
温泉のレジオネラ検査の費用と頻度は、「小さな宿だから年1回」「循環式だから一律この金額」とは決められません。所在地の条例、営業許可の種類、浴槽水の使い方、採水箇所、必要な検査項目を確認し、その条件で見積もる必要があります。
結論:最初に所在地・許可・設備を一枚にまとめ、管轄保健所へ適用条件を確認します。次に検査機関へ同じ条件で見積もりを依頼し、検体数×年間回数の検査料へ、採水・搬送・日常管理・臨時対応費を加えます。採水して終わりにせず、結果の受領、基準との照合、保存、異常時の連絡まで担当を決めてください。
すでに患者発生・その疑いの連絡がある場合 年間計画や見積もりより、直ちに施設責任者と保健所への連絡、施設の利用中止を優先します。消毒・洗浄を行わず現状を保持し、調査に必要な採水や設備の扱いは保健所の指示を確認してください。定期検査で菌が検出された場合とは、初動の分岐が異なります。
本稿は、旅館・民宿など小規模温泉宿の経営者、衛生管理責任者、予約・経理担当者に向けた運用整理です。菌の培養、薬剤調製、配管消毒を宿側が自己流で行うための技術手順書ではありません。設備図面と現行の自主管理手引書を用意し、保健所、検査機関、設備の専門業者と確認して使います。
本文では、所在地・許可確認票、浴槽方式判定票、見積依頼票、年間予算票、年間検査カレンダー、採水条件確認票、日常点検票、結果台帳、初動カード、再開・是正確認票の10点のテンプレートを掲載します。空欄は自宿の事実や確認回答を記入する欄です。計算例は仮定であり、実在施設の実績、全国相場、必要十分な検査回数を示すものではありません。
法令・公式資料と料金掲載の確認日は2026年9月13日です(checked_at=2026-09-13)。国の指針、県・市の条例や細則、検査機関の料金ページは役割が異なります。資料の更新日と本稿の閲覧日を分け、古い資料を現在の義務や料金へ読み替えないよう、出典を添えて説明します。
目次
- 1.費用を調べる前に、所在地・許可種別・検査対象を確定する
- 2.検査頻度は浴槽水の使い方と所在地ルールから決める
- 3.検査費用は掲載例と実見積を分け、必要な項目で比較する
- 4.年間費用と検査カレンダーを、検体単位で組み立てる
- 5.採水は検査機関と条件を決め、検体の取り違えを防ぐ
- 6.定期検査とは別に、日常管理の作業と費用を確保する
- 7.結果を設備ごとに照合し、3年保存を運用にする
- 8.定期検査での検出と、患者・疑い発生を分けて対応する
- よくある質問
- Q. 温泉のレジオネラ検査は、全国一律で年何回ですか?
- Q. 毎日営業している旅館は、すべて「連日使用」に当たりますか?
- Q. 和歌山県の旅館では、浴槽水検査は年1回でよいですか?
- Q. 貸切風呂やかけ流し温泉なら、検査は不要ですか?
- Q. レジオネラ検査の費用はいくらを見込めばよいですか?
- Q. 浴槽が二つある場合、一検体の検査で済みますか?
- Q. 浴槽水4項目を検査すれば、原湯やシャワーも確認したことになりますか?
- Q. 採水は自分で行い、普通のボトルで送ってよいですか?
- Q. 基準は「10CFU/100mL以下」ですか?
- Q. 定期検査でレジオネラ属菌が検出されたら、すぐ全量排水・消毒しますか?
- Q. 利用者から患者又は疑い発生の連絡があった場合はどうしますか?
- Q. 再検査が1回陰性なら、自動的に営業を再開できますか?
- Q. 検査結果は何年間保存しますか?
- Q. 貯湯槽の60℃・55℃という条件は、入浴する湯の温度ですか?
- 10.最初の一週間で確認先と年間管理表をそろえる
1.費用を調べる前に、所在地・許可種別・検査対象を確定する
「温泉宿」という名称だけでは、適用されるルールは決まりません。宿泊者用浴室なのか、日帰り利用を受ける公衆浴場なのか、同じ建物で複数の許可があるのかを、許可証と営業実態で確認します。温泉の利用に関する手続きと、旅館業・公衆浴場の衛生管理を一つの許可として扱わないでください。
所在地も県名だけで終えません。和歌山県内でも、和歌山市の制度を確認する施設と、県の制度を確認する施設を分ける必要があります。別の自治体にある系列宿のカレンダーをそのまま流用せず、施設の住所と管轄保健所を出発点にします。
国の指針、条例、検査機関の説明を別の欄に置く
| 確認する資料 | 読み取ること | それだけでは決められないこと |
|---|---|---|
| 厚生労働省の指針・管理要領 | 国が示す水質基準や検査・管理の考え方 | 自施設に適用される条例上の義務の全て |
| 所在地の条例・施行細則 | 許可区分ごとの衛生措置、頻度、基準、保存・報告 | 設備特有の採水場所や個別の改善方法 |
| 保健所からの施設別の確認回答 | 自施設への適用、検査箇所、異常時の連絡と対応 | 検査機関の受入日、料金、輸送条件 |
| 検査機関の見積・採水案内 | 項目、方法、容器、搬送、納期、料金 | 営業再開の可否や条例の免除認定 |
| 設備図面・取扱説明書 | 浴槽と配管のつながり、機器の管理条件 | 現時点の水質や利用者の健康状態 |
厚生労働省の公衆浴場における衛生等管理要領等は、2026年1月20日の一部改正まで記載された現行公開PDFを確認しました。そこに示された国の指針と、所在地条例の条文を区別して読みます。「国に年4回とあるから県条例にも同じ文言がある」と書き換えることも、「県条例の数字だけで国の指針や個別指導を無視できる」と扱うこともしません。
旅館業の許可区分自体が分からない場合は、まず許可証と保健所への届出を確認します。開業・変更手続き全体は和歌山県の旅館業許可の確認事項へ分担し、本稿では営業中の入浴設備について、検査計画の前提を特定するところに絞ります。
浴槽水と原湯等は、別の検体として整理する
浴槽水は、入浴する浴槽内の湯水です。原湯は浴槽の湯を再利用せず直接注入する温水、原水はその原料や温度調整等に使う水、上がり用湯・上がり用水はカランやシャワーに供給する湯水です。源泉の成分分析を実施していても、それだけで利用中の浴槽水のレジオネラ属菌検査を済ませたことにはなりません。
入口の源泉、貯湯槽、浴槽、シャワーでは、同じ水源でも通る設備と管理条件が違います。浴槽を一つ調べた結果を、全ての水系の結果へ拡張しないでください。検体数は、建物の数でも客室の数でもなく、確認された採水箇所と検査項目に基づいて決めます。
客室風呂、貸切風呂、露天風呂、男女の浴槽を分ける際は、名前だけでなく設備番号も振ります。「大浴場」「内湯」だけでは、入替制の運用や担当交代時に取り違えが起こりやすくなります。利用者向けの表示名と、図面・検査報告書で使う管理名を対照できるようにします。
テンプレート1:所在地・許可・管轄確認票
【所在地・許可確認票】作成日: 確認責任者:
施設名/正式住所:
営業許可の種類:旅館・ホテル/簡易宿所/公衆浴場/その他
許可番号・許可日・許可証の保管場所:
宿泊者のみ/日帰り利用あり/併設施設あり:
温泉利用に関する手続きの確認先:
管轄保健所・担当部署・平日連絡先:
時間外の連絡方法(公式に確認したもの):
適用する条例・細則:名称/URL/条項/施行日
参照する国指針・手引き:名称/版/確認日
確認を要する点: 回答者・回答日: 記録の保管先:
設備や営業形態が変わった際の再確認担当:
※そのままコピーして使えます
問い合わせは、「うちは年何回ですか」だけで終えず、許可種類、全浴槽の一覧、換水方法、消毒方法、図面、前回結果を添えて行います。保健所から確認された内容は、口頭の記憶だけにせず、日時、担当部署、質問、回答、適用する設備の範囲を記録します。不明なままの欄を「該当なし」で埋めないことが出発点です。

2.検査頻度は浴槽水の使い方と所在地ルールから決める
「浴槽水の検査は年何回か」を判断する際に重要なのは、宿が毎日営業しているかではなく、浴槽の湯水をどのように使い、いつ完全に換水しているかです。連日営業の宿でも毎日完全換水する浴槽はあり、定休日のある宿でも同じ浴槽水を翌日以降へ持ち越す運用はあり得ます。
「連日使用」は浴槽水の使用状態の話です。営業カレンダーの連続した日数を数えて決めないでください。足し湯、あふれた分の補給、水位を少し下げての補充を、確認せず完全換水と同じ扱いにしないことも重要です。
国指針の浴槽水検査は、年1回・年2回・年4回を条件つきで読む
厚生労働省の現行PDF、別添1「公衆浴場における水質基準等に関する指針」第4・2ウ(PDF3ページ)では、浴槽水の検査頻度を次のように示しています。これは国の指針の整理であり、以下の数字を自宿の所在地条例上の義務と無条件に同一視するものではありません。
| 国指針で示される浴槽水の条件 | 検査頻度 | 結果保存 |
|---|---|---|
| ろ過器を使用していない浴槽水、及び毎日完全に換水している浴槽水 | 1年に1回以上 | 検査の日から3年間 |
| 連日使用している浴槽水 | 1年に2回以上 | 検査の日から3年間 |
| 上の連日使用に該当し、浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合 | 1年に4回以上 | 検査の日から3年間 |
出典は国指針の浴槽水の検査方法・頻度です。方式が複数の記述に当たるように見える場合、たとえばろ過器の有無と湯水の持越しの関係が不明な設備は、宿の判断で低い回数を選ばず、図面と運用を保健所へ示して整理します。
「非塩素ならどんな浴槽でも年4回」という表現も避けます。国指針では連日使用の浴槽水についてのただし書です。必要回数を決めた後も、設備改修、消毒方法変更、管理上の異常等があれば、定期検査以外の対応が必要になり得ます。定期回数を満たすことと、年間の検査がそれだけで足りることは別です。
和歌山県の旅館業条例と公衆浴場条例を分ける
和歌山県の旅館業法施行条例第3条第3項第6号では、浴槽水は年1回以上、連日使用している浴槽水は年2回以上の水質検査を行い、結果を証する書類を検査の日から3年間保管することを定めています。同号の対象から、客ごとに完全換水し清掃するものを除く記載があります。
この除外は、その浴槽水の当該検査規定の範囲の話です。「貸切だから除外」「かけ流しだから除外」「温泉だから全て免除」と拡張しません。客ごとの完全換水と清掃が、図面・運用・記録で確認できるかを示し、適用は管轄へ確認します。浴槽の水質管理、原湯等の検査、日常の衛生措置まで不要になるとの意味ではありません。
県の公衆浴場衛生基準等に関する条例では、第7条第8号に浴槽水の年1回以上・連日使用年2回以上と保存、客ごと完全換水清掃の除外が記載されています。第8条はその他の公衆浴場へ、第7条各号のうち第2号を除く事項等を適用する構成です。旅館業と公衆浴場で、条番号を取り違えないようにします。
県の旅館業条例第3条第3項第3号は、水道水以外の水を使用する原湯・原水・上がり用湯・上がり用水について、年1回以上の検査と3年間の結果保存を定めています。浴槽水の対象や回数だけを見積書に入れ、別に確認すべき原湯等を落とさないようにしてください。
和歌山市は市の資料を確認し、2021年版と2025年改正を混ぜない
和歌山市の条例・細則の改正案内と、そこから公開されている旅館業の衛生措置基準の新旧比較表、公衆浴場の新旧比較表を確認します。これらは2021年の改正を説明する資料です。浴槽水の方式による回数、原湯等の検査、結果保存や報告の確認に使いますが、比較表の条番号を現行条文の番号だと断定しません。
さらに、市は浴槽水に係る検査項目の改正として、2025年4月1日から「大腸菌群」を「大腸菌」へ変更したことを案内しています。2021年の水質表を見つけたからといって、そのまま現在の検査項目として依頼しないでください。県の現行細則にも大腸菌の基準が掲載されています。
年1回・年2回の確認と、検査項目が現行かどうかの確認は、別々に行います。以前と同じ発注番号で検査できたとしても、古い項目や報告様式が残っていないか、見積時に確認する必要があります。
テンプレート2:浴槽方式・頻度判定票
【浴槽方式・頻度判定票】設備ID: 浴槽名: 図面版:
用途:宿泊者用/日帰り用/両用/その他
浴槽水/原湯/原水/上がり用湯/上がり用水:
水源:水道水/温泉水/井戸水/その他
ろ過器:有/無/未確認 循環系統ID:
完全換水のタイミングと方法:
同じ浴槽水を翌日以降も使用:有/無/未確認
客ごとの完全換水・清掃:有/無/記録未確認
消毒方法: 確認資料・業者:
国指針の該当箇所: 所在地条例・細則の該当箇所:
管轄へ確認した定期検査の項目・箇所・回数:
適用除外の有無と対象範囲、回答の記録:
結果保存期間: 次回検査日: 再確認が必要な変更:
※そのままコピーして使えます
複数浴槽を一つのろ過器で管理している、客室風呂の一部だけ循環式である、日によって運用を変える、といった場合は浴槽ごとの表を作ります。同じ機械室にあるから同じ条件とせず、各浴槽からどの配管へ戻るかを図面で確かめます。図面が古ければ、設備業者の現況確認を別の作業として依頼します。

3.検査費用は掲載例と実見積を分け、必要な項目で比較する
レジオネラ属菌の単項目検査と、浴槽水の水質検査セットでは、調べる項目が違います。単項目の方が安く見えても、所在地ルールで必要な検査を満たすとは限りません。逆に、セットに含まれる同じ項目を追加して二重計上しないよう、見積書の内訳を確認します。
本稿で確認した料金は、和歌山県薬剤師会の公式サイトに掲載された例です。2026年9月13日閲覧時の掲載例であり、現在の受注価格を確認した見積ではありません。 料金一覧に表示されている更新日は令和3年6月9日です。掲載日を2026年の価格改定日と読み替えないでください。
和歌山県薬剤師会の掲載例と確認事項
| 公式サイトで確認した内容 | 掲載金額 | 発注前に確認すること |
|---|---|---|
| 浴槽水4項目検査 | 15,730円・税込 | 現在の項目、方法、検体条件、付帯費用 |
| レジオネラ属菌の単項目検査 | 13,200円・税込 | 検体の種類、定期検査の用途に合うか |
出典は検査内容と料金及びレジオネラ属菌の検査案内です。掲載の浴槽水4項目は、濁度、有機物等、大腸菌数、レジオネラ属菌で構成されています。依頼時には現行の自治体基準に対応する項目・方法になっているかを確認します。
この金額は全国相場、最安値、採水から報告までの総額を示すものではありません。現行料金に加え、採水費、出張費、容器、送料、報告書、再発行、再検査、緊急対応の扱いを見積もりで確認します。ページに明記されていない費用を、無料と仮定しないでください。
検査機関を選ぶときは、価格以外に、その検体と方法を扱えるか、依頼先として所在地の要件に合うか、精度管理、受付日、報告の確実さ、基準不適合時の連絡方法を確認します。国指針は、精度管理を行う検査機関へ依頼することが望ましいとしています。検索順位や広告の掲載順を、検査品質の証拠にはしません。
見積もりは同じ採水箇所・同じ項目・同じ受渡条件でそろえる
A機関は来訪採水、B機関は宿が採水して発送する前提であれば、金額の単純比較はできません。採水に対応できる人員、輸送時間、容器、引渡しまでの管理、報告書の受け取り先をそろえます。宿の担当者が対応する場合も、その人時は年間予算から見えなくしないでください。
「2浴槽」と伝えるだけでなく、各浴槽の設備IDと必要項目、原湯等の追加箇所、同じ日に採るのか別日かを明示します。結果報告を急ぎたい場合は、受入可能日と所要日数を先に尋ねます。記事側で一律の検査日数や、迅速法と定期検査の代替関係を決めず、用途と報告形式を機関へ確認します。
テンプレート3:そのまま条件確認に使う見積依頼票
【浴槽水等の検査・見積依頼票】施設: 所在地: 担当:
許可種別: 管轄保健所: 確認済みの適用条件:
依頼目的:定期検査/設備変更後/保健所指示/その他
設備ID・採水箇所・水の種類:
検査項目: 必要な方法・報告単位: 年間予定回数:
採水:来訪希望/指定条件を確認後に宿側対応/要相談
希望日: 営業状態・換水・消毒の通常条件:
確認事項:
・現在の検査単価、税区分、適用期間
・容器、採水、出張、送料、報告書の費用と含有範囲
・検体ごとの必要容器、量、採取・搬送・保存条件
・受付可能曜日、受渡期限、結果予定日
・不適合・判定困難・再検査時の連絡と費用
・精度管理、検査方法、行政提出用の様式への対応
回答期限: 見積有効期限: 発注担当・承認者:
※患者発生や疑いがある場合は、この一般見積より保健所連絡を優先。
※そのままコピーして使えます
見積回答に「一式」とだけあれば、どの設備・何検体・何項目を含むかを確認します。対象浴槽を追加したときの単価、同日採水の出張費、延期時の扱いなど、年の途中で変わりやすい条件も書いてもらいます。依頼先を変える場合は、過去の報告単位と新しい報告単位が比較可能かを確認し、台帳の列を安易に流用しません。
4.年間費用と検査カレンダーを、検体単位で組み立てる
小さな温泉宿の年間衛生管理費は、検査料金×回数だけでは足りません。採水・搬送の費用、日々の測定・記録、設備点検、清掃・保守、管理担当者の時間、臨時検査や是正対応を分けて計画します。定期費用と、発生が不確実な臨時費用を混ぜず、未見積の欄を0円にしないことが重要です。
年間検査料は、箇所ごとに単価と回数を掛けて合計する
年間検査料の基本は、各採水箇所の単価×その箇所の年間回数の合計です。男女2浴槽を年2回検査する場合、単純な説明例では2検体×2回=年間4検体となります。ただし、同じ循環系統だから1検体でよいか、原湯等を何箇所追加するかは、自宿で決めず管轄と検査機関へ確認します。
次は、掲載単価を使った検査料部分だけの算術例です。実際の必要回数や検体数を指定するものではありません。比較のため、同じ4項目セットの単価を15,730円として固定し、年1回・2回・4回を並べます。現行見積で単価が変われば全て差し替えてください。
| 説明用の条件 | 計算 | 検査料部分の年額 |
|---|---|---|
| 1浴槽・年1回 | 15,730円×1検体×1回 | 15,730円 |
| 2浴槽・年2回 | 15,730円×2検体×2回 | 62,920円 |
| 2浴槽・年4回 | 15,730円×2検体×4回 | 125,840円 |
各行は別の仮定です。年4回の案にしただけで、前章の適用確認が済むわけではありません。また、いずれも浴槽水以外の検体、採水、出張、送料、報告書、管理・保守、再検査等は含まない部分計算です。62,920円を「この宿の年間衛生管理費」として予算確定しないでください。
【年間費用の組立式】金額は見積書と同じ税込・税抜区分で統一
A 定期検査料=各箇所の(1検体の単価×年間回数)の合計
B 採水・搬送=来訪採水費+出張費+容器費+送料等
C 日常管理=測定資材+点検・記録の人時+設備保守等
D 計画した清掃・整備=対象作業別の見積額
E 臨時対応=追加採水・再検査・是正対応等の見積/予備枠
年間予算=A+B+C+D+E
※Aや保守契約に含まれる費用をB~Eで二重計上しない。
※Eの枠は想定上限の保証ではない。未見積は「要見積」とする。
※そのままコピーして使えます
衛生管理費を宿泊料金へ反映するときは、売れる見込みの室泊や固定費の扱いを別に検討します。民宿の料金の決め方では原価と料金の関係を扱っています。本稿では衛生管理に必要な検査を減らして採算を合わせず、実見積による費用を経営予算へ渡すことを優先します。
テンプレート4:年間予算と支払予定の台帳
【年間衛生管理予算票】年度/期間: 経理担当: 管理責任者:
区分|設備ID・対象|単位|数量|回数|税込単価|見積額
定期検査: 採水・出張: 容器・送料: 報告書:
日常測定の資材: 測定・記録の人時: 保守・清掃:
臨時検査・再検査: 是正対応: その他:
見積番号・発行日・有効期限:
費用に含むもの/別途のもの: 未見積:
発注月: 支払月: 実績額: 差額理由:
検査対象や頻度の変更を受けた場合の承認者:
予備枠を超える場合の判断者・資金手当の確認先:
※そのままコピーして使えます
予算には支払月も入れます。複数浴槽を同じ月に検査し、同じ月に設備整備が重なると、年額では小さくても支出が集中します。許容される検査計画の範囲で日程を分けられるか検査機関へ相談できますが、資金の都合だけで必要回数や期限を後ろへ動かしません。
休止や是正で宿泊販売へ影響する場合は、浴場の利用停止と、宿泊全体の販売停止の範囲を分けて管理します。営業しなかった日を指標の分母から都合よく外すと損失が見えにくくなるため、経営記録の扱いは小さな宿のRevPAR計算も参照し、対象客室数、暦日、停止理由を残します。

回数だけ決めず、依頼から保存まで日付を置く
年間カレンダーには採水日だけでなく、見積・発注日、容器受領日、結果予定日、確認担当、次回日を入れます。結果が届いた日が担当者の休みなら、基準不適合の連絡が止まらないよう代替者を決めます。連休前の採水では、検査機関の受付と搬送条件を特に確認します。
年2回を計画する際は、年末に続けて2回採れば管理の意図を満たすと自己判断しません。検査間隔、営業の繁閑、設備の状態、前回結果を踏まえ、管轄・検査機関と日程を確認します。逆に、何月と何月が全国一律の法定採水月だと創作することもしません。
テンプレート5:年間検査カレンダー
【年間検査カレンダー】期間: 最新版の所在:
設備ID|検査項目|確認した年間回数|確認元・確認日
第1回:発注日/採水日/結果予定日/結果確認日/保存先
第2回:発注日/採水日/結果予定日/結果確認日/保存先
第3回・第4回等:必要な設備について同じ項目を追加
原湯・原水・上がり用湯水の別計画:
採水担当と代替者: 結果確認担当と代替者:
連休・休館・機関休業との調整:
延期時の代替日と期限への影響確認:
設備変更・異常等による臨時検査:定期検査と別欄で記録
月次確認:未発注/未採水/結果待ち/保存未完了/是正中
※そのままコピーして使えます
定休日や閑散期に検査・整備をまとめる案は、受入条件と通常の管理状態を確認したうえで検討します。採水直前だけ特別な運転へ変えて、日常の状態が分からない検体にする計画にはしません。宿の閑散期対策にある営業計画とは別に、衛生管理上必要な日程と条件を守ります。
5.採水は検査機関と条件を決め、検体の取り違えを防ぐ
検査料を決めても、採水条件が合わなければ、検体を受け付けてもらえなかったり、結果の意味を十分に判断できなかったりします。宿が行うべき準備は、自己流の採水手順を覚えることではなく、検査機関と採水点、担当者、指定容器、必要量、保存・搬送条件を合意し、現場へ伝えることです。
厚生労働省のレジオネラ属菌検査方法には、採水量や残留塩素の中和、保存温度などの技術条件が示されています。本記事では、それらを宿が一般容器や薬剤で再現する手順には置き換えません。消毒方法、水質、検査項目、採水から分析までの経路を検査機関へ伝え、機関が指定する容器と条件に従ってください。採水自体も機関へ依頼する必要があるかを確認します。
設備ID・採水点・検査項目を一本でつなぐ
たとえば、館内で「露天風呂」と呼ぶ浴槽が二つある場合、口頭の名前だけでは結果を取り違えます。図面と現場ラベルを対応させて、浴槽水B01、浴槽水B02、原湯H01など、施設内で重複しないIDを付けます。IDの例は宿で決める識別方法であり、公的な番号ではありません。
一つの浴槽でも、循環設備や配管の状況を踏まえて採水点を指定される場合があります。「同じ建物だから一つでよい」「男女の湯を混ぜれば検査料を減らせる」と宿だけで決めないでください。異なる設備の水を混ぜた検体では、どの浴槽の状態なのかを判断しにくくなります。検体数を削減できるかは、設備系統を示して管轄と検査機関へ確認します。
採水予定票には、採水点を指差しできる位置情報を付けます。館内図の位置、浴槽名、循環系統、容器番号が一致していれば、担当者が交代しても確認できます。施設に検査機関の担当者が来る場合も、宿側の立会者が実物と依頼書を照合します。
容器が届いた段階で、搬送までを確認する
容器の本数だけでなく、どの容器にどの検体を採るか、封を開ける時期、記入欄、期限、受渡し方法を確認します。指定容器に入っているものを捨てたり、すすいだり、別の薬剤を足したりしてよいと自己判断しません。説明書に不明点があれば、採水前に検査機関へ確認します。
「冷蔵すればよい」「当日発送ならよい」という曖昧な指示も避けます。機関が指定した温度・時間・梱包・発送条件をそのまま作業票へ転記し、採水日の集荷時刻と受入日が合うかを確認します。宅配便の遅延、休日の受取不可、容器の破損などがあれば、通常どおりの検体として扱えるかを機関に判断してもらいます。
採水担当が宿の従業員である場合も、現場での安全と説明の理解を確認してから割り当てます。熱い設備や管理区域への立入りが必要な作業を、未経験者に一人で任せないでください。設備業者、検査機関、管理責任者が、それぞれどの作業を担当するかを先に分けます。
採水時の運転状態を事実として残す
通常営業中か休館中か、直前の換水・清掃日時、使用している消毒方法、確認した水温や残留塩素など、結果を解釈する際に必要な情報を機関の指定に沿って記録します。測っていない値を、いつもの値や目標値で埋めないことが大切です。
試料採取のために運転状態を変える必要がある場合は、その目的と条件を管轄・検査機関に確認します。検査を通すためだけに普段と異なる管理をし、その変更を記録しない運用では、結果と日常管理のつながりが失われます。一方、指示された安全上の措置を、通常状態を保つためという理由で先延ばしにすることも避けます。
テンプレート6:採水条件・受渡し確認票
【採水条件・受渡し確認票】依頼番号: 設備ID:
検査機関/条件を確認した担当者/確認日:
検査目的:定期/臨時/指示による確認(具体的な内容: )
採水対象と位置:浴槽水・原湯等の区分/図面上の位置
採水実施者と立会者: 採水予定日時:
指定容器の名称・番号・本数: 検査項目との対応:
機関指定の必要量・容器取扱い・中和等の注意:説明書参照先
機関指定の保存温度・受入期限・梱包条件:
発送・持込・回収の方法: 引渡し日時: 受領確認方法:
採水時の運転状態/直前の換水・清掃/指定された測定値:
容器・ラベル・依頼書の一致確認:担当者/確認時刻
遅延・漏れ・破損・条件逸脱の有無: 機関への連絡と判断:
報告書の到着予定: 未着時の確認担当:
※そのままコピーして使えます
採水後は、送り状の番号だけで完了にせず、検体が受理されたかを確認します。検査機関から「量が足りない」「容器が違う」「条件を確認できない」と連絡があれば、再採水の要否、費用、期限への影響を管理責任者が判断できるようにします。受理できない検体を、結果待ちとして年間カレンダーに残し続けないでください。
検査方法についても、定期検査に使う方法、速報の扱い、正式報告書の予定を確認します。短時間で結果が分かる方法が紹介されても、その結果が所在地の規定や管轄の指示を満たすかは別の確認事項です。速報だけで正式な検査が終わったことにしたり、再開が認められたことにしたりしません。

6.定期検査とは別に、日常管理の作業と費用を確保する
定期検査は、採水した場所と時点の状況を確認するものです。結果が基準内でも、その後の清掃、換水、消毒、設備点検が不要になるわけではありません。年間費用を小さく見せるために検査料だけを計上すると、実際に必要な作業時間や設備整備の費用が漏れます。
ここでは和歌山県の旅館業法施行条例・細則を例に、日常管理で確認する項目を整理します。和歌山市内や公衆浴場の許可については、それぞれの適用規定と管轄の説明を確認してください。また、表は現場手順書を作るための確認表であり、設備メーカーの手順や管轄の指示を置き換えるものではありません。
水質基準は浴槽水と原湯等で違う
和歌山県の旅館業法施行細則第7条では、原湯・原水・上がり用湯水と、浴槽水の水質基準が分けられています。浴槽水の基準をそのまま原湯に当てはめず、報告書の検体区分に対応する基準を照合します。
| 確認項目 | 浴槽水の基準 | 原湯・原水・上がり用湯水の基準 |
|---|---|---|
| 色度 | この区分の同条の基準項目としては掲げられていない | 5度以下 |
| 濁度 | 5度以下 | 2度以下 |
| 水素イオン濃度 | この区分の同条の基準項目としては掲げられていない | pH5.8以上8.6以下 |
| 有機物 | 全有機炭素(TOC)8mg/L以下、または過マンガン酸カリウム消費量25mg/L以下 | TOC3mg/L以下、または過マンガン酸カリウム消費量10mg/L以下 |
| 大腸菌 | 1CFU/mL以下 | 検出されないこと |
| レジオネラ属菌 | 検出されないこと(10CFU/100mL未満) | 検出されないこと(10CFU/100mL未満) |
この表の「同条の基準項目としては掲げられていない」は、日常の異常を見なくてよいという意味ではありません。色や臭い、設備の状態が普段と違えば、管理責任者へ報告し、必要な対応を確認します。また、同条には知事が衛生上危害を生ずるおそれがないと認める場合の一部項目の扱いがありますが、レジオネラ属菌まで一律に除外されるものではありません。泉質を理由に、宿が独自に「温泉だから基準を適用しない」と決めないでください。
有機物の検査も、TOCと過マンガン酸カリウム消費量の両方を必ず発注するという意味ではありません。適用規定、検査機関の項目構成、管轄の確認に基づいて見積を取ります。価格表にある検査セットが、自施設で確認すべき項目を満たしているかを照合してください。
残留塩素の管理と薬剤の投入量を混同しない
同細則第8条は、遊離残留塩素濃度を通常0.4mg/L程度であり、最大1mg/Lを超えないこと、モノクロラミンの場合は3mg/L程度に保つことを示しています。これは残留濃度の管理に関する規定であり、浴槽へ投入する薬剤の量をそのまま示す数値ではありません。
泉質、設備、薬剤の種類、測定方法によって管理上の確認点が変わります。薬剤の投入量や異なる薬品の扱いは、設備業者・薬剤供給者・管轄の説明に沿って手順書へ定めます。塩素系薬剤を使わないという判断についても、泉質上の理由だけで検査頻度や管理が自動的に軽くなるとは考えません。
県条例第3条第3項第5号では、塩素系薬剤による消毒、毎日の残留塩素濃度の測定・記録、記録の3年間保存等が定められています。規定上の例外に該当するか、代替措置として何が必要かは管轄へ確認します。担当者が測定を忘れた日は、推定値で記録を完成させず、未実施の事実とその後の確認を残します。
換水・ろ過・配管・シャワーを別の作業にする
県の旅館業法施行条例第3条第3項には、浴槽だけでなく、貯湯槽、ろ過器、配管、水位計、シャワー等に関する管理が定められています。毎日浴槽を拭いているという説明だけでは、設備内部の管理が確認できません。
| 対象 | 県の旅館業の規定で確認する頻度・条件の例 | 宿で予算と担当を決める作業 |
|---|---|---|
| 浴槽水・浴槽 | 毎日完全換水して清掃。循環式浴槽は少なくとも週1回 | 排水・清掃・補給にかかる時間、水、熱、担当者 |
| ろ過器・循環配管 | ろ過器は1週間に1回以上十分に逆洗浄。ろ過器と循環配管は1年に1回程度、生物膜の状況を点検し、認められた場合は除去・消毒 | 設備に応じた作業、点検・外注の日程と費用 |
| 集毛器 | 毎日清掃・消毒 | 営業前後の担当と実施記録 |
| 水位計配管 | 1週間に1回以上、適切な消毒方法で生物膜を除去 | 対象配管の特定、実施方法の確認 |
| シャワー | 1週間に1回以上内部の水が置き換わるように通水。ヘッド・ホースは6か月に1回以上点検、1年に1回以上内部洗浄・消毒 | 使用頻度の低い箇所も含めた一覧と点検日 |
| 貯湯槽 | 通常60℃以上、最大使用時55℃以上に保つ。困難な場合の規定上の措置も確認 | 貯湯設備の点検、記録、必要な専門業者対応 |
上表の貯湯槽の60℃・55℃は、貯湯設備の管理に関する条件です。浴槽の入浴温度をその値にする指示ではありません。設備ごとの温度管理と、利用者が触れる湯の安全は分けて管理してください。
表にない配管系統や消毒装置にも確認事項があります。県条例には、使われていない配管の把握と除去、消毒薬剤の注入位置、浴槽水がある間のろ過器・消毒装置の運転などの規定もあります。実設備の図面と手順書を照らし、業者でなければ確認できない部分を「現場で見えないため対象外」としないことが大切です。
テンプレート7:日常・定期点検票
【日常・定期点検票】対象設備ID: 適用手順書の版:
日付/時刻/実施者/確認者:
浴槽・換水・清掃:予定/実施/未実施理由/引継ぎ
残留塩素等:規定・手順書の管理条件/実測値/測定方法
貯湯槽:確認箇所/手順書の条件/実測値(浴槽温度と別欄)
集毛器:清掃・消毒の実施と異常
ろ過器・水位計配管:作業予定日/実施日/業者記録の所在
シャワー:対象番号/通水日/点検日/内部洗浄・消毒日
薬剤・測定器:残量/期限/点検状態/補充・交換予定
普段と異なる臭い・色・汚れ・運転状態:事実を記載
未実施・異常への対応:責任者への連絡日時/判断/完了確認
翌勤務者への引継ぎ:未完了事項/期限/担当者
※そのままコピーして使えます
記録票を増やすだけでは、作業時間は確保できません。朝の立上げ、営業中、営業後、週単位、年単位の作業を勤務表に置き、担当者が休む日の代替者を決めます。外注業者の作業でも、報告書の受領と未完了事項の確認は宿の責任者が行います。人手が足りない状態が続く場合は、検査回数を減らす前に、管理できる営業範囲や作業の外注を検討します。
7.結果を設備ごとに照合し、3年保存を運用にする
報告書が届いたら、まず施設名、採水日、検体番号、採水点、検査項目が依頼内容と一致しているかを確認します。すべての浴槽の結果が届いているとは限りません。原湯だけの報告書を見て浴槽水も確認できたと扱ったり、一つの浴槽の結果を同じ建物全体へ広げたりしないでください。
検査機関から先に電話で連絡があった場合は、正式報告書を待って初動を止めず、内容、担当者、受電時刻を記録します。電話連絡を受けた人が責任者でない場合も、直ちに代替責任者へつながる経路を決めておきます。閉館後のメールだけでは重大な結果に気づけないため、連絡方法は発注時に合意しておくと運用しやすくなります。
「10未満」と「10以下」は違う
レジオネラ属菌の基準は、ここで参照している国指針と県細則では、検出されないこと、すなわち10CFU/100mL未満です。10CFU/100mLという値を「10以下だから基準内」と扱ってはいけません。和歌山県は、原湯又は浴槽水から10CFU/100mL以上のレジオネラ属菌が検出されたときの報告を案内しています。
CFUは菌の集落形成に基づく単位であり、報告書の数値は単位と併せて読みます。CFU/100mLとCFU/mLを見落としたまま数値だけを比較しないでください。また、報告書の「不検出」は、その検査方法や検出限界などの条件に基づく表現です。施設内に菌が絶対に存在しない、今後の利用者の安全を保証する、という意味に広げません。
「判定不能」「検査未実施」「検体不適」などの状態は、基準内という結果ではありません。どの項目が評価できなかったか、再採水が必要か、管理上の対応が必要かを検査機関と管轄へ確認します。台帳で空欄のままにしたり、便宜上ゼロを入れたりすると、次の担当者が正常結果と誤認します。
保存期間は検査日と紐づけ、関連記録も探せる状態にする
国指針は検査結果を検査の日から3年間保存するとしています。和歌山県の旅館業・公衆浴場の該当規定でも3年間の保存が定められています。受付日、採水日、検査日、報告日が違う場合は報告書の記載を確認し、期限を短く見積もらないよう管理します。
保存媒体を決める際は、適用規定や管轄への確認に加え、設備別・日付別に検索できること、責任者が不在でも取り出せること、変更前の記録を失わないことを重視します。スキャンする場合は全ページ、単位、脚注、検査機関名、報告番号が読めるかを確認し、原本の扱いも決めてください。写真が一枚あるだけでは、必要なページや判定条件が抜けることがあります。
日常管理の記録、採水条件、報告書、保健所との連絡、是正報告、再検査を同じ案件番号で結びます。過去の検査結果を見て異常が繰り返される設備を把握できるよう、設備を更新したときは旧IDと新IDの対応も残します。名称だけ変更して履歴が切れると、前回から改善したかを説明しにくくなります。
テンプレート8:検査結果台帳
【検査結果台帳】案件番号: 設備ID: 年度:
検査目的/検査機関/依頼番号/報告書番号:
採水対象・採水点: 採水日: 検査日: 報告日:
検査項目ごとの結果:報告書どおりの数値・単位・表現
適用基準:根拠資料/確認日/比較した単位
判定:基準内/基準不適合/評価未完了(理由: )
不足項目・未着検体の有無: 確認先と期限:
責任者が結果を確認した日時: 代理確認者:
管轄への報告・相談:日時/相手/内容/指示記録の所在
対応案件番号: 是正・再検査等へのリンク:
原本の保存先/電子ファイルの保存先:
保存期限の確認:起算に使った日付/根拠/確認者
次回定期検査予定: 臨時対応と重複・混同していないか:
※そのままコピーして使えます
台帳の役割は、検査結果を一行に縮めて原本を捨てることではありません。次の担当者が原本と対応経緯にたどり着ける索引にすることです。「確認済み」とだけ書くより、誰がいつ、何の基準と照合し、未完了があるかを記録したほうが引継ぎに使えます。
また、検査が基準内だったとしても、利用者から体調に関する連絡があれば、その情報を検査結果だけで否定しません。患者又は疑い発生の連絡は、以下の別の初動として扱います。宿の担当者が病気の有無を診断する必要はなく、受け取った事実を保健所へ正確に伝えることが重要です。
8.定期検査での検出と、患者・疑い発生を分けて対応する
異常時の対応を「陽性なら清掃」と一行にまとめると、患者発生時に必要な調査へ影響するおそれがあります。厚生労働省の現行循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルの冊子18〜19頁では、検査でレジオネラ属菌が検出された場合と、患者又はその疑いのある者が発生した場合の対応例が分けられています。
同マニュアルは具体的な対策例を示す資料です。各施設の設備と状況、所在地の規定、保健所の指示によって対応を確認します。本記事も、全国一律の停止範囲や再開条件を新たに定めるものではありません。
A:定期検査等で菌が検出された場合
定期検査の結果で問題が判明したら、管理責任者へ直ちに共有し、利用者の健康被害に関する情報を確認して、管轄保健所へ連絡・報告します。和歌山県のレジオネラ症防止に関する案内は、原湯又は浴槽水から10CFU/100mL以上のレジオネラ属菌が検出された場合の報告を求めています。施設の所在地と許可に応じた報告先・手続きを確認してください。
連絡時には、対象浴槽、採水日時、結果と単位、使用中かどうか、循環系統、直近の清掃・換水、利用者からの健康情報を準備します。報告書に書かれていることと、まだ調べていないことを分けて説明します。「おそらく大丈夫」という評価だけを伝えず、不明点は不明として伝えてください。
対象浴槽や関連系統の利用をどう扱うか、追加の採水が必要か、いつどの範囲を洗浄・消毒するか、再検査や原因調査をどう進めるかを保健所へ確認します。事前に追加の検体を採る必要がある場合もあるため、結果を見た直後に宿だけで一律に全部を排水・消毒する手順にはしません。
同時に、従業員が問題を把握せず浴場を案内し続ける状態を防ぎます。責任者が決めた暫定措置と保健所への確認事項を、受付、清掃、設備管理、予約担当へ共有します。連絡がつかない時間帯を含め、あらかじめ緊急連絡先と責任者の代替者を確認しておくと、結果到着後の判断が滞りにくくなります。
利用者から患者又は疑いに関する連絡が加わった場合は、定期検査の対応だけを続けず、次のBへ切り替えます。検査結果の数値が低い、別の浴槽が基準内だった、などを理由に連絡を見送らないでください。
B:患者又はその疑いがある人の発生連絡を受けた場合
患者又は疑い発生の情報を受けた場合は、管理責任者と保健所へ直ちに連絡します。現行マニュアルは、施設の利用を直ちに中止し、原因究明に支障を来さないよう消毒・洗浄をせず現状を保持する対応を示しています。施設の判断体制と保健所の指示のもとで、利用中止、現状保持、調査協力を進めてください。
定期検査で菌が検出された場合と同じ感覚で、証拠となる状態を変えてしまわないことが要点です。連絡を受けた従業員が、善意でいつもの清掃や排水を始めないよう、責任者は清掃・設備担当にも速やかに伝えます。安全確保上の緊急事項や設備上の事情があるときも、独自判断で調査に必要な状態を変える前に保健所へ相談します。
受け取った連絡の日時、相手、内容、利用日、利用施設など、確認できた事実を整理します。利用者の体調に関する詳しい判断は医療機関・保健所へつなぎ、宿が感染原因や診断を確定する説明はしません。利用履歴や管理記録を求められたときに提出できるようにし、個人情報は対応に必要な担当者の範囲で取り扱います。
テンプレート9:異常時の初動カード
【異常時の初動カード】掲示先:管理区域 更新日:
管理責任者:氏名/電話 代替責任者:氏名/電話
管轄保健所:担当窓口/電話/時間外連絡の確認先
検査機関:電話 設備業者:電話
A 定期検査等で菌が検出された場合
1.結果・設備ID・採水日・数値と単位を記録し、責任者へ直ちに共有
2.健康被害に関する情報を確認し、管轄保健所へ連絡・報告
3.利用停止の範囲、追加採水、洗浄・消毒の順序を保健所へ確認
4.指示と暫定措置を受付・清掃・設備・予約担当へ共有
5.是正・再検査・原因調査・再開判断の経緯を記録
患者又は疑い発生の情報があれば、Bへ切り替える
B 患者又は疑い発生の連絡を受けた場合
1.管理責任者と保健所へ直ちに連絡
2.施設の利用を直ちに中止し、関係担当者へ共有
3.消毒・洗浄をせず現状を保持し、保健所の調査・指示に協力
4.受けた情報と利用履歴、設備・清掃・検査の記録を準備
5.公表・利用者対応・是正・再開は保健所と確認して記録
共通:連絡日時/相手/受けた指示/実施者/未完了事項を残す
再検査1回の陰性だけで、自動的に再開を決めない
※そのままコピーして使えます
このカードは、電話番号を埋めて初めて使える状態になります。営業時間外の連絡先が未確認なら、そのまま空欄を放置せず、平時に管轄へ確認します。スタッフ向けの短い読み合わせでは、「結果の異常」と「患者・疑いの情報」のどちらを受け取ったかを説明し、最初に誰へ連絡するかを確かめます。

是正の完了と営業再開を同じ印で処理しない
設備業者の洗浄が終わった、検査機関から結果が出た、保健所へ連絡した、という事実は、それぞれ別に記録します。どれか一つが終わっただけで、必要な対応がすべて終わったとは限りません。再開に必要な確認事項は、原因、設備、利用停止の経緯、所在地の規定、保健所の指示によって異なります。
「再検査が1回陰性なら再開」「何日休めば必ず再開」といった全国一律の条件は、本記事では置きません。どの検体を、どの条件で、いつ調べるか、その結果を含めて誰と再開を確認するかを、保健所とのやり取りに沿って記録します。確認事項が未完了のまま、予約が入ったことを理由に浴場の提供を再開しないでください。
テンプレート10:是正・再開確認票
【是正・再開確認票】案件番号: 対象設備と範囲:
発端:定期検査等/患者・疑い発生/その他( )
利用停止の開始日時と範囲: 決定・指示の記録:
保健所との連絡履歴:日時/担当/内容/次回連絡
原因調査:確認した事実/仮説/未確認事項
追加採水:指示・確認先/対象/実施日時/結果の所在
洗浄・消毒・設備是正:内容/実施者/完了日/報告書
是正後の検査等:確認した条件/結果/未完了事項
再開前に必要と確認した事項:一項目ずつ担当と確認日を記載
再開についての保健所との確認内容:日時/相手/記録の所在
施設側の再開判断:責任者/日時/対象範囲/理由
従業員・予約客・販売経路への案内:担当/文面/実施日時
再開後の管理計画:追加確認/担当/期限/報告先
費用:検査・採水・業者作業・利用者対応等を実額で記録
※そのままコピーして使えます
予約客への案内は、利用可否と確認中の事実を分ける
浴場の利用中止が決まったら、既存予約、連泊客、当日到着客、日帰り利用者にどのような影響があるかを把握します。宿泊全体と浴場の停止範囲を混同せず、現在提供できる内容と未確認事項を整理します。健康に関する案内や公表の内容・タイミングは、保健所と確認してください。
予約客へは、利用できない設備、期間の見通しが確定しているか、変更・取消の相談窓口など、判断に必要な事実を案内します。「検査したので安全」「少量だから問題ない」など、結果から言えない安心表現は避けます。再開日が未確定なのに、販売担当者だけで期日を約束しないことも大切です。
連絡担当を一本化し、電話・自社予約・OTAで異なる説明が出ないようにします。南紀の宿の直接予約導線も参考に、予約窓口と問い合わせ先を明確にしておくと、対象者への連絡と記録を整理しやすくなります。案内を送ったことと、相手が受け取って意向を確認できたことは別の状態として残します。
検査費用だけでは吸収できない臨時支出があった場合は、今回の実費と原因を次年度の予算へ戻します。設備修繕と再検査が必要だったなら、単に「検査費が高かった」とまとめず、再発防止の作業、設備更新、予備費へ分けます。費用の記録を、必要な衛生管理を削るためではなく、次に備えるために使います。
よくある質問
Q. 温泉のレジオネラ検査は、全国一律で年何回ですか?
全国一律の回数だけで決められません。国指針は、ろ過器を使用していない浴槽水又は毎日完全換水する浴槽水は年1回以上、連日使用する浴槽水は年2回以上、そのうち塩素消毒でない場合は年4回以上としています。所在地の条例、許可種別、設備方式、保健所の指示を別に確認してください。
Q. 毎日営業している旅館は、すべて「連日使用」に当たりますか?
当たりません。ここで確認するのは宿の営業日数ではなく、同じ浴槽水を複数日にわたり使用するかという運用です。換水、清掃、循環、ろ過、消毒の方法を設備ごとに整理し、適用する検査区分を管轄へ確認します。
Q. 和歌山県の旅館では、浴槽水検査は年1回でよいですか?
県の旅館業法施行条例第3条第3項第6号は年1回以上、連日使用する浴槽水は年2回以上と定めています。客ごとの完全換水と清掃を行うものには当該検査規定の除外がありますが、他の衛生管理まで免除されるものではありません。和歌山市内など所在地の違い、許可、設備条件を管轄へ確認してください。
Q. 貸切風呂やかけ流し温泉なら、検査は不要ですか?
名称だけでは判断できません。客ごとの完全換水と清掃という条件を満たすか、どの条例のどの規定が適用されるかを確認します。貸切、かけ流し、温泉であることを理由に、浴槽水検査や原湯等の検査、清掃・消毒などを一括して不要とは扱いません。
Q. レジオネラ検査の費用はいくらを見込めばよいですか?
2026年9月13日に確認した和歌山県薬剤師会の掲載例は、浴槽水4項目15,730円税込、レジオネラ属菌の単項目13,200円税込です。料金表の表示更新は令和3年6月9日であり、現在の見積を保証しません。採水費、出張費、送料、報告書、再検査の扱いを含め、必要な検体数と回数で見積を取得してください。
Q. 浴槽が二つある場合、一検体の検査で済みますか?
宿だけで決めず、浴槽と循環系統の図を示して管轄・検査機関へ確認します。二つの浴槽の水を混ぜたり、一方の結果を他方へ広げたりしないでください。必要な採水点と検体数を確認してから年間費用を計算します。
Q. 浴槽水4項目を検査すれば、原湯やシャワーも確認したことになりますか?
なりません。浴槽水と原湯・原水・上がり用湯水は検査対象と基準が分かれています。どの設備の何を採った検体かを区別し、適用される検査項目と回数を確認して発注します。
Q. 採水は自分で行い、普通のボトルで送ってよいですか?
検査機関へ採水担当と条件を確認し、指定された容器を使ってください。必要量、容器の取扱い、中和、保存温度、受入期限、搬送方法は機関の指示に従います。家庭の容器や自己流の薬剤処理へ置き換えず、条件を満たせないときは機関へ相談します。
Q. 基準は「10CFU/100mL以下」ですか?
違います。参照している国指針と和歌山県細則の基準は、検出されないこと、すなわち10CFU/100mL未満です。10CFU/100mLを基準内と扱わず、結果の単位と検体区分を確認して管轄へ連絡します。
Q. 定期検査でレジオネラ属菌が検出されたら、すぐ全量排水・消毒しますか?
一律に全量排水・消毒する手順にはしません。管理責任者へ直ちに共有し、健康被害に関する情報を確認して、保健所へ連絡・報告します。利用停止の範囲、追加採水、洗浄・消毒の順序、再検査などを確認し、指示と実施内容を記録してください。
Q. 利用者から患者又は疑い発生の連絡があった場合はどうしますか?
管理責任者と保健所へ直ちに連絡し、施設の利用を直ちに中止します。原因究明に支障を来さないよう消毒・洗浄をせず現状を保持し、保健所の調査・指示に協力します。定期検査の結果だけで受け取った情報を否定せず、利用履歴や管理記録を準備してください。
Q. 再検査が1回陰性なら、自動的に営業を再開できますか?
自動的に再開できるとは扱いません。原因調査、設備の是正、検査の対象と条件、所在地の規定、保健所の指示に応じて必要事項を確認します。是正作業の完了、結果受領、保健所との再開に関する確認を別々に記録してください。
Q. 検査結果は何年間保存しますか?
国指針は検査の日から3年間の保存を示し、和歌山県の旅館業・公衆浴場の該当規定にも3年間の保存が定められています。検査日と報告日を区別し、設備ID、採水条件、報告書、是正記録を対応させて取り出せる状態にします。適用規定と保存方法は管轄へ確認してください。
Q. 貯湯槽の60℃・55℃という条件は、入浴する湯の温度ですか?
違います。和歌山県の旅館業の規定にある通常60℃以上・最大使用時55℃以上は、貯湯槽の管理に関する条件です。浴槽の入浴温度をその値にする指示ではありません。設備ごとの管理条件と利用者が触れる湯の安全を分けて確認します。
10.最初の一週間で確認先と年間管理表をそろえる
温泉のレジオネラ検査は、料金表から一つの金額を選ぶだけでは管理計画になりません。所在地と許可、浴槽水の使い方、検査対象を決め、管轄で頻度を確認し、検査機関から同じ条件の見積を取ることが出発点です。日常管理、採水、結果保存、異常時の連絡まで担当をつなげると、必要な年間費用の内訳が見えるようになります。
小さな宿では、一人の担当者が設備管理と接客を兼ねることもあります。だからこそ、詳しい人の記憶だけに頼らず、設備IDと確認済みの条件を残します。新しく立派な管理システムを入れる前に、既存の報告書、図面、許可証、清掃記録を集め、未確認の項目を明確にしてください。
最初の一週間の進め方は、以下のように組めます。これは導入作業の例であり、異常や患者・疑い発生への対応を一週間後まで待つという意味ではありません。
| 作業の順 | そろえるもの・確認すること | 完了とする状態 |
|---|---|---|
| 1 | 許可証、所在地、管轄、設備図、過去の検査結果 | 対象設備と適用を確認する相手が分かる |
| 2 | 方式判定票を作り、回数と対象を管轄へ確認 | 回数の根拠、確認日、担当窓口を記録した |
| 3 | 見積依頼票を検査機関へ渡す | 同じ検体・項目・回数で費用と条件が比較できる |
| 4 | 年間予算とカレンダーを作る | 採水日だけでなく結果確認・保存の担当も決まった |
| 5 | 日常点検票、結果台帳、初動カードを読み合わせる | 不在時の代替者と連絡先まで埋まっている |
まだ見積が届かない項目は、見積待ちと書きます。管轄に確認できていない検査条件は、確認中と書きます。空欄を推測で埋めた年間総額より、確定した費用と未確定項目が分かる表のほうが、経営判断にも現場の引継ぎにも役立ちます。
株式会社Tipでは、宿の管理業務の整理や、予約客への案内・問い合わせ導線などを、事業運営の観点からご相談いただけます。衛生上の基準、採水条件、設備の改善、利用停止・再開については、管轄保健所、検査機関、専門業者との確認を軸に進めてください。
参照した一次資料と確認日
以下は2026年9月13日に確認した資料です。全国の国指針、和歌山県の条例・細則、和歌山市の改正案内、検査機関の料金掲載例を区別して使用しています。所在地や設備条件が異なる施設は、同じ回数や費用をそのまま当てはめず、適用する現行規定と実見積を確認してください。
- 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」別添1・第4の2ウ:浴槽水の検査頻度と3年間の保存。PDF3頁。現行資料の改正履歴は令和8年1月20日まで記載。国の衛生等管理要領
- 厚生労働省「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」:冊子18〜19頁の検出時・患者又は疑い発生時の対応例を参照。旧版のURLではなく現行資料を使用。現行マニュアル
- 厚生労働省「レジオネラ属菌検査方法」:採水・保存・搬送等の技術条件を確認。宿の自己流手順へ置き換えず、検査機関の指定に従う整理とした。検査方法
- 和歌山県「旅館業法施行条例」第3条第3項:浴槽水・原湯等の検査、保存、清掃・消毒、設備管理等を参照。旅館業法施行条例
- 和歌山県「旅館業法施行細則」第7条・第8条:浴槽水と原湯等の水質基準、残留塩素濃度の管理を参照。旅館業法施行細則
- 和歌山県「公衆浴場衛生基準等に関する条例」第7条第8号・第8条:公衆浴場の浴槽水検査とその他の公衆浴場への適用関係を参照。公衆浴場衛生基準等に関する条例
- 和歌山県「公衆浴場、旅館のレジオネラ症防止について」:原湯又は浴槽水から10CFU/100mL以上検出された場合の報告と管轄保健所の案内を参照。県の報告案内
- 和歌山市「旅館業・公衆浴場の営業者の皆様へ」令和3年の改正案内と新旧対照表:市に独自の規定があることを確認。2021年の対照表上の条番号を現行条番号と断定していない。2021年の改正案内、旅館業の新旧対照表、公衆浴場の新旧対照表
- 和歌山市「浴槽水の水質基準が変わります」:令和7年4月1日から浴槽水の大腸菌群が大腸菌へ変更された現行の改正案内を参照。2025年の水質基準改正案内
- 一般社団法人和歌山県薬剤師会:浴槽水4項目15,730円税込、レジオネラ属菌単項目13,200円税込の掲載例を参照。料金表の表示更新は令和3年6月9日。2026年9月13日の閲覧で掲載を確認したもので、現行料金と付帯費用は見積確認が必要。料金表、レジオネラ属菌の検査案内