
結論: OTA(Online Travel Agency=じゃらん・楽天トラベルなどの予約サイト)の手数料対策で最初にやることは、解約でも値下げでもなく「実質料率の計算」です。表の料率が10%でも事前カード決済やクーポンが重なれば1件15%に届き、10室・稼働6割・1泊2名3万円の旅館なら年間500万円規模の負担になります。この実額が見えて初めて、OTAをやめずに直販(電話・LINE・公式サイト経由の予約)の比率を上げる道筋が引けます。
この記事の要点 対象読者: OTA経由の予約が7割を超え、手数料を重く感じている6〜20室規模の民宿・ペンション・小規模旅館のオーナー 読了後にできること: 先月の精算書から自分の宿の「実質料率」と直販比率を割り出し、規約に触れない形で直販を増やす仕組みに今日から着手できる
「また今月も、こんなに引かれていたのか——。」
月末にOTAの精算書を開いて、手が止まった経験はないでしょうか。稼働は悪くなかったのに振込額は思ったより少なく、明細も送客手数料・ポイント原資・販促費と行が分かれていて、いくら払ったのかが一目で分かりません。
かといってOTAをやめれば予約そのものが消える気がして、翌月も同じ精算書を眺めることになります。調べて出てくるのは「脱OTA」と「OTAを使いこなせ」が混在した記事ばかりで、その多くは専任担当を持つホテル向けです。
はっきりさせておきたいのは、悪いのはOTAではないということです。OTAは強力な集客装置で、手数料はその利用料にすぎません。問題は、何年営業しても全予約がOTAを通り続ける構造と、その手数料を表面の料率でしか把握していない宿が多いことの2点です。表面料率と実際に引かれた額は一致しないため、実質料率を出すまでは打ち手への投資額も決められません。
この記事では、観光地の宿や店舗のSNS運用・集客支援に取り組む立場から、主要9サイトの手数料一覧と実質料率の計算式を公開します。あわせて直販比率を上げる6ステップ、コピペで使える8本の文例、失敗パターンとチェックリストもまとめました。先月のOTA精算書を手元に置きながら読み進めてください。
目次
まず結論:OTAをやめずに直販比率を上げる6ステップ(即効テンプレ)
最初に全体像です。6つのステップを順番に進めれば、OTAとの関係を保ったまま、手数料の実質負担を段階的に軽くしていけます。
| ステップ | やること | 今日できる最初の一歩 |
|---|---|---|
| 1. 実質料率の計算 | 精算書から実質料率と直販比率を出す | 先月の予約総額と振込額を書き出す |
| 2. 受け皿づくり | 電話・LINE・公式サイトの直販窓口を整える | Googleの宿情報に直販窓口を書き足す |
| 3. 特典設計 | 直販で予約する理由を1つ作る | 空いている設備・時間帯を棚卸しする |
| 4. 館内での案内 | OTA規約に触れない場所で直販を伝える | 客室に案内のしおりを置く |
| 5. リピーター切り替え | 2回目からの予約をLINE・電話に移す | チェックアウト時のLINE案内を始める |
| 6. 毎月の計測 | 直販比率を月1回測って改善する | 月末の集計をカレンダーに入れる |

ポイントは、OTAと喧嘩をしないことです。狙いは「初めてのお客様との出会いはOTAに任せ、2回目からのご予約を直販に切り替えていただく」という役割分担にあります。OTAの掲載ページやOTA経由のメッセージで直販へ誘導する行為は規約で禁止されているため、案内はすべて館内・チェックアウト時・自社のLINEなど規約の外側で行ってください。この線引きさえ守れば、直販強化とOTA活用は矛盾しません。
所要期間の目安は、ステップ1〜4が最初の1〜2週間、ステップ5〜6が2か月目以降も続く習慣です。どのステップも着手は30分〜2時間ででき、必要なのは精算書と電卓、いつものスマホと無料のAIだけです。
「うちの宿の場合はどうすればいい?」——そんな段階のご相談こそ歓迎です。
最大60分の無料ヒアリングで、貴施設の集客の現在地と次の一手を一緒に整理します。
※契約を前提とした営業は一切いたしません。30分の情報交換のみでも歓迎です。
「直販比率」とは|「脱OTA」との違いと直販の5要素
直販比率とは、販売した室数(室泊)のうち、OTAや旅行会社を介さず電話・LINE・公式サイト・店頭から直接入った予約が占める割合です。「先月180室泊のうち直販54室泊なら30%」という単純な計算で構いません。
よく混同されますが、直販比率を上げることと「脱OTA」は別物です。
- 脱OTA(掲載をやめる): 手数料はゼロになるが、新規との出会いも同時に失う。知名度のある宿以外には危険な賭け
- 直販比率を上げる(本記事の立場): OTAは新規獲得の広告と割り切って使い続け、2回目以降の予約を直販に切り替えてもらう
- 手数料のとらえ方: 前者は「削るべきコスト」、後者は「新規1組と出会う獲得費用」と見てリピートで回収する

直販の仕組みは、次の5要素で成り立ちます。
- 実額の把握: 実質料率と直販比率を精算書から出す
- 直販の窓口: 電話・LINE・公式サイト・予約エンジンから確実に受けられるものを選ぶ
- 予約する理由: 直販ならではの特典を、空いている設備や時間帯から用意する
- 伝える場所: 規約に触れない館内・手渡し・自社媒体で案内する
- 戻ってくる導線: 一度泊まった方と連絡が取れる状態を保つ
以降の6ステップは、この5要素を実行の順番に並べ直したものです。集客全体の設計は民宿・ペンションの集客方法【2026年8月】にまとめています。
直販比率を上げる6ステップ(完全版)
各ステップの文例プロンプトは、ChatGPTなどの対話型AIに貼り付け、( )の中を自分の宿のことに書き換えて使ってください。AIが初めてでも、スマホに無料の公式アプリを入れて登録すれば3分で始められます。
ステップ1: OTA手数料の「実質料率」と直販比率を計算する
出発点は計算ですが、計算すべきは表面の料率ではありません。まず公開されている主要9サイトの料率を並べます(プライムコンセプトの手数料一覧表・2026年2月更新時点)。
| 予約サイト | 基本の料率 | 上乗せされる主な費用 | 1泊2名2万円の1件あたり |
|---|---|---|---|
| じゃらんnet | 2名以上10.0%(1名8.0%) | 事前カード決済+2.0%/クーポン3.0% | 2,000円 |
| 楽天トラベル | 2名以上9.25%(1名8.0%) | 事前カード決済+2.0%/クーポン3.0〜5.0% | 1,850円 |
| 一休.com | 10.0% | 事前カード決済+3.5%/月額利用料5,250円 | 2,000円 |
| Yahoo!トラベル | 10.0% | 事前カード決済+3.5% | 2,000円 |
| るるぶトラベル | 2名以上10.0%(1名8.0%) | 事前カード決済+2.0% | 2,000円 |
| Booking.com | 12.0% | — | 2,400円 |
| Agoda | 12.0% | — | 2,400円 |
| Trip.com | 15.0% | — | 3,000円 |
| Expedia | 15.0〜18.0% | エリア・施設形態により変動 | 3,000〜3,600円 |
実質料率を押し上げるのは、この上乗せの部分です。じゃらんnetの2名以上10.0%は基本8.0%とポイント原資2.0%の合計ですが、事前カード決済2.0%とクーポン手数料3.0%が重なれば、その1件は15.0%になります。楽天トラベルも同じ構造で、9.25%に事前決済2.0%と企画型クーポン5.0%が乗れば16.25%です。「うちは10%のはず」という感覚と精算書が合わないのは、この上乗せが別行で引かれているからです。
そこで、明細の行を一つずつ足す代わりに次の式を使ってください。実質料率=(先月のOTA予約総額 − 実際の振込額)÷ OTA予約総額。この2つの数字はどのOTAの精算画面にもあり、差額には送客手数料もポイント原資も決済手数料も名目を問わず含まれます。じゃらんnetなら管理画面の精算書、楽天トラベルなら月次の精算明細から1分で取り出せます。

実質料率が出たら年額に引き伸ばします。OTA経由が7割の場合の負担額を規模別に並べたのが次の表です。
| 宿の規模(稼働率・1泊2名の単価) | 月のOTA経由の室泊数 | 月のOTA経由の売上 | 年間の手数料(10%→12%) |
|---|---|---|---|
| 6室の民宿(稼働40%・2万円) | 約50室泊 | 約101万円 | 約121万円→約145万円 |
| 10室の旅館(稼働60%・3万円) | 126室泊 | 378万円 | 約454万円→約545万円 |
| 20室の旅館(稼働65%・3万円) | 273室泊 | 819万円 | 約983万円→約1,179万円 |
室泊数は「客室数×30日×稼働率」で出しています。10室の旅館で実質料率が12%なら年間545万円、つまり従業員1人分の人件費に近い金額が毎年OTAへ出ていく計算です。数字が揃ったら、下のプロンプトで現状を整理してください。
あなたは小さな宿の経営数字に詳しいアドバイザーです。以下の材料から、OTA手数料の実質負担と直販比率を計算し、現状を整理してください。
【材料】
・客室数と1泊あたりの平均単価: (例: 10室・1泊2名3万円)
・先月の販売室泊数と稼働率: (例: 180室泊・稼働60%)
・そのうちOTA経由の室泊数: (例: 126室泊。サイト別が分かれば内訳も)
・先月のOTA予約総額と実際の振込額: (精算書の2つの数字)
出力: ①実質料率=(予約総額−振込額)÷予約総額 ②直販比率 ③手数料の月額と年額 ④OTA経由のうち月10室泊を直販に移した場合の年間の差額。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
この段階で「高すぎる」と怒っても得はありません。新規のお客様と出会う費用としては妥当だからです。問題は、常連のご予約にまで同じ料率を払い続けている部分だけです。
ステップ2: 直販の受け皿を整える(電話・LINE・公式サイト・予約エンジン)
受け皿の答えは規模で分かれます。6室前後なら電話とLINEだけでも直販は成立します。一方10室を超えると、事前カード決済・キャンセル規定の自動適用・在庫の同期が手作業では追いつきません。公式サイトに予約エンジン(自社サイトから空室確認と決済までできる予約システム)を入れる判断が現実的になります。
導入の目安は割り算だけで出せます。1泊2名3万円・実質料率10%の宿なら直販1室泊につき3,000円が浮くので、月額1万円の予約エンジンは月4室泊の直販で元が取れます。加えてGoogleの「無料の予約リンク」に自社の料金を出せます。検索やマップの宿情報にOTAと並べて公式サイトの料金を表示でき、クリックは無料です。ただし料金と空室の表示にはGoogleの接続パートナーとなっている予約システムとの連携が必要なので、選定時に対応可否を確認してください。
まず着手すべきは、Googleビジネスプロフィール(Google検索やマップに無料で表示される施設の情報欄)と公式サイトに直販窓口を明記することです。
あなたは小さな宿の紹介文づくりが得意なライターです。以下のひな形を【材料】で書き換え、Googleビジネスプロフィールの説明欄と公式サイトに載せる直販のご案内文を200字以内で仕上げてください。
ひな形: 「〇〇(宿名)へのご予約は、(直販の窓口)から直接お申し込みいただけます。直接のご予約では△△(特典)をご用意しています。お電話は◇時〜◇時、LINEは24時間受付(返信は営業時間内)です。」
【材料】
・宿名:
・直販の窓口: (電話/LINE/公式サイト/予約エンジンのうち、あるものだけ)
・直販特典: (用意しているものだけ)
・受付時間:
【材料】にない窓口・特典は書かず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
電話やLINEの受け答えも、先に型を決めておくと聞き漏らしがなくなり、フロントでも仲居でも同じ品質で受けられます。
あなたは宿の予約受付マニュアルづくりが得意な人材育成担当者です。電話・LINEで直接予約を受けるときの受け答えテンプレートを作ってください。
【材料】
・宿名と受付する担当: (例: 〇〇旅館・フロントと仲居が交代で対応)
・確認する項目: (例: 日付・人数・夕食の有無・アレルギー・到着時刻・連絡先)
・直販特典: (あるものだけ)
・キャンセル規定と保証の方法: (例: 前日50%・当日100%/カード事前決済で確保)
出力: ①最初のあいさつ ②確認項目を聞く順番 ③最後の復唱と特典の一言案内、の3部構成・300字以内。【材料】にない条件は書かず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
見落としがちなのがキャンセルの保証手段です。カード決済のない電話予約は無断キャンセルを回収できないため、規定は口頭だけでなく全文をLINEやメールで送り、記録に残すところまでを手順に入れてください。直販は「すぐ返ってくる安心感」が命で、2日返信がなければお客様はOTAに戻ります。
ステップ3: 直販特典を設計する(値引きではなく「空きリソース」で)
受け皿ができたら「直販で予約する理由」を1つ作ります。多くの記事は「ドリンク1杯」「お土産1つ」と書きますが、1泊2食3万円のお客様に500円の品物を出しても選ばれる理由にはなりません。特典の材料にすべきは、仕入れる物ではなくすでに持っているのに空いている資産です。平日の貸切風呂の枠、上位客室へのアップグレード、14時のアーリーチェックイン、16時までのレイトチェックアウト、駅までの送迎。どれも追加原価はほぼゼロで、単価3万円のお客様には数千円分の価値があります。
あなたは宿泊業の販売企画が得意なアドバイザーです。以下の材料から、直販(電話・LINE・公式サイト予約)限定の特典案を5つ、特典名・内容・追加でかかる原価・ねらいの表で提案してください。
【材料】
・宿のタイプと規模: (例: 10室の温泉旅館・1泊2食3万円)
・空いている設備や時間帯: (例: 平日の貸切風呂、上位客室、14時以降のチェックイン枠)
・仕入れずに出せるもの: (例: 自家製の梅酒、駅までの送迎)
・避けたいこと: (例: 宿泊料金そのものの値引き)
条件: 仕入れ原価のかかる品物より、空いている設備・時間帯の開放を優先する。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
料金そのものを直販だけ大きく下げる設計は避けてください。値引き型では手元に残る額が増えないうえ、OTAとの契約条件の確認が必要になるからです。かつて大手OTAは「他の販売経路と同等か、それより有利な料金・部屋数」を求める条項(いわゆる最安値条項)を置いていました。しかし公正取引委員会の確約手続により、楽天は2019年10月25日、Booking.comは2022年3月16日にこの条項を取りやめる計画が認定されています。直販を安くすること自体が禁じられているわけではありませんが、契約条件は施設ごとに異なるため、設計前に自社の契約書で確認してください。
ステップ4: 館内とチェックアウトで案内する(規約の範囲内で)
特典ができたら伝える場所を選びます。ここが一番の注意所です。OTA内やOTA経由のメッセージで直販へ誘導する行為は規約で禁止されており、発覚すれば掲載順位への影響や契約解除のリスクがあります。一方、ご宿泊中のお客様に館内やチェックアウト時にご案内することは、宿とお客様の直接の関係です。案内は客室のしおり・玄関の掲示・手渡しのカードに絞ってください。
あなたは宿の館内案内文を書き慣れた編集者です。以下のひな形を【材料】で書き換え、客室に置く「次回のご予約について」のしおり文面を200字前後で作ってください。
ひな形: 「本日は〇〇(宿名)にお越しいただき、ありがとうございます。次回のご予約は(直販の窓口)から直接いただけますと、予約サイトを通さない分、△△(特典)をご用意できます。ご滞在中のご要望もお気軽にお声がけください。 〇〇(宿名)」
【材料】
・宿名:
・直販の窓口: (電話/LINE/公式サイト/予約エンジンのうち、あるものだけ)
・直販特典:
窓口・特典は【材料】にあるものだけを書き、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
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自社の媒体でも直販窓口を告知します。ここで1つ注意があり、Googleビジネスプロフィールの「最新情報」投稿は、ホテル・宿泊施設のカテゴリでは利用できません。宿が使えるのは説明欄・写真・Q&A・口コミ返信の4か所なので、告知はこれらとSNSに振り分けます。
あなたは小さな宿のSNS運用が得意な企画者です。以下の材料から、①Googleビジネスプロフィールの「説明」欄に載せる紹介文(200字以内)②Instagram投稿の本文(150字以内)を1本ずつ作ってください。
【材料】
・宿名と場所:
・直販の窓口:
・直販特典:
・今の季節の話題: (例: 秋の連休はまだ空きがあります)
条件: 売り込み一辺倒にせず、季節の話題から自然に案内につなげる。【材料】にない特典・空き状況は書かず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
紙を置いただけで満足しないでください。お見送りで「次は直接ご連絡いただければ貸切風呂をお取りしておきます」と一言添えるだけで、反応はまるで変わります。紙は仕組み、最後のひと押しは会話です。
ステップ5: 公式LINEで2回目の予約を直販に切り替える
直販の主戦場はリピーターです。一度泊まって満足した方には「次はLINEで一言」が最も簡単な予約方法になります。10室規模で全員に個別配信するのは現実的でないため、「登録は全員に案内し、個別のお声がけは前回から半年以上たった方だけ」と対象を絞ってください。名簿は予約システムの顧客情報と、LINEの表示名に前回の利用月をメモして紐づければ十分です。
あなたは宿のお客様対応を熟知したコンシェルジュです。以下のひな形を【材料】で書き換え、以前ご宿泊いただいたお客様に1対1のLINEで送る再訪のご案内を150字前後で作ってください。
ひな形: 「〇〇様、その節はご宿泊ありがとうございました。△△(季節の話題)の季節になりました。□月は平日を中心に空きがございます。このLINEからのご予約で◇◇(特典)をお付けします。ご検討ください。」
【材料】
・お客様のお名前と前回の利用: (例: 田中様・7月にご夫婦で1泊)
・季節の話題:
・空きがある時期:
・直販特典:
【材料】にない空き・特典は書かず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
お声がけの頻度は、1対1でも一斉配信でも月2回までに抑えます。無料枠が限られているうえ、送りすぎはブロックを招いて直販導線そのものを失うためです。開設手順・あいさつ文・配信設計は旅館・宿のLINE公式アカウント活用術で解説しています。
ステップ6: 毎月、直販比率を測って改善する
最後は計測です。月末に5分、「今月の販売室泊数」「うち直販」「OTAの予約総額と振込額」をメモするだけで構いません。数字を眺めると「しおりを置いた月から直販が5室泊増えた」といった因果が見えてきます。
あなたは小さな宿の経営数字に詳しいアドバイザーです。以下の月次メモから、直販強化の振り返りをしてください。
【材料】
・今月の販売室泊数と直販室泊数: (例: 180室泊・うち直販60室泊)
・先月の同じ数字: (例: 175室泊・うち直販54室泊)
・今月やった施策: (例: 客室にしおり設置、LINEお声がけ20名)
・OTAの予約総額と振込額: (今月の精算書から)
出力: ①直販比率と実質料率の前月比 ②効いた可能性が高い施策と根拠 ③来月の一手を1つ。データが足りない部分は断定せず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
伸びを焦らないでください。リピーター経由の直販は、仕込みから3〜6か月遅れて効くのが普通です。館内案内と一言は翌月から動くので、短期と長期の指標は分けて見ます。
宿タイプ別の直販の伸ばしどころ
同じ直販強化でも、宿のタイプによって効きどころは変わります。自分の宿に近い行から着手してください。
| 宿タイプ | 直販の伸ばしどころ | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 民宿(食事自慢型・〜8室) | 常連の再訪を電話・LINEの直接予約に | 顔を思い出せる常連へ季節のお声がけ |
| 小規模旅館(10〜20室) | 予約エンジン経由の公式サイト予約 | Googleの無料予約リンクの対応可否を確認 |
| ペンション | 記念日・連泊など相談型の予約 | 「直接予約なら相談に応じます」の明記 |
| ゲストハウス | 連泊・長期滞在の直接申し込み | 英語版の直販案内カードを作る |
| 貸別荘・一棟貸し | グループ・法人の問い合わせ対応 | 問い合わせへの当日返信を徹底する |

共通するのは、直販が「相談できる予約」だという点です。食事の相談・チェックイン時刻の融通・記念日の演出といった、OTAの画面では扱えないやり取りこそ、小さな宿が直販でだけ提供できる価値です。海外客の多いゲストハウスなら、口コミへの英語返信とセットで直販案内も英語化してください(文例は英語の口コミ返信 例文30選【2026年8月】にまとめています)。
【要注意】直販強化が失敗する4つのパターン
次の4つのどれかに当てはまると、成果が出ないどころかOTAとの関係やお客様の信頼を損ないます。順に確認してください。
失敗1: OTA経由のメッセージで直販に誘導してしまう
❌ よくある間違い: OTAのメッセージ機能や掲載ページの紹介文で「公式サイトのほうがお得です」と案内してしまう。
⭕ 正しいアプローチ: OTAの中では一切誘導せず、案内は館内掲示・客室のしおり・チェックアウト時の手渡し・自社のLINEやSNSに限定する。
なぜ重要か: OTAの予約導線内での直販誘導は規約違反にあたり、掲載への悪影響や契約解除につながりかねないからです。逆に言えば、線引きさえ守れば堂々と直販を伸ばせます。
失敗2: 直販特典を「値引き」だけで設計する
❌ よくある間違い: 「直接予約なら10%引き」と、手数料で浮く分をそのまま値引きに回してしまう。
⭕ 正しいアプローチ: 料金は同じにして、平日の貸切風呂の確保・客室のアップグレード・レイトチェックアウトなど、追加原価がほぼゼロで滞在の質が上がる特典を付ける。
なぜ重要か: 値引き型は手元に残る額が増えないうえ、料金の比較でしか選ばれない宿になるからです。1泊3万円の宿が実質料率12%の予約を直販に移せば1室泊3,600円が浮きますが、値引きに全額返せば残りはゼロ、貸切風呂の開放ならほぼ全額が残ります。
失敗3: 直販予約を受けたのにOTAの在庫を閉じ忘れる
❌ よくある間違い: 電話で予約を受けてほっとしたまま、OTA側の空室カレンダーを開けっぱなしにしてダブルブッキングを起こす。
⭕ 正しいアプローチ: サイトコントローラー(複数OTAの在庫と料金を一元管理するシステム)を使う宿は「直販を受けたら即入力」、手動運用の宿は「その場で全OTAの在庫を閉じる」を、予約受付とセットの1手順にする。
なぜ重要か: ダブルブッキングは直販のお客様とOTAのお客様を一度に裏切る事故で、直販が増えるほど在庫管理は複雑になるからです。誰が入力するかまで手順に書いておけば防げます。
失敗4: 手数料を敵視してOTAを急にやめてしまう
❌ よくある間違い: 年間の手数料額に驚き、勢いでOTAの掲載を止めて、翌月から新規のお客様が途絶える。
⭕ 正しいアプローチ: OTAは新規獲得の広告と割り切って残し、直販比率が上がるにつれて自然に手数料負担が軽くなる状態を目指す。
なぜ重要か: 小さな宿にとってOTAは、今も最大の「初めてのお客様との出会いの場」だからです。観光地の宿や店舗のSNS運用・集客支援に取り組む立場から言っても、直販だけで安定させるには常連の名簿が積み上がっている必要があります。まず名簿を作り、入口を閉じるかはその後に考えれば十分です。
ここまでの内容は、精算書と電卓だけで完結できます。それでも「受け皿を整える時間がない」「公式サイトもLINEも作る手が足りない」という宿があるのも事実です。
「うちの宿の場合はどうすればいい?」——そんな段階のご相談こそ歓迎です。
最大60分の無料ヒアリングで、貴施設の集客の現在地と次の一手を一緒に整理します。
※契約を前提とした営業は一切いたしません。30分の情報交換のみでも歓迎です。
直販が増える宿・増えない宿の違い(チェックリスト)
現在地の確認に使ってください。精算書と館内を見ながら、当てはまるものにチェックを入れます。
- □ 先月OTAに払った手数料の実額と実質料率を、概算でも即答できる
- □ 自分の宿の直販比率を室泊ベースで計算したことがある
- □ 電話・LINE・公式サイトのうち、確実に返せる直販窓口が1つ以上ある
- □ Googleビジネスプロフィールの説明欄に直販の窓口が明記してある
- □ 直販で予約する理由(特典)が1つあり、その原価を把握している
- □ 直販の案内は館内・手渡し・自社媒体に限定し、OTA内では行っていない
- □ 直販予約を受けたらOTAの在庫を閉じる手順と担当が決まっている
- □ 月1回、直販比率と実質料率を記録している

特に見落とされやすいのが、7つ目の「在庫を閉じる手順と担当」です。6つ以上ついた宿は土台ができているので、次は予約エンジンの導入とGoogleの無料予約リンクへの対応に進んでください。
予約の4割超はOTA経由、自社サイトは1割台|旅館の6割の部屋は空いている
「直販なんて、うちみたいな小さな宿には無理では」と感じるかもしれません。データを見ると、無理どころか業界全体がまだ手つかずの領域です。
まず予約経路です。日本旅館協会の「令和5年度 営業状況等統計調査」によると、予約経路はOTA経由が43.3%で最大、以下、旅行会社26.8%、施設への直予約15.5%、自社ホームページ14.4%と続きます。自社の窓口は合わせても3割弱で、他社が握る4割超の予約には毎回手数料が乗り続けます。裏を返せば、多くの宿が直販の仕組みをまだ持っていないということです。
次に稼働率です。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊で前年比0.3%増、うち外国人は1億7,992万人泊で9.4%増と伸びています。ところが客室稼働率は全体61.6%に対し、旅館だけを見ると38.2%です。つまり旅館の部屋は6割が空いたままで、需要が増えているのに埋まっていません。ステップ3で「空きリソースを特典にする」と書いたのは、この構造に理由があります。
実在の例では、神奈川県秦野市・鶴巻温泉にある客室18室の旅館「元湯陣屋」が、2009年時点で売上高2億9,000万円・借入金10億円・年間7,000万円の赤字という状態にありました。そこから紙の顧客情報のデジタル化を軸とするIT改革で、約4年で売上60%増を実現したと報じられています。核心は、お客様の情報を自社で持ち再訪につなげる仕組みづくりでした。
あなたの宿に引き直します。10室・稼働60%・1泊2名3万円・OTA経由7割なら、実質料率12%で年間約545万円の手数料です。OTAの126室泊のうち月10室泊を直販に移すと、直販比率は30%から35%台に上がり、手数料は月3万6,000円・年間約43万円減ります。特典を貸切風呂など原価のかからないものにすれば、この43万円はほぼそのまま残り、毎月10組分の「直接連絡できるお客様」も積み上がります。
よくある質問
Q. OTAの手数料は結局、何%かかるのですか?
基本料率はじゃらんnetが2名以上10.0%、楽天トラベルが2名以上9.25%、一休.comとYahoo!トラベルが10.0%、Booking.comとAgodaが12.0%、Expediaが15.0〜18.0%です。ただし事前カード決済で+2.0〜3.5%、クーポン利用で+3.0〜5.0%が上乗せされるため、実際の負担は「(予約総額−振込額)÷予約総額」で判断してください。
Q. 手数料を減らすには、OTAの掲載をやめるしかないのですか?
急にやめるのはおすすめしません。OTAは今も最大の新規集客の入口で、掲載を止めれば手数料以上の売上を失う宿がほとんどだからです。手数料は「新規獲得の広告費」と割り切り、2回目以降のご予約を直販に切り替えて実質負担を下げるのが現実解になります。
Q. 旅館の直接予約を増やすには、何から始めればいいですか?
先月の精算書から実質料率を出す計算(ステップ1)からです。次に、電話・LINE・公式サイトのうち確実に返せる窓口を1つ整え、空いている設備から直販特典を1つ決めます。集客全体の立て直しから始めたい場合は、民宿・ペンションの集客方法【2026年8月】を先に読んでください。
Q. 直販比率は、どのくらいを目標にすればいいですか?
業界全体では自社ホームページ経由が14.4%、直予約と合わせても3割弱なので、まず「3か月で直販比率を5ポイント上げる」が現実的な目標です。180室泊の宿なら月9室泊の置き換えで達成できます。リピーターの多い宿で4〜5割まで来ると、手数料負担は体感で大きく変わります。
Q. 公式サイトがなくても、宿の自社予約は増やせますか?
6室前後の宿なら増やせます。電話とLINEだけでも直販は成立し、常連のお客様には「LINEで一言」が最も使われる窓口になるからです。ただし10室を超えると、事前決済とキャンセル規定の自動適用がないことが取りこぼしの原因になるため、予約エンジンの導入を検討する段階に入ります。
Q. 公式サイトの料金は、OTAより安くしてもいいのですか?
かつて大手OTAが求めていた最安値条項は、公正取引委員会の確約手続により楽天が2019年、Booking.comが2022年に取りやめています。とはいえ契約条件は施設ごとに異なり、値引き競争は手元に残る額も減らします。「同じ料金+直販だけの特典」にしたうえで、契約内容を担当窓口で確認するのが安全です。
Q. OTAで泊まったお客様に直販を案内するのは、規約違反になりませんか?
OTAの掲載ページ内やOTA経由のメッセージでの誘導は規約違反です。一方、館内掲示・客室のしおり・チェックアウト時の手渡しでご案内することは、宿とお客様の直接のやり取りにあたります。案内の場所を「OTAの外側」に限定することが守るべき一線です。
Q. 直販の効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
館内案内やチェックアウト時の一言は、早ければ翌月の予約に表れます。一方、LINE経由のリピーター直販は次の旅行時期に合わせて3〜6か月遅れで効くので、月次の記録(ステップ6)を続けて小さな変化に気づけるようにしてください(AIの使い方はChatGPTを旅館で使う方法で解説しています)。
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること: 先月の精算書から予約総額と振込額を書き出し、ステップ1のプロンプトで実質料率と直販比率を計算する
- 今週中にやること: 直販窓口をGoogleビジネスプロフィールの説明欄に明記し、空き設備から特典を1つ決める
- 今月中にやること: 客室のしおりとチェックアウト時のLINE案内を始め、月末に直販比率を記録する
出会いはOTA、2回目からは直販。この役割分担が根づけば、手数料は天引きではなく、投資額を自分で決められる広告費に変わります。
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参考・出典
- プライムコンセプト「宿泊予約サイト(OTA)手数料一覧表」(2026年2月4日更新): 各OTAの基本料率と上乗せ率 https://prime-concept.co.jp/topix/detail.php?id=471 (参照日: 2026-08-16)
- 日本旅館協会「令和5年度 営業状況等統計調査」予約経路別比率(OTA 43.3%・旅行会社 26.8%・直予約 15.5%・自社HP 14.4%)/引用元: ホテル・旅館 利益向上プロジェクト https://www.489ban.net/column/postid_1631/ (参照日: 2026-08-16)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値・確定値(延べ宿泊者数6億6,111万人泊・前年比0.3%増、客室稼働率 全体61.6%・旅館38.2%) https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00090.html (参照日: 2026-08-16)
- 公正取引委員会 確約計画の認定: 楽天株式会社(令和元年10月25日)/Booking.com B.V.(令和4年3月16日) https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/oct/191025.html / https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/mar/220316.html (参照日: 2026-08-16)
- Google「ホテルの無料の予約リンクについて」(Hotel Center ヘルプ) https://support.google.com/hotelprices/answer/10472393?hl=ja (参照日: 2026-08-16)
- ビジネス+IT「瀕死の老舗旅館 陣屋を継いだ宮﨑社長は、どのようにしてITで売上6割増を実現したのか」(2014年9月22日) https://www.sbbit.jp/article/cont1/28529 (参照日: 2026-08-16)
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