
結論: 2025年度のふるさと納税は寄付額1兆3,314億円で過去最高を更新しましたが、そのうち約1,490億円が仲介サイトの手数料として自治体から出ています。返礼品を出す事業者にとって重要なのは手数料そのものではなく、その先で起きる「自治体の経費の詰め直し」です。確認すべき数字は、仲介手数料率11.5%、経費率47.9%、返礼割合3割の3つ。この3つが分かれば、契約更新前に自社の卸値と出品条件をどう守るかを判断できます。
この記事の要点 対象読者: 和歌山県、特に南紀(田辺・白浜・新宮・みなべ・串本・那智勝浦・御坊)でふるさと納税の返礼品を提供している農水産・加工・小売・宿泊の事業者と、その担当者 読了後にできること: 自治体ごとの取引条件と自社の取り分を1枚の表にまとめ、契約更新の面談で何を確認すべきかが決まった状態になる
「来年度から寄付額を見直したい、と自治体から言われました」
ふるさと納税の返礼品を出している事業者から、この種の話が出はじめるのが毎年この時期です。相手は悪意で言っているわけではありません。自治体の側にも、募集にかけられる経費の上限が法令で決まっているという事情があります。
やっかいなのは、報道の見出しが「仲介サイトが儲けすぎ」「自治体が赤字」という対立構図で流れる一方で、返礼品事業者の取引条件がその構図のどこに位置しているかは、ほとんど語られないことです。実際には、手数料が下がっても上がっても、調整の最後の一押しが向かう先は返礼品の調達費、つまりあなたの卸値になりやすい構造があります。
この記事では、総務省が2026年5月12日と7月31日に公表した2本の調査を一次情報で確認したうえで、和歌山の返礼品事業者に効いてくるポイント、今週できる5ステップとそのままコピペで使える8本の文例、そして契約更新前のチェックリスト8項目を整理します。手元に、取引している自治体の名前と、直近1年の寄付件数が分かるもの(なければ思い出せる範囲のメモ)を用意しながら読み進めてください。
目次
まず結論:返礼品事業者が今週やる5ステップ(今週の作業)
先に全体像です。制度改正の行方を待つ必要はありません。今週の作業は、次の5つで完結します。
| ステップ | やること | 今日できる最初の一歩 |
|---|---|---|
| 1. 取引条件の棚卸し | 自治体別の寄付額・卸値・送料負担を一覧にする | 契約書と請求書を1か所に集める |
| 2. 自社の取り分の計算 | 寄付額に対する手取り率を出す | 直近3か月の入金明細を並べる |
| 3. 自治体への確認 | 手数料と経費方針を担当者に聞く | 質問を3つに絞ってメールを送る |
| 4. 原価と寄付額の再計算 | 送料・箱代を含めた採算線を引く | 1件あたりの送料実額を調べる |
| 5. 自社EC比率の引き上げ | 直販の入口をもう1本作る | 同梱物に載せる案内文を決める |

ポイントは順番です。多くの事業者はステップ3の「自治体に聞く」から入ろうとしますが、自社の取り分(ステップ1・2)が分からないまま聞いても、提示された条件が飲めるかどうかを判断できません。逆にステップ1と2さえ終われば、値上げの相談も、寄付額の改定提案も、同じ1枚の表の上で進められます。所要時間の目安は、ステップ1が取引自治体の数にもよりますが1〜2時間、ステップ2が30分程度です。
① 何が起きたか|総務省が公表した2本の調査と、5月の引き下げ要請
まず、報道の元になっている国の動きを、確認できた一次情報だけで押さえます。
7月31日公表: 2025年度の寄付額は1兆3,314億円で過去最高
総務省は2026年7月31日、ふるさと納税に関する現況調査結果の概要(令和8年度実施)を公表しました。2025年度(令和7年度)の全国の受入額は約1兆3,314億円、受入件数は約5,963万件です。前年度の1兆2,728億円から約4.6%増え、過去最高を更新しました。あわせて、2026年度課税における住民税の控除額は約9,524億円、控除適用者数は約1,151万人と公表されています。
この調査には、自治体が寄付を集めるためにかけた「募集に要した費用」も含まれます。日本経済新聞の報道によると、2025年度の寄付額に占める経費の割合は47.9%で、前年度から1.5ポイント上昇しました。後述するとおり、この割合には寄付額の5割以下という法令上の上限があります。上限まで2.1ポイントしか残っていない、というのが今の全国平均の姿です。
5月12日公表: 仲介サイトへの支払いは1,379億円(2024年度)
もう1本が、手数料に的を絞った調査です。総務省は2026年5月12日、ふるさと納税のポータルサイト運営事業者への支払額等に係る調査結果の公表を発表しました。共同通信および日本経済新聞の報道によれば、2024年度に全国の自治体が仲介サイト運営事業者に支払った額は総額1,379億円です。
内訳と関連する数字は次のとおりです。
- 仲介サイト経由の寄付額は1兆2,025億円で、寄付全体の94.5%
- 手数料はその11.5%に相当
- 内訳は、返礼品情報の掲載などの事務費が1,166億円、クレジットカード決済などの決済費が161億円、インターネット広告などの広報費が52億円
- 総額の90.6%にあたる1,249億円が、取扱額の大きい上位4社への支払い
そして2025年度分については、寄付額の増加に伴って手数料も1,490億円規模に達したと報じられています。総務省は2026年5月22日、仲介サイト運営事業者に対して事務手数料の引き下げを要請し、8月末までに対応方針を書面で回答するよう求めました。2026年9月6日に確認した時点では、各社の回答を取りまとめた結果は総務省の報道発表として公表されていません。
事業者側の動きも一部は公表されています。ふるさとチョイスを運営する株式会社トラストバンクは2026年5月28日、「チョイス3」(手数料率3%)の導入状況及び総務省の要請を踏まえた今後の取組みについてを発表しました。「チョイス3」は、自治体自身が行う広報・マーケティング施策(自治体のWebサイト、自治体からのメール、イベント等)の導線を経由して発生した寄付について、通常10%の手数料率を3%とする仕組みです。2026年4月末時点で利用登録済みが736団体(全契約自治体の約43%)、実際に利用実績があるのが220団体と公表されています。
決まっていること/まだ決まっていないこと
ここが今回いちばん大事な線引きです。
すでに確定しているのは、①2025年10月1日から仲介サイトのポイント付与を通じた寄付募集が禁止されたこと、②返礼割合3割以下・募集経費5割以下という指定基準が引き続き適用されること、③総務省が2026年5月に手数料引き下げを要請したこと、の3点です。
一方、①各社が実際にどの水準まで手数料率を下げるのか、②その改定がいつから適用されるのか、③それを受けて自治体が返礼品の寄付額や調達費をどう見直すのか、は2026年9月6日時点で公表されていません。現時点で公表されているのはここまでです。「来年から手数料が◯%になる」という具体的な数字を見かけたら、それが公表済みの告示・各社のリリースに基づくものかを必ず確認してください。

② 和歌山の返礼品事業者への影響|誰の・どの取引条件に効くのか
ふるさと納税の指定基準は、ふるさと納税に係る指定制度について(平成31年総務省告示第179号)で定められています。柱は、募集を適正に行うこと(募集適正基準)、返礼品の返礼割合を3割以下とすること、返礼品を地場産品とすること、の3つです。募集に要する費用は、ワンストップ特例の事務費や寄付金受領証の発行費も含めて寄付額の5割以下とされています。
この構造を、和歌山の主な返礼品分野に当てはめると次のようになります。
| 分野 | 手数料問題が効くところ | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 梅・柑橘(みなべ・田辺・有田周辺) | 単価が低く送料比率が高いため、経費の詰め直しが調達費に向かいやすい | 1件あたりの送料実額と、寄付額に占める送料の割合 |
| 水産(那智勝浦・串本・すさみ) | 冷凍・冷蔵の送料と箱代が重く、繁忙期の在庫拘束が長い | クール便の実額と、キャンセル・欠品時の負担者 |
| 加工食品・菓子・調味料 | 競合品目が多く、寄付額の改定圧力が最初に来やすい | 同じ寄付額帯に自治体内で何品あるか |
| 宿泊・体験クーポン(白浜・本宮) | 有効期限と精算タイミングが資金繰りに直結する | 換金までの日数と、未使用分の扱い |

「いつから効くか」は、制度改正の日ではありません。効いてくるのは、自治体との年度契約の更新時期と、寄付額の改定タイミングです。多くの自治体は年度単位で返礼品の登録内容を見直すため、秋から冬にかけて事業者への打診が動きます。今年はそこに手数料の引き下げ交渉が重なっているため、話の前提が例年と違う可能性があります。
和歌山の状況も見ておきましょう。ふるさと納税の寄付額を自治体別に集計しているLocal Opendata「和歌山県 ふるさと納税金額ランキング」(総務省が2026年7月31日に公表したデータに基づく集計)によると、2025年度の県内上位は有田市33.52億円、和歌山市28.44億円、湯浅町27.31億円です。注目したいのは推移で、同サイトの有田市のふるさと納税寄付金額の推移では、2023年度42.85億円、2024年度42.26億円、2025年度33.52億円と、直近1年で約2割減っています。
全国の寄付額が4.6%増えて過去最高を更新するなかで、県内トップの自治体の受入額は減っている。この差は、返礼品事業者にとって他人事ではありません。自治体の受入額が減れば、募集経費の総額も減り、1品あたりの条件を見直す動機が強まるからです。地場産品の売り先としてのふるさと納税を、単一のチャネルとして扱い続けるリスクはここにあります。品目別の売り方は和歌山の食品ECで売上を伸ばす7ステップ|梅・みかん通販の実務ガイド【2026年8月】でも整理しています。
返礼品事業者が確認すべき3つの数字
制度全体の議論を追う必要はありません。自社の判断に効く数字は3つだけです。

数字1: 仲介手数料11.5%|自治体の手取りを決める数字
2024年度に自治体が仲介サイトに支払った手数料は、仲介経由の寄付額の11.5%でした。これは自治体のコストであって、あなたが直接払うものではありません。ただし、この11.5%が下がれば自治体の募集経費に余裕が生まれ、上がれば余裕が消えます。手数料は、あなたの卸値の交渉余地を決める上流の変数だと考えてください。
数字2: 経費率47.9%|上限まであと2.1ポイント
2025年度の全国平均の経費率は47.9%で、法令上の上限は50%です。仮に返礼品の調達費が上限の3割、仲介手数料が11.5%だとすると合計41.5%。残る6.4ポイントに、送料、広報費、ワンストップ特例や受領証発行の事務費などが入ります。この試算はあくまで全国平均を機械的に当てはめたものですが、余白がほとんどないという感覚は共有しておく価値があります。余白がないとき、自治体が触りやすいのは金額の大きい項目、つまり返礼品の調達費と送料です。
数字3: 返礼割合3割|あなたの卸値の天井
返礼品の調達に要する費用は、寄付額の3割以下と定められています。裏を返せば、寄付額1万円の返礼品なら、事業者への支払いは最大3,000円です。ここが天井である以上、原価が上がったときの選択肢は「寄付額を上げてもらう」か「内容量を減らす」かの二択になります。値上げ交渉を「卸値を上げてください」ではなく「寄付額を1万円から1万2,000円に改定してください」という形で持ち込むのが実務的です。なお、送料は3割基準ではなく5割基準の側で管理されるのが原則ですが、契約上どちらが負担するかは自治体ごとに異なります。自社の契約書で必ず確認してください。
③ 今週やること|5ステップ(コピペ文例8本)
ここからは手を動かす部分です。各ステップの文例は、ChatGPTなどの対話型AIにそのまま貼り付けて使えます。( )の中を自社の情報に書き換えてください。
ステップ1: 自治体別の取引条件を1枚の表にする
まず、契約書・注文書・請求書・入金明細を1か所に集めます。取引自治体が複数ある事業者ほど、条件が少しずつ違っていることに気づいていません。集めた情報は、次の文例で表に整形できます。
あなたはふるさと納税の返礼品供給に詳しい業務アドバイザーです。以下の材料から、自治体別の取引条件を比較する表のたたき台を作ってください。
【材料】
・取引している自治体名: (例: A町、B市)
・返礼品と寄付額: (例: 南高梅1kg/1万2,000円)
・自治体からの支払額(1件あたり): (分かる範囲で)
・送料の負担者: (自社/自治体/不明)
・箱代・同梱物の負担者:
・契約更新の時期:
出力: ①自治体 ②返礼品 ③寄付額 ④自社への支払額 ⑤送料負担 ⑥更新時期 ⑦不明点 の7列の表。分からない項目は「要確認」と書き、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
分からない欄が半分あっても構いません。「要確認」が並んだ表こそ、ステップ3で自治体に聞くべき質問リストそのものになります。
ステップ2: 寄付額に対する自社の手取り率を出す
次に、寄付額を分母にした自社の取り分を計算します。ここを感覚で捉えていると、寄付額の改定提案が作れません。
あなたは小規模事業者の原価計算を支援するアドバイザーです。以下の材料から、ふるさと納税の返礼品1件あたりの採算を計算してください。
【材料】
・寄付額: (例: 1万円)
・自治体から自社への支払額: (例: 3,000円)
・商品原価: (例: 1,400円)
・梱包資材費: (例: 180円)
・送料の自社負担分: (例: 0円/自治体負担)
・出荷作業の時間と時給換算: (例: 12分・1,500円)
出力: ①1件あたりの粗利額と粗利率 ②寄付額に対する自社の取り分の割合 ③原価が10%上がった場合の粗利 ④採算が合わなくなる分岐点。計算式も示し、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
出荷作業の人件費を必ず入れてください。繁忙期に他の販路を止めて返礼品の出荷に回している場合、その機会損失まで含めて初めて、条件を受けるかどうかの判断ができます。
ステップ3: 自治体の担当者に、手数料と経費の方針を聞く
聞きにくいと感じるかもしれませんが、総務省が公式に手数料の引き下げを要請している今は、話題として持ち出しやすいタイミングです。質問は3つに絞ります。
あなたは自治体との取引がある事業者の文書作成を支援するライターです。以下の材料から、ふるさと納税の担当課に送る問い合わせメールを作ってください。
【材料】
・自社名と返礼品: (例: 〇〇農園・南高梅)
・取引年数:
・聞きたいこと1: 来年度の返礼品登録・寄付額の見直し方針とスケジュール
・聞きたいこと2: 総務省の手数料引き下げ要請を受けた、募集経費の方針に変更があるか
・聞きたいこと3: 自治体の自主的な広報導線(自治体サイト・メール・SNS)経由の寄付を増やす取組があるか
条件: 400字以内。要求ではなく相談の姿勢で書く。断定的な制度解釈は書かない。【材料】にない内容は追加せず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
3つ目の質問には意味があります。トラストバンクの「チョイス3」のように、自治体自身の導線から入った寄付は手数料率が下がる仕組みが実際に運用されています。自治体の広報に自社の商品情報や写真を提供することは、遠回りに見えて、自治体の経費に余白を作る動きになります。
ステップ4: 送料・資材費を含めて採算線を引き直す
原価の上昇分を吸収できるかどうかは、送料と資材費で決まります。実額を調べたうえで、改定の提案材料を作ります。
あなたは食品の通販物流に詳しいアドバイザーです。以下の材料から、返礼品1件あたりの物流コストを整理し、改善余地を挙げてください。
【材料】
・商品と重量・サイズ: (例: 南高梅1kg・60サイズ)
・温度帯: (常温/冷蔵/冷凍)
・現在の送料と契約形態: (例: 1件950円・個別契約)
・年間出荷件数:
・繁忙期: (例: 6〜7月)
出力: ①1件あたりの物流コストの内訳 ②サイズ・温度帯を見直した場合の削減余地 ③まとめ出荷や資材変更で下げられる箇所 ④実行順。削減額は幅で示し、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
あなたは自治体向けの提案文書を書くのが得意なライターです。以下の材料から、返礼品の寄付額改定を相談する提案メモを作ってください。
【材料】
・返礼品名と現在の寄付額:
・原価が上がった要因と幅: (例: 資材費・燃料費で1件あたり約200円)
・現在の内容量と、維持したい品質:
・希望する改定案: (例: 寄付額を1万円→1万2,000円、内容量は据え置き)
・代替案: (例: 寄付額据え置きで内容量を1割減)
条件: A4半ページ。値上げ要求ではなく「寄付者の満足度を落とさずに継続するための選択肢」として2案を並べる。返礼割合の基準に関する断定的な解釈は書かない。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
改定案と代替案を必ずセットで出してください。自治体側にも3割の上限があるため、一案だけを持ち込むと「では終了で」となりかねません。
ステップ5: 自社ECの比率を上げ、入口を二本立てにする
ふるさと納税をやめる必要はありません。出会いはふるさと納税、2回目からは自社の直販に来てもらう。これが返礼品事業者の現実解です。返礼品には自治体が定めた同梱物のルールがあるため、まず何を入れてよいかを確認したうえで、案内文を用意します。
あなたは産地直送の通販に詳しいコピーライターです。以下の材料から、返礼品に同梱するお礼カードの文面を150字前後で作ってください。
【材料】
・生産者名と産地: (例: 和歌山県みなべ町の〇〇農園)
・商品と作り手のこだわり: (例: 完熟南高梅を手摘み)
・次に買える場所: (自社サイト/電話/LINEのうち、実際にあるものだけ)
・次回の旬と時期: (例: 6月中旬から)
条件: 割引や特典は、実際に用意しているものだけを書く。ふるさと納税制度や自治体を批判する表現は使わない。【材料】にない内容は追加せず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
あなたは小規模事業者のリピーター施策を支援するアドバイザーです。以下の材料から、ふるさと納税の寄付者に季節の便りを送る年間カレンダーを作ってください。
【材料】
・扱う商品と旬の時期: (例: 梅6〜7月、梅干し通年)
・繁忙期と、連絡に手が回らない時期:
・使える連絡手段: (同梱カード/公式LINE/メール/はがきのうち、あるものだけ)
出力: ①月 ②送る内容 ③使う手段 ④準備にかかる時間の目安 の4列の表。年12回を上限にし、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
同梱物のルールは自治体ごとに異なります。自治体の広報物と誤解される表現や、寄付先の自治体を経由しない購入への直接的な誘導が制限される場合があるため、文面は必ず事前に担当課に確認してください。受け皿づくりの実務は、梅農家のネット販売|農家直送の通販を始める7ステップと許可の実務【2026年8月】と田辺市のネットショップ制作|売り方3タイプの選び方と費用の実額【2026年8月】で解説しています。
最後に、契約更新の面談で慌てないための想定問答を用意しておきます。
あなたは中小事業者の商談準備を支援するアドバイザーです。以下の材料から、ふるさと納税の契約更新面談の想定問答を作ってください。
【材料】
・自社の返礼品と現在の条件:
・こちらの希望: (例: 寄付額の改定、送料負担の見直し)
・想定される相手の要望: (例: 寄付額据え置き、内容量の据え置き)
・譲れない線: (例: 1件あたり粗利〇〇円)
出力: ①想定質問 ②回答例 ③その場で答えず持ち帰るべき質問 の3列で8問。感情的な表現は使わず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
※そのままコピーして使えます
④ よくある誤解と注意点
報道をきっかけに動くとき、次の4つの勘違いが起きがちです。
誤解1: 「手数料が下がれば、うちの取り分も自動的に増える」
❌ よくある間違い: 仲介手数料の引き下げ分が、そのまま返礼品事業者への支払いに回ってくると期待する。
⭕ 正しいアプローチ: 浮いた分の使い道は自治体が決めると理解する。返礼品の調達費に回るか、自治体の一般財源に残るか、寄付額の据え置きに使われるかは、自治体ごとの判断です。
なぜ重要か: 期待だけで待つと、交渉の場に何も材料を持たずに臨むことになるからです。増額を求めるなら、原価の上昇幅を数字で示す側の準備が要ります。
誤解2: 「ポイントが禁止されたから、寄付は減る一方だ」
❌ よくある間違い: 2025年10月のポイント付与禁止で市場が縮むと考え、返礼品の登録を減らす。
⭕ 正しいアプローチ: 公表された数字を見る。2025年度の全国の受入額は1兆3,314億円で、前年度から約4.6%増え過去最高を更新しています。
なぜ重要か: 全国が増えていても、和歌山県内トップの有田市のように前年度から約2割減った自治体もあるからです。市場全体の増減ではなく、自分が取引している自治体の受入額の推移を見るべきだ、というのがこの数字の本当の教訓です。
誤解3: 「寄付額を上げれば、内容量を維持したまま原価上昇を吸収できる」
❌ よくある間違い: 寄付額の改定さえ通れば解決すると考え、他の条件を確認しない。
⭕ 正しいアプローチ: 寄付額を上げると、同じ自治体内の同価格帯での競合関係や、寄付者の選びやすさも変わることを織り込む。改定案と、内容量を調整する代替案の2つを用意してください。
なぜ重要か: 寄付額の帯は寄付者の控除上限額と結びついており、1万円と1万2,000円では選ばれ方が変わるからです。金額だけを動かす提案は、通っても売れなくなることがあります。
誤解4: 「ふるさと納税で売れているから、自社ECは要らない」
❌ よくある間違い: 出荷が回っているうちは、自社の販売チャネルづくりを後回しにする。
⭕ 正しいアプローチ: 返礼品として届いた相手は「あなたの商品を選んで受け取った人」だと捉え、次に買える場所を必ず伝える。
なぜ重要か: ふるさと納税は制度に依存したチャネルであり、条件の変更が事業者の意思と関係なく起きるからです。手数料の話も、経費率の話も、すべて自治体と国の側で決まります。白浜への移住準備で地域の事業者と話す中でも、販路が1本しかない状態の心細さは、業種を問わず共通した話題として出てきます。販路分散の考え方は、宿泊業のOTA手数料一覧と実質負担の計算式|旅館・民宿の直販比率の上げ方【2026年8月】と同じ構造です。
ここまでの内容は、公表されている情報と無料の道具だけで進められます。それでも「表を作る時間がない」「自社の通販の受け皿がない」という事業者が多いのも実情です。私たちは白浜(和歌山)への移住準備を進めながら、地域の中小事業者のデジタル面の支援に取り組んでいます。無料ヒアリングは最大60分、契約前提の営業はいたしません。提案が不要なら30分の情報交換のみでも歓迎です。
契約更新に強い返礼品事業者・弱い事業者の違い(チェックリスト)
現在地の確認に使ってください。当てはまるものにチェックを入れます。
- □ 取引している自治体ごとの寄付額と自社への支払額が、表になっている
- □ 返礼品1件あたりの粗利額を、出荷作業の人件費まで含めて言える
- □ 送料・箱代をどちらが負担しているか、契約書で確認済み
- □ 直近3年の、取引自治体の受入額の推移を知っている
- □ 契約更新の時期と、寄付額改定の相談窓口が分かっている
- □ 原価上昇の要因と幅を、数字で説明できる資料がある
- □ 自治体の自主的な広報導線(サイト・メール・SNS)に商品情報を提供している
- □ 返礼品を受け取った人が、次に自社から買える場所を案内できている

特に見落とされやすいのが、下から2番目の「自治体の広報導線への協力」です。チェックが少なくても心配はいりません。この記事の5ステップは、上から順に進めればチェックが1つずつ埋まる構成にしています。
数字で見る|1,490億円はどこへ行き、誰が負担しているのか
「仲介サイトが儲けているだけの話では」と感じるかもしれません。公表されている数字を並べると、もう少し立体的な姿が見えてきます。
第一に、手数料の中身です。2024年度の1,379億円のうち、返礼品情報の掲載などの事務費が1,166億円、決済費が161億円、広報費が52億円でした。金額の大半は、寄付の申込みを処理する事務の対価として動いています。決済費のように、削れば別の負担が自治体側に戻ってくる性質のものも含まれます。
第二に、集中度です。総額の90.6%にあたる1,249億円が上位4社への支払いでした。総務省が個別事業者に引き下げを要請した背景には、この集中度があります。同時に、自治体の側から見れば、寄付を集める導線が実質的に少数のサイトに依存している状態でもあります。
第三に、自治体の収支です。会計検査院は2026年6月12日、会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告「地方財政計画の事後検証等の状況について」を公表し、ふるさと納税の受入額が地方財政計画にどう反映されているかを検査した結果を報告しました。受入額が年々増加していることが、地方財政を取り巻く状況の変化として挙げられています。
つまり、1,490億円は「誰かが不当に抜いている額」というより、寄付を集めるという仕事に全国で支払われているコストの総額です。事業者にとって重要なのは、その総額の増減ではなく、自分の取引条件が上限50%という枠のどこに置かれているかを知ることです。ここは費用をかけずに確かめられます。
よくある質問
Q. ふるさと納税の仲介手数料は、誰が払っているのですか?
自治体が仲介サイト運営事業者に支払っています。2024年度は全国で1,379億円、仲介サイト経由の寄付額の11.5%にあたります。返礼品事業者が直接支払うものではありませんが、自治体の募集経費に含まれるため、返礼品の調達費と同じ「寄付額の5割以下」という枠を分け合う関係にあります。
Q. 手数料が下がると、返礼品事業者の卸値は上がりますか?
自動的には上がりません。浮いた分をどこに配分するかは自治体の判断で、2026年9月6日時点で各社の改定率も適用時期も公表されていません。増額を求める場合は、原価の上昇幅を数字で示した資料を用意して、契約更新の相談に持ち込むのが現実的です。
Q. 2025年10月のポイント付与禁止は、返礼品事業者に何を変えましたか?
寄付者がサイトを選ぶ理由からポイント還元率が外れたため、返礼品そのものと自治体の情報発信で選ばれる比重が上がりました。制度上の根拠は、総務省が2024年6月28日に公表したふるさと納税の指定基準の見直し等で、2025年10月1日から適用されています。商品写真や産地情報の提供が、以前より効きやすい環境になったと考えてください。
Q. 返礼品の調達費が寄付額の3割というのは、送料込みですか?
3割の基準は「返礼品等の調達に要する費用」に対するもので、送付に要する費用は、寄付額の5割以下という募集適正基準の側で管理されるのが原則です。ただし、契約上どちらが送料を負担するかは自治体ごとに異なります。自社の契約書と、取引先の自治体の担当課に必ず確認してください。
Q. 自治体から寄付額の見直しを打診されました。どう考えればいいですか?
まず、寄付額を上げるのか、内容量を調整するのかで論点が分かれます。ステップ2の文例で1件あたりの粗利を出し、採算が合わなくなる分岐点を先に決めてから面談に臨んでください。その場で即答せず、持ち帰って計算する時間をもらうのが安全です。
Q. 出品するポータルサイトは、増やしたほうが得ですか?
サイトを増やす判断は自治体側が行うもので、事業者が単独で決められる項目ではありません。事業者にできるのは、掲載数を増やすことより、掲載されている1ページの写真・産地情報・保存方法の説明を厚くすることです。写真や説明文の作り方は、和歌山の店舗のインスタ集客|観光客と地元客に届く7ステップ【2026年8月】の考え方がそのまま使えます。
Q. ふるさと納税をやめて、自社ECだけにするのは危険ですか?
急にやめるのはおすすめしません。ふるさと納税は、県外の新規顧客と出会う場としては依然として強力だからです。「出会いはふるさと納税、2回目からは自社の直販」に切り替えて、依存度を段階的に下げるのが現実的です。
Q. 今後の制度改正の内容は、いつ分かりますか?
2026年9月6日時点で、総務省の報道発表に手数料引き下げ要請の回答取りまとめや、新たな告示改正の公表は掲載されていません。現時点で公表されているのはここまでです。動きを追うなら、総務省ふるさと納税ポータルサイトのトピックス一覧を月1回確認するのが確実です。
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること: 取引している自治体の契約書と直近の入金明細を1か所に集め、ステップ1の文例で条件の表を作る
- 今週中にやること: ステップ2の文例で1件あたりの粗利と採算の分岐点を出し、ステップ3のメールで自治体に来年度の方針を確認する
- 今月中にやること: 同梱物のルールを担当課に確認したうえで、返礼品に入れるお礼カードと次に買える場所の案内を用意する
5つすべてを一度にやる必要はありません。表が1枚できるだけで、寄付額の相談も、原価上昇への対応も、自社ECへの投資判断も、同じ土台の上で進められるようになります。
次回予告: 返礼品で出会った人を自社の顧客に変える通販の受け皿づくりは、和歌山の食品ECで売上を伸ばす7ステップ|梅・みかん通販の実務ガイド【2026年8月】で詳しく扱っています。
参考・出典
- 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果の概要」(令和8年7月31日公表/2025年度の受入額約1兆3,314億円・受入件数約5,963万件、2026年度課税の控除額約9,524億円・控除適用者数約1,151万人) 報道資料 (参照日: 2026-09-06)
- 総務省「ふるさと納税のポータルサイト運営事業者への支払額等に係る調査結果の公表」(令和8年5月12日公表/2024年度の支払額の調査) 報道資料 (参照日: 2026-09-06)
- 総務省「ふるさと納税に係る指定制度について」(平成31年総務省告示第179号/募集適正基準、返礼割合3割以下、地場産品基準、募集経費は寄付額の5割以下) ふるさと納税ポータルサイト内トピックス (参照日: 2026-09-06)
- 総務省「ふるさと納税の指定基準の見直し等」(令和6年6月28日公表/寄付に伴いポイント等の付与を行う者を通じた募集の禁止、2025年10月1日から適用) 報道資料 (参照日: 2026-09-06)
- 会計検査院「会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告『地方財政計画の事後検証等の状況について』」(令和8年6月12日公表) 検査結果ページ (参照日: 2026-09-06)
- 株式会社トラストバンク「『チョイス3』(手数料率3%)の導入状況及び総務省の要請を踏まえた今後の取組みについて」(2026年5月28日発表/通常10%に対し自治体自身の導線経由は3%、2026年4月末時点で利用登録736団体・約43%、利用実績220団体) ニュースリリース (参照日: 2026-09-06)
- 日本経済新聞「ふるさと納税、25年度は1.3兆円で最高 手数料に1割超が流出」(2026年7月31日/経費率47.9%・前年度比1.5ポイント上昇、仲介手数料1,490億円) 記事 (参照日: 2026-09-06)
- ITmedia NEWS「総務省、ふるさと納税で仲介サイト事業者に手数料引き下げを要請 8月末までに回答求める」(2026年5月25日/要請は5月22日、対象は主要4社等、8月末までに書面回答) 記事 (参照日: 2026-09-06)
- 共同通信「ふるさと納税仲介に1379億円 24年度手数料、引き下げ要請へ」(2026年5月/事務費1,166億円・決済費161億円・広報費52億円、上位4社に1,249億円=90.6%、仲介経由寄付額1兆2,025億円=94.5%) 記事 (参照日: 2026-09-06)
- Local Opendata「和歌山県 ふるさと納税金額ランキング」「有田市のふるさと納税寄付金額の推移」(総務省が2026年7月31日に公表したデータに基づく集計/2025年度の県内上位は有田市33.52億円・和歌山市28.44億円・湯浅町27.31億円、有田市は2023年度42.85億円→2024年度42.26億円→2025年度33.52億円) 和歌山県ランキング / 有田市の推移 (参照日: 2026-09-06)
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※本記事は2026年9月6日時点で公表されている情報に基づく解説であり、税務・法務の判断や、個別の契約条件の適否を判断するものではありません。返礼品の登録条件・寄付額・同梱物の扱いは自治体ごとに異なります。個別の取扱いは取引先の自治体の担当課にご確認ください。実績は代表およびメンバー個人としての活動を含みます。