株式会社Tip ロゴ 株式会社TipTIP INC.
和歌山DX総合研究所和歌山の企業に、実践できるDXを。記事一覧
観光地の集客 公開:

白浜の土地活用で宿泊施設を始める方法|7ステップと採算チェック【2026年9月】

白浜の土地活用で宿泊施設を始める方法|7ステップと採算チェック【2026年9月】

結論: 白浜で土地や空き家を宿泊施設に変えるとき、最初に決めるのは間取りでも内装でもありません。「その場所に宿を建てられるか(用途地域・接道・農地かどうか)」「どの制度で営業するか(旅館業の許可か、民泊の届出か)」「稼働率が何%なら採算が合うか」の3点です。この順番を飛ばして設計や見積りに進むと、費用の多くが手戻りに消えます。

この記事の要点 対象読者: 和歌山県白浜町およびその周辺で、使っていない土地・空き家・元宿泊施設を持っている方、または相続や購入でこれから持つ予定があり、宿泊施設としての活用を検討している方 読了後にできること: 自分の土地・建物が宿泊事業に向くかどうかを7ステップの順番で自力で切り分け、役場・保健所・消防に相談へ行く前の質問リストと、採算ラインの試算まで作れる状態になる

「親から継いだ家と土地、このままにしておくのももったいなくて——。」

白浜への移住準備で地域の事業者の方と話していると、使わなくなった建物や土地の話題は、かなりの頻度で出てきます。海が近い、駅から車で10分、部屋数もある。観光客はたしかに来ている。それなら宿にすればいいのではないか、と考えるのは自然なことです。

ところが調べ始めると、途端に話が止まります。旅館業法、住宅宿泊事業法、用途地域、消防設備、農地転用。どれも聞いたことはあるけれど、自分の土地にどれが関係するのかが分からない。そして「まず建築士さんに相談しよう」と見積りを取り、あとから用途地域で宿泊施設が建てられない土地だと判明する——という順番の事故が起きます。

うまくいかない原因は、あなたの土地の価値が低いからではありません。確認の順番が逆になっていることにあります。宿泊施設の事業化は、お金をかける前に潰せる論点が驚くほど多い分野です。役場と保健所と消防署に電話をかけるだけで、進むべきか撤退すべきかの8割は判断できます。

この記事では、観光地の宿や店舗のSNS運用・集客支援に取り組む立場から、白浜の遊休地・空き家を宿泊施設にするための7ステップと、そのままコピペで使える8本のプロンプト、そして「事業化できる土地」と「つまずく土地」を分ける8項目のチェックリストを公開します。手元に土地の登記事項証明書か、固定資産税の納税通知書を1枚用意しながら読み進めてください。

目次
  1. まず結論:白浜の土地・空き家を宿泊施設にする7ステップ(即効テンプレ)
  2. 「宿泊施設としての土地活用」とは|売却・賃貸との違いと3つの事業形態
  3. 遊休地・空き家を宿泊施設にする7ステップ(完全版)
    1. ステップ1: 土地・建物の「素性」を1枚に棚卸しする
    2. ステップ2: 旅館業の許可か、民泊の届出かを決める
    3. ステップ3: 役場・保健所・消防の3か所に事前相談する
    4. ステップ4: 需要と価格を数字で置く
    5. ステップ5: 初期費用と回収年数を試算する
    6. ステップ6: 自分で運営するか、任せるかを決める
    7. ステップ7: 小さく開けて、集客の受け皿を先に作る
  4. 土地・物件タイプ別の現実的な出口
  5. 【要注意】宿泊事業化でつまずく4つのパターン
    1. 失敗1: 用途地域と接道を確認せずに設計を進める
    2. 失敗2: 「200㎡以下だから確認申請不要」を「何もしなくていい」と誤解する
    3. 失敗3: 稼働率を「埋まる前提」で計算する
    4. 失敗4: 許可・届出がゴールになり、集客の受け皿がないまま開業する
  6. 宿泊事業化できる土地・つまずく土地の違い(チェックリスト)
  7. 白浜は「泊まる人は多いが、稼働率は高くない」|数字で見る勝ち筋
  8. よくある質問
    1. Q. 白浜の土地活用として、宿泊施設は現実的な選択肢ですか?
    2. Q. 南紀白浜の空き家を宿として活用したいのですが、何から確認すればいいですか?
    3. Q. 遊休地の宿泊事業化には、いくらぐらいかかりますか?
    4. Q. 更地と空き家では、どちらが宿泊施設に向いていますか?
    5. Q. 旅館業(簡易宿所)と民泊(住宅宿泊事業)は、どちらを選ぶべきですか?
    6. Q. 農地や山林でも宿泊施設は建てられますか?
    7. Q. 自分では運営できません。土地や建物だけ活かす方法はありますか?
    8. Q. 許可や届出には、どのくらいの期間がかかりますか?
  9. まとめ:今日から始める3つのアクション
  10. 参考・出典

まず結論:白浜の土地・空き家を宿泊施設にする7ステップ(即効テンプレ)

最初に全体像です。上から順に進めれば、お金をかける前に「進めるかどうか」が判断できる並びになっています。

ステップ やること 今日できる最初の一歩
1. 素性の棚卸し 土地・建物の基本情報を1枚にまとめる 登記事項証明書と納税通知書を探す
2. 制度選び 旅館業の許可か民泊の届出かを決める 年間何日営業したいかを決める
3. 事前相談 役場・保健所・消防に電話で確認する 3か所の担当窓口の番号を控える
4. 需要と価格 稼働率と単価を数字で置く 近隣の同規模の宿の平日料金を調べる
5. 初期費用と回収 改修費・設備費と回収年数を試算する 建物の延べ床面積を測る
6. 運営体制 自分で運営するか任せるかを決める 清掃と鍵の受け渡しを誰がやるか書く
7. 小さく開業 1棟・1室から開けて受け皿を作る 宿の名前と予約の窓口を決める
白浜の土地・空き家を宿泊施設にする7ステップのフロー図

ポイントは、ステップ1〜3が「無料でできる撤退判断」だということです。ここまでは、図面も見積りも設計料も要りません。窓口に足を運ぶ交通費と、書類を取り寄せる数百円だけで終わります。逆に、ステップ1〜3を飛ばして設計や改修の見積りに進むと、あとで制度上できないと分かったときに、支払った費用がそのまま損失になります。

所要期間の目安は、ステップ1〜3が2〜4週間、ステップ4〜5が1か月ほどです。事前相談の回答は「窓口で口頭」になることが多いので、聞いた内容はその場でメモに残し、担当課名と日付を書き添えておいてください。あとで設計者や工事業者に説明するときの共通資料になります。

「宿泊施設としての土地活用」とは|売却・賃貸との違いと3つの事業形態

本記事で言う「宿泊事業化」とは、土地や建物を人に貸して家賃を得ることではなく、あなたが宿泊料を受け取る事業者になることを指します。この違いが、他の土地活用と決定的に違う点を生みます。

遊休地・空き家の代表的な使い道は、次の3つに整理できます。

  • 売却: 一度きりの現金化。手間は最も少ないが、その土地からの収入は以後ゼロになる
  • 賃貸・駐車場: 収入は安定するが上限も低い。許認可はほぼ不要で、運営の手間も限定的
  • 宿泊事業: 収益の上限は最も高いが、許認可・設備投資・日々の運営がすべて必要になる
土地活用の選択肢を売却・賃貸・宿泊事業で比較した図解

そのうえで、宿泊事業には次の3つの形態があります。どれを選ぶかで、必要な手続きも初期費用もまったく変わります。

  1. 旅館業法の簡易宿所営業(許可): 通年で営業できる。客室の延床面積など、政令が定める構造設備の基準を満たす必要がある
  2. 住宅宿泊事業法の届出(いわゆる民泊): 手続きは比較的軽いが、人を宿泊させる日数が年間180日を超えられない
  3. 自分では運営しない: 土地・建物を宿泊事業者に貸す、または運営を委託する。宿泊料ではなく賃料や委託後の分配を受け取る

このうち1と2の分かれ道が、事業計画のいちばん上流にあります。厚生労働省の旅館業法施行令では、簡易宿所営業の客室の延床面積について「三十三平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること」と定められています。一方、住宅宿泊事業については、観光庁の民泊制度ポータルサイト「minpaku」が「人を宿泊させる日数が180日を超えないもの」と説明しています。

つまり、通年で回したいなら旅館業の許可、まずは小さく試すなら民泊の届出という整理になります。両制度の要件の違いは、簡易宿所と民泊の違い|許可要件の比較表と選び方チェックリスト【2026年9月】で比較表にまとめています。

遊休地・空き家を宿泊施設にする7ステップ(完全版)

ここからが本体です。各ステップのプロンプトは、ChatGPTなどの対話型AIに貼り付けて使います。AIは「調べる係」ではなく「整理する係」として使ってください。制度の当否を最終的に決めるのは、あくまで役場・保健所・消防署の回答です。

ステップ1: 土地・建物の「素性」を1枚に棚卸しする

最初にやるのは、物件を見に行くことでも不動産会社に相談することでもなく、手元の書類から事実を書き出すことです。必要な情報は6つです。所在地、地目、面積、建物の有無と延べ床面積、接している道路の幅、そして用途地域。地目は登記事項証明書、面積と建物は納税通知書、用途地域は町の都市計画の窓口で分かります。白浜町の都市計画については、白浜町ホームページの都市計画のページに決定・変更の告示がまとめられています。

あなたは不動産の活用検討を整理するアドバイザーです。以下の材料から、私の土地・建物の現状を1枚にまとめてください。

【材料】
・所在地: (例: 和歌山県西牟婁郡白浜町〇〇)
・登記上の地目: (例: 宅地/田/山林)
・土地の面積: (例: 320㎡)
・建物の有無と延べ床面積: (例: 木造2階建て・約140㎡/建物なし)
・接道: (例: 幅4mの町道に約8m接する/不明)
・用途地域: (例: 第一種住居地域/不明/都市計画区域外)

出力: ①事実の一覧表 ②宿泊施設として活用する際に確認が必要な項目を重要な順に5つ ③「不明」の項目をどの窓口で確認すべきか。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

「不明」が半分あっても構いません。この段階の目的は、何が分かっていないかを可視化することです。不明の項目がそのまま、ステップ3で窓口に聞く質問リストになります。

ステップ2: 旅館業の許可か、民泊の届出かを決める

制度は物件の条件で決まるのではなく、あなたが年間何日営業したいかで決まります。週末とハイシーズンだけ、年間100日程度でよいなら住宅宿泊事業の届出が選択肢になります(自治体の条例で区域や期間の制限がある場合もあるため、最終確認は窓口で行ってください)。通年で回し、それを主たる収入にしたいなら旅館業の許可が必要です。ここを曖昧にしたまま設計に入ると、あとから設備をやり直すことになります。

宿泊事業の制度を旅館業許可と民泊届出の2分岐で示した図解
あなたは宿泊事業の制度整理に詳しいアドバイザーです。以下の材料から、旅館業法の簡易宿所営業(許可)と住宅宿泊事業法(届出)のどちらが私の計画に近いかを整理してください。

【材料】
・営業したい期間: (例: 通年/夏と連休だけ/年100日程度)
・想定する定員: (例: 1棟6名)
・宿泊料以外の収入源の有無: (例: 本業あり/これ一本)
・自分が現地に住んでいるか: (例: 徒歩10分/車で2時間)
・建物の延べ床面積: (例: 約140㎡)

出力: ①それぞれの制度を選んだ場合に想定される手続きの流れ ②私の材料から見て相性が良いほうと、その理由 ③最終確認のために保健所へ聞くべき質問を5つ。法令の最終判断は行政の回答によることを明記し、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

注意点は、AIの回答を根拠にしないことです。制度の当てはめは自治体ごとの条例で変わります。和歌山県で旅館業の許可を取る場合の流れは、和歌山の旅館業許可の取り方|簡易宿所の7ステップと手数料【2026年9月】にまとめています。

ステップ3: 役場・保健所・消防の3か所に事前相談する

ここが最大の関門であり、同時に最も安く終わる関門です。電話と訪問だけで済みます。聞く相手と論点は次の3つに分かれます。

役場(都市計画・建築の担当課)には、用途地域と接道、そして用途変更の扱いを聞きます。保健所には、旅館業の許可要件と、その物件で許可が取れる見込みがあるかを聞きます。消防署には、宿泊施設にした場合に必要になる消防用設備を聞きます。

消防の論点は特に見落とされやすいところです。総務省消防庁のリーフレット「民泊における消防法令上の取扱い等について」によれば、一戸建て住宅で民泊を行う場合、人を宿泊させる間に家主が不在となり、かつ宿泊室の床面積の合計が50㎡を超えるときは、消防法令上の用途が「宿泊施設((5)項イ)」と判定されます。(5)項イになると、自動火災報知設備は延べ面積にかかわらず全てのものに、誘導灯や防炎物品も必要となり、消防用設備等の点検は年2回・報告は年1回が求められます。さらに、住宅宿泊事業の届出時には「消防法令適合通知書」を添付することとされています。

あなたは行政窓口への相談準備を手伝うアシスタントです。以下の材料から、役場(都市計画・建築)/保健所/消防署の3か所に事前相談するための質問リストを作ってください。

【材料】
・物件の概要: (例: 木造2階建て・延べ床140㎡・築45年・現在は空き家)
・所在地と用途地域: (例: 白浜町〇〇/第一種住居地域/不明)
・想定する形態: (例: 1棟貸し・定員6名・通年営業)
・自分の常駐可否: (例: 宿泊中は不在になる)

出力: 窓口ごとに、①こちらから伝えるべき前提 ②質問(各5問まで・その場でメモできる粒度) ③回答をもらったら控えるべき項目(担当課名・日付など)を表で出してください。制度の当否は断定せず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

この3か所を回った時点で、「進める」「条件付きで進める」「この物件では無理」のどれかがほぼ確定します。無理だと分かった場合も、それは失敗ではありません。設計料も改修費も払う前に分かったのですから、最も安く済んだ判断です。

ステップ4: 需要と価格を数字で置く

制度の見通しが立ったら、次は数字です。ここで多くの計画が甘くなります。宿泊事業の売上は「客室数 × 稼働率 × 単価 × 営業日数」でしか作れません。このうち、自分で決められるのは客室数と単価だけで、稼働率は市場が決めます。

白浜の需要は実在します。和歌山県の令和6年観光客動態調査(速報値)によれば、「旧白浜町」区分の令和6年の観光入込客総数は3,007,178人で、そのうち宿泊客数が1,717,336人泊、日帰り客数が1,289,842人でした。訪れる人の半数以上が泊まっている土地柄です。ただし観光客数は集計の区分によって数字が変わるため、白浜町の観光客数|326万人と309万人の違いと調べ方7ステップ【2026年9月】もあわせて確認してください。

あなたは宿泊事業の収支を試算するアナリストです。以下の材料から、年間売上のレンジを保守的・標準・強気の3通りで試算してください。

【材料】
・提供する客室数(または棟数)と定員: (例: 1棟・定員6名)
・想定する1泊あたりの販売価格: (例: 平日28,000円/休前日38,000円・1棟あたり)
・年間の営業日数: (例: 通年365日/年180日)
・想定稼働率: (例: 保守25%・標準35%・強気45%)
・変動費の目安: (例: 予約サイト手数料10%・清掃1回8,000円)

出力: ①3通りの年間売上と粗利の表 ②損益分岐となる稼働率 ③稼働率が想定を10ポイント下回った場合の影響。私が入力した前提以外の数字を勝手に足さず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

続けて、価格の置き方も整理しておきます。

あなたは宿泊プランの価格設計に詳しい企画者です。以下の材料から、1棟(1室)あたりの料金表の案を作ってください。

【材料】
・物件の特徴: (例: 海まで徒歩5分・駐車場2台・キッチンあり)
・想定客層: (例: 家族4名・グループ6名・ワーケーション)
・近隣の同規模の宿の平日価格: (調べた実額)
・繁忙期と閑散期: (例: 繁忙7〜8月/閑散1〜2月)

出力: 平日・休前日・繁忙期・閑散期の4区分の価格案と、その根拠を1行ずつ。値引きではなく「その時期だから得られる体験」を価格の理由にしてください。近隣価格は【材料】に書いた実額のみを使い、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

ステップ5: 初期費用と回収年数を試算する

初期費用は物件と工事内容で大きく変わるため、この記事では金額の目安を示しません。代わりに、漏れやすい費目を漏らさないことに集中してください。改修工事費、消防用設備、寝具・什器、水回りの更新、看板・サイン、写真撮影、予約システムの初期費用、そして許可・届出にかかる手数料。ここに、開業後3か月分の運転資金を足します。

あなたは小規模宿泊施設の開業計画を整理するアドバイザーです。以下の材料から、初期費用の項目一覧と回収年数の試算表を作ってください。

【材料】
・物件の状態: (例: 築45年・水回りは要更新・屋根は数年前に改修済み)
・延べ床面積と客室数: (例: 140㎡・1棟貸し)
・自分で見積りが取れている費目と金額: (分かっているものだけ)
・ステップ4で出した標準ケースの年間粗利:
・自己資金と借入の想定:

出力: ①初期費用の項目一覧(金額が未定の項目は「未定」と表示) ②分かっている金額だけで計算した単純回収年数 ③見積りを取るべき優先順位。金額が未入力の費目に推測値を入れないでください。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

注意点は、AIに「相場」を出させないことです。改修費の相場はAIの得意分野ではなく、地域と職人の稼働状況で数倍違います。金額は必ず地元の工務店から実際の見積りを取ってください。

ステップ6: 自分で運営するか、任せるかを決める

見落とされがちですが、事業の持続性を決めるのはこの選択です。宿泊施設の運営は、清掃、リネン、鍵の受け渡し、予約管理、料金調整、問い合わせ対応、トラブル対応が毎日続きます。本業がある方や、白浜から離れて住んでいる方が、片手間で回せる作業量ではありません。

選択肢は3つです。自分で運営する、運営を専門の事業者に委託する、建物ごと宿泊事業者に貸す。どれを選んでも構いませんが、決めないまま開業するのが一番危険です。

あなたは小規模宿泊施設の運営体制を設計するアドバイザーです。以下の材料から、運営体制の選択肢を比較してください。

【材料】
・物件までの距離と行ける頻度: (例: 車で90分・月2回)
・本業の有無: (例: 平日は別の仕事がある)
・自分でやれること/やりたくないこと: (例: 発信はやりたい/清掃は無理)
・想定する客室数と年間営業日数:
・ステップ4で出した標準ケースの年間粗利:

出力: ①自主運営・運営委託・一括賃貸の3案について、私の材料に照らした向き不向き ②各案で私が毎月使う時間の見積り ③選ぶ前に確認すべき点を3つ。手数料率や委託料の相場は私が入力していないため記載せず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

ステップ7: 小さく開けて、集客の受け皿を先に作る

最後は開業です。ここでの原則は「小さく開ける」こと。複数棟を計画していても、まず1棟・1室で開けて、清掃の動線、鍵の受け渡し、問い合わせの量を実測してから広げてください。

そして開業と同時に必要なのが、集客の受け皿です。予約サイトへの掲載だけで開業すると、手数料を払い続けるだけで、お客様との接点が手元に残りません。Googleビジネスプロフィールの登録、公式LINE、SNSアカウントは、建物の工事中から準備できます。

あなたは小さな宿の開業準備を支援する企画者です。以下の材料から、開業3か月前から開業月までの集客準備の実行計画を作ってください。

【材料】
・開業予定月と施設の概要: (例: 2027年4月・1棟貸し定員6名)
・立地と周辺でできること: (例: 海まで徒歩5分・温泉街まで車10分)
・自分で用意できる素材: (例: スマホ写真・工事中の様子)
・予約の窓口: (例: 予約サイト2社+電話+LINE)

出力: 月ごとのタスク表(担当が自分1人である前提・1タスク2時間以内)と、開業月に必ず終わっているべき項目のチェックリスト。用意できない素材を前提にしたタスクは書かず、事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。

※そのままコピーして使えます

開業後の集客の進め方は、民宿・ペンションの集客方法|予約を増やす7ステップとコピペ文例集【2026年8月】で7ステップにまとめています。

土地・物件タイプ別の現実的な出口

同じ「使っていない不動産」でも、タイプによって取るべき道はまったく違います。自分に近い行から着手してください。

タイプ 現実的な出口 最初に確認する先
更地(宅地) 新築で小規模な1棟貸し。用途地域次第では建てられない 役場の都市計画・建築担当
空き家(住宅) 民泊の届出、または改修して簡易宿所。最も選択肢が多い 消防署と保健所
元民宿・元旅館 既存の設備を活かした再開。以前の許可の扱いが起点 保健所(許可が現存するかの確認)
農地・山林 転用の可否が最初の関門。長期戦になりやすい 農業委員会・役場
土地・物件タイプ別に宿泊事業化の出口を整理した図解

農地の場合は、農地法にもとづく転用の手続きが前提になります。農林水産省の農地転用許可制度についてのとおり、農地を農地以外にする場合は農地法第4条、権利の移動を伴う転用は第5条の許可が必要で、農地の区分によっては原則として転用が認められません。「安く手に入る土地」がなぜ安いのかは、たいていこの区分に理由があります。

空き家をこれから探す場合は、白浜町が開設している白浜町空き家バンクサイトに、戸建てと土地の情報が掲載されています。ただし、掲載物件が宿泊施設に転用できるかどうかは別問題です。必ずステップ3の事前相談を経てから判断してください。

【要注意】宿泊事業化でつまずく4つのパターン

7ステップを踏んでも、次の4つに当てはまると計画が止まります。順に確認してください。

失敗1: 用途地域と接道を確認せずに設計を進める

❌ よくある間違い: 「海が見えるいい土地だから」と先に建築士へ依頼し、プランと概算見積りを作ってから、その用途地域では宿泊施設が建てられないと知る。

⭕ 正しいアプローチ: 設計に入る前に、役場の都市計画担当に「この地番で旅館・ホテルは建てられますか」と聞く。電話1本で済み、費用はかかりません。

なぜ重要か: 用途地域は都市計画で決まっており、あなたの努力では変えられないからです。しかも内容は更新されます。白浜町では令和6年11月27日に「白浜都市計画用途地域の変更」(白浜町告示第40号)が告示されており、白浜町ホームページの都市計画決定(変更)の告示で新旧対照図が公開されています。数年前の記憶や古い資料で判断するのは危険です。

失敗2: 「200㎡以下だから確認申請不要」を「何もしなくていい」と誤解する

❌ よくある間違い: 住宅を宿にする用途変更で、面積が小さいから建築確認は不要と聞き、そのまま改修工事を発注してしまう。

⭕ 正しいアプローチ: 確認申請の要否と、法令に適合しているかどうかを別の問題として扱う。東京都都市整備局のリーフレット「建築基準法改正(令和元年6月25日施行)により200㎡以下の用途変更の手続(確認申請)が不要になりました。」も、「確認申請を要しない場合でも、法令に適合した改修・その後の適切な維持管理が必要です」と明記し、建築士などの専門家への相談を求めています。

なぜ重要か: 確認申請が不要になったのは手続きだけで、建物が適法である責任は所有者と運営事業者に残るからです。違反した場合には損害賠償責任や刑事罰が生じる可能性がある、とも同リーフレットは注意しています。

失敗3: 稼働率を「埋まる前提」で計算する

❌ よくある間違い: 年間の売上を「客室数 × 単価 × 300日」で置き、初期投資の回収年数を短く見積もる。

⭕ 正しいアプローチ: 全国平均より低い稼働率で損益分岐を確認する。観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年・年間値の速報値)では、客室稼働率は全体で61.8%ですが、簡易宿所は29.6%、旅館は38.4%です。和歌山県に限ると全体48.5%、簡易宿所は21.5%でした。

なぜ重要か: 開業初年度の宿は、口コミも検索順位もゼロから始まるからです。平均を下回る前提で計画が成立するなら、上振れは利益になります。逆の順番で計画すると、初年度で資金が尽きます。

失敗4: 許可・届出がゴールになり、集客の受け皿がないまま開業する

❌ よくある間違い: 許可が下りた達成感で開業し、予約サイトに1社だけ掲載して「あとは待つ」状態になる。

⭕ 正しいアプローチ: 工事中からGoogleビジネスプロフィール・公式LINE・SNSを用意し、開業日には予約が受けられる状態にしておく。

なぜ重要か: 許可は営業していい資格であって、お客様が来る理由ではないからです。SNSの企画・運用の現場で実感するのは、開業告知の投稿が届きやすいのは、開業前から発信を積み上げてきたアカウントだということです。ゼロから始めた告知は、そもそも読む人がいません。

ここまでの内容は、行政窓口と手元の書類だけで進められます。それでも「調べる時間が取れない」「開業準備と発信を同時に回す手が足りない」という場合もあると思います。私たち株式会社Tip(※当コラムの運営元です)は白浜(和歌山)への移住準備を進めながら、観光地の宿や店舗のSNS運用・集客支援に取り組んでいます(宮古島・伊豆へも現地訪問で対応)。なお、土地・建物の売却や買取をご検討の場合、当社は無料の窓口として提携先の専門業者をご紹介する立場であり、当社自身が売買や仲介を行うことはありません。無料ヒアリングは最大60分、ご用意いただくのは登記事項証明書か納税通知書だけで、契約前提の営業はいたしません。提案が不要なら30分の情報交換のみでも歓迎です。

宿泊事業化できる土地・つまずく土地の違い(チェックリスト)

現在地の確認に使ってください。書類と、窓口で聞いたメモを見ながら、当てはまるものにチェックを入れます。

  • □ 登記上の地目と用途地域を、自分の口で言える
  • □ 前面道路の幅と、敷地が接している長さを測ってある
  • □ 役場の都市計画担当に、宿泊施設が建てられるかを確認した
  • □ 保健所に、その物件で許可が取れる見込みを確認した
  • □ 消防署に、必要になる消防用設備を確認した
  • □ 年間の営業日数を決め、旅館業か住宅宿泊事業かを選んである
  • □ 稼働率25〜30%でも赤字にならない価格と費用構造になっている
  • □ 清掃・鍵の受け渡し・問い合わせ対応を誰がやるか決まっている
宿泊事業化できる土地・つまずく土地の違いのチェックリスト図解

特に見落とされやすいのが、最後の運営体制です。チェックが3つ未満でも心配はいりません。この記事の7ステップは、上から順に進めればチェックが1つずつ埋まる構成になっています。

白浜は「泊まる人は多いが、稼働率は高くない」|数字で見る勝ち筋

「白浜は観光地だから、宿を作れば埋まる」と考えているなら、いったん立ち止まってください。データは、需要の存在と稼働の厳しさを同時に示しています。

まず、素材はあります。総務省の令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果によると、2023年10月1日現在の全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高になりました。都道府県別では和歌山県と徳島県が21.2%で最も高く、和歌山県の空き家数は10万5千戸です。全国平均を7.4ポイント上回る水準で、活用されていない住宅がそれだけ存在します。

次に、需要も動いています。前述の和歌山県観光客動態調査(速報値)では、「旧白浜町」区分の令和6年の宿泊客数は1,717,336人泊で、前年比103.8%でした。観光入込客総数3,007,178人のうち、半数以上が宿泊しています。県全体で見ても、観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年・年間値の速報値)における和歌山県の延べ宿泊者数は4,958,220人泊、うち外国人は896,340人泊で前年比+13.8%でした。

一方で、稼働はどうか。同じ統計で、2025年の客室稼働率は全国全体が61.8%、和歌山県は48.5%で全国45位です。施設タイプ別に見ると、全国の簡易宿所は29.6%、和歌山県の簡易宿所は21.5%でした。年間365日のうち、平均すると80日前後しか埋まっていない計算になります。

では、稼働率が低い市場でどう成立させるか。ひとつの答えが「規模を追わず、単価で立てる」という設計です。和歌山県内の実例では、伝統的な町並みが残る湯浅町湯浅で、地元のとち亀物産が築150年を超える古民家2棟を改修した宿泊施設「千山庵」を2017年9月28日に開業しています。和歌山経済新聞の報道によれば、床面積は東棟が95.33平方メートル、西棟が73.78平方メートルで、開業時の宿泊料金は平日2人利用で東棟が3万6,000円から、西棟が3万2,000円からでした。100平方メートルに満たない建物2棟という規模で、安売りではない価格帯を成立させている構成です。白浜の空き家1軒も、規模としてはこの範囲に収まります。

これらを重ねると、白浜の勝ち筋がはっきりします。素材(空き家)は豊富で、泊まる人も多い。しかし「開ければ埋まる」市場ではないということです。だからこそ、稼働率25〜30%でも成立する初期投資と価格設計にした宿と、平均稼働を前提に借入を組んだ宿とで、3年後の姿が大きく分かれます。数字の低さは、参入をやめる理由ではなく、計画の作り方を決める材料です。

よくある質問

Q. 白浜の土地活用として、宿泊施設は現実的な選択肢ですか?

現実的ですが、他の土地活用より難易度は高い選択肢です。売却や駐車場と違い、許認可・設備投資・毎日の運営がすべて必要になります。判断の順番は、まず用途地域と接道(ステップ1〜3)、次に稼働率25〜30%で成立するかどうか(ステップ4〜5)です。この2つを通過しない計画は、立地が良くても続きません。

Q. 南紀白浜の空き家を宿として活用したいのですが、何から確認すればいいですか?

登記事項証明書と納税通知書を出して、地目・面積・延べ床面積を書き出すところからです。そのうえで役場・保健所・消防署の3か所に電話をしてください。特に消防は、宿泊施設として扱われると自動火災報知設備や誘導灯が必要になり、改修費に直結します。物件の見極め方は白浜の民泊運営の始め方|届出7ステップと物件の見極めチェック【2026年9月】にチェック項目をまとめています。

Q. 遊休地の宿泊事業化には、いくらぐらいかかりますか?

物件の状態と工事範囲で数倍変わるため、記事として金額の目安を示すことはしません。信頼できるのは、地元の工務店から取った実際の見積りだけです。届出・許可にかかる費用や初期費用の内訳の考え方は、和歌山の民泊開業の手順と費用|届出7ステップと初期費用の内訳【2026年9月】で整理しています。

Q. 更地と空き家では、どちらが宿泊施設に向いていますか?

一般には空き家のほうが選択肢が多くなります。建物があれば民泊の届出という軽い入口が使えますし、既存不適格の扱いなど注意点はあるものの、新築より初期投資を抑えやすいためです。更地は自由度が高い代わりに、用途地域で宿泊施設が建てられない場合、打つ手がありません。

Q. 旅館業(簡易宿所)と民泊(住宅宿泊事業)は、どちらを選ぶべきですか?

年間の営業日数で決めてください。住宅宿泊事業は人を宿泊させる日数が年180日を超えられないため、通年で回して主たる収入にしたい場合は旅館業の許可が必要です。要件の違いは簡易宿所と民泊の違い|許可要件の比較表と選び方チェックリスト【2026年9月】の比較表で確認できます。

Q. 農地や山林でも宿泊施設は建てられますか?

農地は、農地法第4条または第5条にもとづく転用の許可が前提になります。農地の区分によっては原則として転用が認められないため、購入前に農業委員会へ確認してください。山林も林地開発の規制や造成費の問題があり、初めての1件目に選ぶ土地としては難易度が高くなります。

Q. 自分では運営できません。土地や建物だけ活かす方法はありますか?

あります。宿泊事業者に建物ごと貸す、または運営を委託する形です。宿泊料ではなく賃料や委託後の分配を受け取る代わりに、日々の運営負担を負いません。ただし、この場合も許認可の名義や責任の所在は契約で変わるため、条件を書面で確認してから決めてください。

Q. 許可や届出には、どのくらいの期間がかかりますか?

期間は物件の状態と自治体で変わるため、一律の日数は示せません。確実に言えるのは、消防用設備の工事が必要になった場合、その工期がそのまま開業日を左右するということです。逆算のうえで、最初の事前相談(ステップ3)だけは早く済ませてください。

まとめ:今日から始める3つのアクション

  1. 今日やること: 登記事項証明書と納税通知書を出し、ステップ1のプロンプトで土地・建物の素性を1枚にまとめる
  2. 今週中にやること: 年間の営業日数を決めたうえで、役場・保健所・消防署の担当窓口へ電話し、事前相談の日程を取る
  3. 今月中にやること: ステップ4のプロンプトで稼働率25%・35%・45%の3通りの試算を作り、損益分岐となる稼働率を出す

7つすべてを一度に進める必要はありません。ステップ3まで終われば、その土地で宿を開くべきかどうかは、ほぼ判断できます。

次回予告: 事前相談で「許可は取れそうです」と言われたあとの実務は、和歌山の旅館業許可の取り方|簡易宿所の7ステップと手数料【2026年9月】で解説しています。

参考・出典

あわせて読みたい

※本記事は一般的な制度の考え方を整理したものです。用途地域・許認可・税務の最終的な判断は、必ず所管の窓口および建築士・行政書士・税理士などの専門家にご確認ください。実績は代表およびメンバー個人としての活動を含みます。

ASK AI

この記事を、いつものAIで深掘りする。

記事タイトルとURLを含む質問文が自動で入り、要点・自社への当てはめ・実行手順・注意点を相談できます。

※記事タイトルとURLを含む質問文を自動入力します。自動入力に対応していない場合は質問文をクリップボードへコピーしてAIを開きます。相談内容の保存・利用は各サービスの規約と設定に従い、株式会社Tipが会話内容を取得することはありません。

河原将太の写真

河原 将太株式会社Tip 代表取締役社長

東京都立大学在学中に事業を開始し法人化。大手エネルギー関連企業へのAIコンサルティング、上場企業を含む20社以上へのコンサルティング提供、1投稿で1億回以上再生されたSNSコンテンツの企画に携わる(実績は代表およびメンバー個人としての活動を含む)。現在は和歌山の企業・観光事業者へのSNS・AI・DX支援と、県内のホテル・リゾート開発構想に取り組む。詳しいプロフィール

本記事は、株式会社Tipが公開情報・一次情報・実務での検証結果をもとに作成し、必要に応じて更新しています。掲載内容は最終更新日時点の情報です。

公開日: 2026.09.11