びを示しています。串本の宿・飲食店は、この2つを合わせて自店の肌感と突き合わせるのが現実的です。
いつから効くのか、という点も見ておきます。2026年1〜7月の中国は前年同期比56.3%減で、これはすでに起きている変化です。白浜町のように中国のシェアが高い商圏では、2026年の実績にすでに影響が出ている可能性があります。逆に、韓国・台湾・欧米豪はいずれも増加しています。田辺・熊野古道沿線のように欧米豪が主力の商圏は、追い風が続いている側です。

なお、白浜の宿泊全体に占める外国人の位置づけも把握しておくと判断が早くなります。旧白浜町の宿泊客数は181万7,488人(前年比105.8%)、白浜町の外国人宿泊客数は14万7,547人泊です。集計の単位が「旧白浜町」と「白浜町」で異なるため単純な割り算はできませんが、概算の桁感としては1割弱にとどまります。つまり白浜では、インバウンドは伸びしろであっても、まだ土台は国内客ということです。国内客の数字の読み方は白浜町の観光客数|326万人と309万人の違いと調べ方7ステップ【2026年9月】で、統計の種類ごとに整理しています。
今週やる7ステップ(完全版・プロンプト8本つき)
ここからは実務です。プロンプトはChatGPTなどの対話型AIにそのまま貼り付け、( )の中を自店の情報に書き換えて使ってください。無料のアプリで問題ありません。
ステップ1: 自店と自分の町の客層を1枚にする
最初にやるのは翻訳でも広告でもなく、現状を数字にすることです。「去年、外国人のお客様は何組で、どの国からが多かったか」。予約サイトの管理画面には国別の情報が残っていますし、記憶で構いません。そこに、上の表にある自分の町の数字を並べます。
あなたは観光地の宿泊・飲食の集客に詳しいアドバイザーです。以下の材料から、私の店のインバウンドの現状を整理してください。
【材料】
・業種と規模: (例: 白浜町の客室8室の旅館/田辺市の席数20の食堂)
・去年の外国人のお客様: (例: 年間40組くらい。台湾・中国・オーストラリアが多い)
・町の外国人宿泊客数と上位の国: (記事の表から自分の町の行を貼り付け)
・今できる外国語対応: (例: 英語の紙メニューのみ/翻訳アプリ)
出力: ①自店の客層と町の客層のズレ ②そのズレの理由として考えられること3つ ③最初に取り組むべきこと1つ。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
多くの店で、ここで初めて「町の主力とうちの主力が違う」ことに気づきます。田辺市の統計は欧米豪が過半なのに、自店の外国人客は台湾ばかり——というズレは、悪いことではありません。すでに取れている国が自店の強みだという発見です。
ステップ2: 取りに行く国を2つに絞る
全部を相手にしないでください。10か国分の掲示を作ると、どれも中途半端になります。選ぶ基準は3つです。町の統計で上位にいること、2026年に増えていること、自店の商品と噛み合うこと。
あなたは観光地のインバウンド集客の企画者です。以下の材料から、私の店が来年に向けて重点的に狙うべき国・地域を2つ選び、理由を示してください。
【材料】
・自店の業種・単価帯・強み: (例: 1泊2食1万8千円・海の見える露天風呂・地魚)
・町の外国人宿泊客の上位: (記事の表から貼り付け)
・2026年1〜7月の全国の動き: 中国-56.3%、韓国+20.3%、台湾+21.8%、香港+8.6%、米国+6.5%、豪州+4.2%
・現在の外国語対応: (例: 英語のみ)
・避けたいこと: (例: 新しい人を雇うこと)
出力: ①狙う2か国と理由 ②その2か国が求めそうな情報3つ ③今の対応で足りていない点2つ。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
注意点は、AIが出した「◯◯人はこういう傾向がある」という一般論を鵜呑みにしないことです。使えるのは、上の材料に入れた実数のほうです。国民性の話は仮説として扱い、実際に来たお客様の反応で確かめてください。
ステップ3: 予約経路を確かめ、直販の受け皿を作る
国が決まったら、次は経路です。同じ外国人客でも、海外OTA経由なのか、公式サイトなのか、旅行会社の手配なのかで、打つ手も手数料も変わります。海外OTAは国内OTAより手数料率が高い傾向があるため、リピーターだけでも直販に寄せる価値があります。
あなたは小さな宿・飲食店の経営数字に詳しいアドバイザーです。以下の材料から、私の店の予約経路と手数料の現状を整理してください。
【材料】
・先月の予約組数と経路: (例: 全32組。海外OTA 9組、国内OTA 14組、電話 6組、公式サイト 3組)
・海外OTAに支払った手数料の概算: (精算画面の金額。わかる範囲で)
・平均単価: (例: 1名1万2千円)
・外国語で対応できる窓口: (例: メールのみ)
出力: ①経路別の構成比 ②手数料の年間概算 ③2回目以降を直販に切り替えるために足りない仕組み2つ。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
手数料の実額の出し方と、直販比率の目標の立て方はOTA手数料一覧と実質負担の計算式|旅館・民宿の直販比率の上げ方【2026年8月】にまとめています。南紀の宿に絞った直販の作り方は南紀の宿が直予約を増やす方法|白浜・田辺・串本の実情に合わせた7ステップ【2026年8月】が具体的です。
ステップ4: 掲示・メニュー・館内案内を2言語で用意する
ここでようやく翻訳です。作るのはステップ2で選んだ2言語だけ。優先順位は、間違えると困るものからです。大浴場の利用時間、支払い方法、アレルギー、禁煙のルール、ゴミの出し方。美しい紹介文より先に、これらを整えてください。
あなたは観光地の掲示物を作るライターです。以下の日本語の案内文を、英語と( 選んだ言語 )に翻訳してください。
【材料】
・元の案内文: (館内ルール・注意書き・営業時間をそのまま貼り付け)
・掲示する場所: (例: 玄関、客室の壁、レジ横)
・伝わらないと困ること: (例: 大浴場の男女入れ替え時刻、現金のみ)
条件: 直訳ではなく、掲示物として一目で読める短い文にする/時刻・料金・電話番号は元の表記のまま変えない/【材料】にない設備やサービスは追加しない。翻訳に迷った箇所は末尾に一覧で示してください。
※そのままコピーして使えます
あなたは飲食店のメニュー翻訳が得意なライターです。以下のメニューを、英語と( 選んだ言語 )で書き換えてください。
【材料】
・料理名と価格: (そのまま貼り付け)
・主な食材: (例: クエ、うつぼ、めはり寿司の高菜)
・含まれるアレルギー特定原材料: (わかる範囲で)
・辛さ・生食の有無: (例: 生の魚を含む)
条件: 料理名は「ローマ字表記+短い英語説明」の形にする/価格は税込で元の数字のまま/【材料】にない食材やアレルギー情報は書かない/確認が必要な項目は末尾に「要確認」として一覧にしてください。
※そのままコピーして使えます
翻訳した文面を無料で印刷物・QRコードにする手順は飲食店メニューの多言語化はCanva+QRで無料|手順とチェックリスト【2026年8月】にあります。アレルギーと生食の表示だけは、AIの出力をそのまま貼らず、必ず調理担当が原本と突き合わせてください。
ステップ5: 外国語の口コミとGoogleの情報を整える
海外のお客様が予約前に必ず見るのが、Googleマップと口コミです。外国語の口コミが未返信のまま並んでいる状態は、それだけで「対応していない店」に見えます。返信は書いた本人よりも、これから予約する人が読んでいます。
あなたは観光地の宿・飲食店の主人です。以下の外国語の口コミに、丁寧で温かい返信を作ってください。
【材料】
・口コミ本文: (そのまま貼り付け。原文の言語のまま)
・評価: (例: 星4)
・お客様の利用状況: (例: ご夫婦・1泊夕食あり/ランチ2名)
・返信で伝えたい事実: (例: 指摘された英語表記は先週追加した)
条件: 同じ内容を「原文の言語」と「日本語」の2つで出す/言い訳をしない/お褒めには具体的に感謝する/指摘には感謝と改善を伝える/最後に再訪を軽くお誘いする。【材料】にない設備・サービスは書かないでください。
※そのままコピーして使えます
英語の口コミへの返信は型が決まっているので、慣れれば1件2〜3分です。場面別の文例は英語の口コミ返信 例文30選|ホテル・民宿・飲食店でそのまま使える【2026年8月】にまとめました。あわせて、Googleビジネスプロフィールの営業時間・写真・支払い方法を最新にしておいてください。ここは無料で、しかも予約直前の人が必ず通る場所です。
ステップ6: 値上げではなく「体験」で単価を上げる1品を作る
政府は消費額単価の目標を1人当たり25万円に置いていますが、2025年の実績は22.9万円です。単価を上げる方法は値上げだけではありません。その土地でしか買えない時間を商品にするほうが、南紀の小さな事業者には向いています。熊野古道の一部区間だけ歩く早朝ガイド、漁港の朝の見学、梅農家での収穫、みかんの木のオーナー制度。どれも設備投資はほぼ不要です。
あなたは地域の体験商品の企画者です。以下の材料から、外国人のお客様向けの体験メニューを5つ、表形式(企画名/内容/所要時間/想定価格/狙う客層)で提案してください。
【材料】
・場所と業種: (例: 田辺市本宮町の民宿6室/串本町の飲食店)
・自店にしかないもの: (例: 主人が漁師、裏山が熊野古道、梅畑がある)
・狙う2か国: (ステップ2で選んだ国)
・避けたいこと: (例: 通訳の常駐、大人数の受け入れ)
条件: 新しい設備投資が不要なものに限る/値引きではなく「その時期・その場所でしか得られない体験」を軸にする。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
注意点は、一度に増やしすぎないことです。まず1つ作り、口コミとSNSの反応を見てから次を作る。熊野古道沿線での受け入れ実務は熊野古道のインバウンド対応|沿線事業者の7ステップと免税制度の期限【2026年8月】で、沿線の事情に絞って解説しています。
ステップ7: 決済・免税・トラブル時の対応を紙1枚で決める
最後は現場のルールです。ここを決めておかないと、増えたときに現場が疲弊します。決めるのは3つ。使える決済手段、免税の扱い、言葉が通じないときの手順です。
免税については、2026年11月1日の販売分から制度が変わります。観光庁の消費税免税店サイト(新制度・リファンド方式)によれば、免税店は税込価格(課税)で免税対象物品を販売し、出国時に税関で持ち出しが確認された後に消費税相当額を返金(リファンド)する仕組みに移行します。免税店側には返金対応等の準備が必要で、利用中の承認送受信事業者への連絡が求められています。また、別送制度は2025年3月31日で廃止済みです。手続きの細部は変更されうるため、必ず公式ページで最新の案内を確認してください。
あなたは小売・飲食の現場マニュアルを作る実務家です。以下の材料から、外国人のお客様対応の現場ルールを紙1枚(A4片面)にまとめてください。
【材料】
・業種と体制: (例: 土産物店・パート2名・オーナー1名)
・使える決済手段: (例: 現金、クレジット、PayPay)
・免税店の登録: (例: あり/なし/検討中)
・よくある困りごと: (例: 予約なしの来店、閉店間際の来店、写真撮影)
・言葉が通じないときの道具: (例: 翻訳アプリ、指さしシート)
出力: ①来店時の手順5行 ②スタッフが判断に迷う場面と決めておく答え3つ ③やってはいけないこと3つ。【材料】にない設備・制度は書かないでください。制度の詳細は公式で確認するよう末尾に注記してください。
※そのままコピーして使えます
決済については「現金のみ」を貫くのも一つの判断ですが、その場合は入口に多言語で明示してください。会計の場で初めて伝わると、そこで揉めます。飲食店向けの受け入れ実務は外国人観光客が来ない店の共通点|小さな飲食店のインバウンド集客7ステップ【2026年8月】に、来ない側の原因から整理してあります。
【要注意】この統計の読み違いで起きる4つの失敗
数字は正しくても、読み方を間違えると打ち手を外します。よくある4つを挙げます。
失敗1: 全国の「過去最多」を、そのまま自分の町の話だと思う
❌ よくある間違い: 訪日4,268万人というニュースを見て、「うちの町にも同じ割合で増えているはずだ」と考える。
⭕ 正しいアプローチ: 町の数字で確かめる。和歌山県全体は前年比139.8%ですが、市町村別では新宮市111.5%、白浜町135.9%、那智勝浦町142.3%、みなべ町383.3%と、伸び方がまったく違います。
なぜ重要か: 増え方が違えば、必要な準備の量も順番も変わるからです。全国平均に合わせて用意すると、多すぎるか、足りないかのどちらかになります。
失敗2: 「人」と「人泊」を混ぜて計算する
❌ よくある間違い: 訪日外客数(人)と県の宿泊客数(延べ人泊)を並べて、「和歌山に来ているのは全体の1.7%だ」といった比率を出してしまう。
⭕ 正しいアプローチ: 単位をそろえてから比べる。訪日外客数は入国した人数、宿泊客数は1人が2泊すれば2と数える延べ人泊です。異なる調査の数字は、同じ表に並べても割り算をしない。
なぜ重要か: この誤りは、経営計画や補助金の申請書に書いた瞬間に信頼を失うからです。統計の名称・調査主体・単位・公表日をセットで控えておけば、誤用は防げます。
失敗3: 2025年の内訳を、そのまま2026年の計画に使う
❌ よくある間違い: 「白浜は中国が6割強だから、中国語の受け入れをさらに厚くしよう」と、2025年の構成比だけで判断する。
⭕ 正しいアプローチ: 直近の月次と突き合わせる。2026年1〜7月の中国は前年同期比56.3%減、一方で韓国+20.3%、台湾+21.8%、香港+8.6%です。中国語(繁体字)の対応は台湾・香港にも効くので捨てる必要はありませんが、韓国語と英語への配分を増やすという判断ができます。
なぜ重要か: 統計は過去の記録であって、未来の約束ではないからです。JNTOの月次は毎月中旬に更新されるので、四半期に一度見るだけでも判断の鮮度が保てます。
失敗4: 「英語ができないから無理」と、何も試さないまま1年が過ぎる
❌ よくある間違い: 語学ができる人を雇えないことを理由に、掲示も口コミ返信も手をつけない。
⭕ 正しいアプローチ: 会話ではなく「文字」から始める。掲示・メニュー・口コミ返信・予約メールは、すべて時間をかけて書けるものです。会話が必要な場面は、翻訳アプリと指さしシートで大半が済みます。
なぜ重要か: インバウンド対応の大部分は語学力ではなく、事前準備の量で決まるからです。白浜への移住準備で地域の事業者と話す中でも、「英語が話せないから」と入口で止まっている事業所と、紙1枚の多言語掲示を作った事業所とでは、現場の落ち着き方がまったく違うという話を聞きます。
なお、受け入れ環境の整備には設備投資を伴う場合があります。制度によって対象経費や要件が異なり、採択を保証するものではないため、使えるかどうかは必ず窓口で確認してください。
インバウンド受け入れチェックリスト(8項目)
現在地の確認に使ってください。当てはまるものにチェックを入れます。
- □ 去年の外国人のお客様の組数と、上位の国を答えられる
- □ 自分の町の外国人宿泊客数と上位の国を、県の統計で確認した
- □ 重点的に狙う国を2つに絞って決めてある
- □ 予約経路の内訳(海外OTA・国内OTA・直販)を把握している
- □ 料金・時間・ルールの掲示を、選んだ2言語で用意している
- □ 外国語の口コミに全件返信している
- □ 使える決済手段を、入口に多言語で掲示している
- □ 言葉が通じないときの手順を、スタッフ全員が知っている

特に見落とされやすいのが、2つ目と8つ目です。町の統計を見ていない店は、なんとなくの印象で言語を選んでしまいます。そして手順を共有していない店では、忙しい時間帯にたまたま入ったスタッフが一人で困ることになります。チェックが3つ未満でも心配は要りません。この記事の7ステップは、上から進めればチェックが1つずつ埋まる構成です。
政府目標と地方部の伸びしろ|今動く理由を数字で
「もう出遅れたのでは」と感じる方もいるはずです。数字を見ると、状況はむしろ逆です。
2026年3月27日に閣議決定された観光立国推進基本計画は、2026年度から2030年度までの5年間を対象に、11の目標を掲げています。実績値と並べると、伸びしろの所在がはっきりします。
- 訪日外国人旅行者数: 目標6,000万人に対し、2025年実績4,268万人
- 訪日外国人旅行消費額: 目標15兆円に対し、2025年実績9.5兆円
- 1人当たり消費額単価: 目標25万円に対し、2025年実績22.9万円
- 訪日外国人旅行者に占めるリピーター数: 目標4,000万人に対し、2025年実績2,761万人
- 地方部における延べ宿泊者数: 目標1億3,000万人泊に対し、2025年実績5,873万人泊
最後の項目が、南紀の事業者にとって一番重要です。ここでいう「地方部」とは、三大都市圏(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫)以外の地域を指します。和歌山県は、この定義でいう地方部です。目標1億3,000万人泊に対して実績は5,873万人泊で、達成率は5割に届いていません。同計画は、この目標について「三大都市圏における宿泊数と同等(1:1の割合)となることを目指す」と明記しています。
つまり、国としてこれから伸ばそうとしている場所に、あなたの事業所があるということです。同計画は、消費額単価が高く訪日未経験者が多い欧米豪市場や中東市場を中心に訪日を促進する方針も示しています。田辺市の外国人宿泊客の過半が欧米豪であることを思い出してください。熊野古道沿線は、国が重点を置くと明記した市場と、実際に来ている客層が一致している地域です。
さらにもう1つ。計画では「観光客の戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立に取り組む地域数」を2030年までに100地域とする目標に対し、2025年実績は47地域です。増やすだけでなく、混雑やマナーの問題に地域として向き合う枠組みが求められている、ということでもあります。地域単位の取り組みに乗る方法は南紀白浜 面的周遊プログラムとは|観光庁採択事業に店が乗る7ステップ【2026年9月】で具体的に整理しました。
一方で、正直に書いておきます。南紀の中小事業者がこの7ステップを実行してどれだけ予約が増えたか、という検証済みの公表データは、本記事の執筆時点では確認できていません。他店の成果を待つより、自店で去年の国別の組数を数えるほうが早い、というのが現時点の現実的な判断です。
よくある質問
Q. 2025年の訪日外国人数は何人でしたか?
4,268万3,301人です(JNTOが2026年8月19日に公表した資料に掲載の2025年確定値)。2024年の3,687万148人から15.8%増え、過去最高を更新しました。2026年1月21日発表の推計値は4,268万3,600人で、報道ではこちらの「4,268万人」が使われています。
Q. 和歌山県の外国人宿泊者数はどのくらいですか?
和歌山県の令和7年観光客動態調査(速報値)によると、2025年の県内の外国人宿泊客数は71万3,562人泊で、前年の51万293人泊から39.8%増え、過去最高でした。市町村別では白浜町14万7,547人泊、那智勝浦町11万4,821人泊、田辺市9万1,309人泊、みなべ町2万8,913人泊、新宮市2万2,040人泊です。
Q. 「訪日外客数」と「延べ宿泊者数(人泊)」は何が違いますか?
訪日外客数は日本に入国した外国人の人数、延べ宿泊者数は宿泊した延べ数で、1人が2泊すれば2と数えます。調査主体も方法も異なるため、両者を割り算して比率を出すことはできません。資料を引用するときは、統計名・調査主体・単位・公表日をセットで控えてください。
Q. 2026年に入って訪日客は減っているのですか?
全体では微減です。2026年1〜7月の累計は2,452万7,200人で前年同期比1.7%減、7月単月は344万2,100人で前年同月比0.1%増(7月として過去最高)でした。市場別では中国が同期間で56.3%減と大きく落ち込む一方、韓国・台湾・香港・米国・豪州はいずれも増えています。全体の増減より、自店に来ている国の増減を見てください。
Q. 熊野古道の周辺は、どの国のお客様を狙えばよいですか?
田辺市の2025年の外国人宿泊客9万1,309人泊のうち、欧米豪が4万6,438人泊とアジアの3万8,541人泊を上回っています。内訳ではオーストラリア1万1,917人泊、アメリカ1万1,106人泊が大きく、英語での受け入れが中心になります。沿線の実務は熊野古道のインバウンド対応|沿線事業者の7ステップと免税制度の期限【2026年8月】にまとめています。
Q. 英語が話せない店でもインバウンド集客はできますか?
できます。この記事の7ステップのうち、会話が必要なものは1つもありません。掲示・メニュー・口コミ返信・予約メールはすべて文字での対応で、時間をかけて用意できます。会話の場面は翻訳アプリと指さしシートで大半が済みます。
Q. 免税店の登録はしたほうがよいですか?
業種と客層によります。宿泊業や飲食業では免税の対象になる物品の販売そのものが少ない場合があり、土産物や食品を販売しているかどうかで判断が変わります。2026年11月1日の販売分からはリファンド方式に移行し、免税店側に返金対応等の準備が求められるため、既に免税店の許可を受けている事業者は早めの確認が必要です。制度の詳細と自店が対象になるかは、観光庁・国税庁の公式案内と所轄の窓口でご確認ください。
Q. こうした統計は、自分でどこを見れば確認できますか?
3か所です。全国の月次はJNTOの訪日外客統計、消費額は観光庁のインバウンド消費動向調査、和歌山県内は和歌山県の観光客動態です。いずれも無料で、市町村別の内訳まで載っています。四半期に一度開く習慣をつけると、判断の鮮度が保てます。
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること: 去年の外国人のお客様を国別に数え、県の観光客動態調査で自分の町の行を確認する(ステップ1)
- 今週中にやること: 狙う国を2つに絞り、予約経路の内訳を出し、料金・時間・ルールの掲示を2言語で用意する(ステップ2〜4)
- 今月中にやること: 外国語の口コミに全件返信し、体験メニューを1つ作り、現場ルールを紙1枚にする(ステップ5〜7)
統計は毎年更新されます。そのたびに慌てないために残しておくべきなのは、最新のニュースではなく、自店の客層の記録と現場の手順です。
私たちは白浜(和歌山)への移住準備を進めながら、観光地の宿や店舗のSNS運用・集客支援に取り組んでいます(宮古島・伊豆へも現地訪問で対応)。無料ヒアリングは最大60分、ご用意いただくのは「去年の外国人のお客様のメモ」だけで、契約前提の営業はいたしません。提案が不要なら30分の情報交換のみでも歓迎です。
参考・出典
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年7月推計値)」(2026年8月19日発表。2025年確定値4,268万3,301人、2026年1〜7月累計2,452万7,200人・前年同期比-1.7%、7月344万2,100人、市場別の前年同期比) 訪日外客数(2026年7月推計値)|JNTO / 報道発表資料PDF (参照日: 2026-09-06)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」(2026年1月21日発表。2025年年間4,268万3,600人・前年比+15.8%、市場別の年間値) 訪日外客数(2025年12月推計値)|JNTO (参照日: 2026-09-06)
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年(速報)」(2026年1月21日発表。旅行消費額9兆4,559億円・前年比+16.4%、1人当たり22.9万円) インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)及び10-12月期(1次速報)の結果について (参照日: 2026-09-06)
- 和歌山県「令和7年観光客動態調査(速報値)」(2026年4月23日資料提供。外国人宿泊客数713,562人泊・前年比139.8%、国地域別・市町村別の内訳、主要観光地の入込状況) 令和7年観光客動態調査(速報値)PDF / 和歌山県の観光客動態 (参照日: 2026-09-06)
- 内閣官房「観光立国推進基本計画」(2026年3月27日閣議決定。訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円、消費額単価25万円、リピーター4,000万人、地方部延べ宿泊者数1億3,000万人泊の各目標と2025年実績値) 観光立国推進基本計画(令和8年3月27日閣議決定)PDF / 観光庁「観光立国推進基本計画」を閣議決定 (参照日: 2026-09-06)
- 観光庁「消費税免税店サイト」(2026年11月1日の販売分からリファンド方式へ移行、税込販売と出国時の返金、別送制度は2025年3月31日で廃止) 新制度(リファンド方式)について|消費税免税店サイト (参照日: 2026-09-06)
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※本記事は2026年9月6日時点で公表されている一次情報に基づきます。統計値は確定値の公表や再集計で改定される場合があり、免税制度をはじめとする各制度の内容も変更される可能性があるため、判断の前に必ず公式ページで最新情報をご確認ください。補助金の採択、法務・税務・投資の判断は、有資格の専門家および所管の窓口にご相談ください。実績は代表およびメンバー個人としての活動を含みます。