
温泉の成分分析は、一度受ければ永久に有効というものではありません。公共の浴用又は飲用に供している間は、10年以内ごとに登録分析機関の分析を受け直し、その結果で浴場の掲示を更新するという前提で、期限と費用を管理する必要があります。
結論:最初にやることは見積集めではなく、手元の温泉分析書を出して「分析終了年月日」を確認し、源泉ごとに期限を逆算することです。次に管轄へ適用と様式を確認し、登録分析機関へ同じ条件で見積を依頼します。分析書が届いたら掲示物を差し替え、通知を受けた日から30日以内に掲示内容の変更を届け出るところまでを、一つの作業として担当を決めてください。
すでに期限を過ぎている可能性がある場合 年間予算や相見積もりより、分析書の日付の確認と管轄への相談を先に行ってください。掲示だけを書き換えて日付をさかのぼらせる対応はしません。期限内に気づいた場合と、過ぎている可能性がある場合では、最初に連絡する相手も準備する資料も変わります。
本稿は、旅館・民宿・小規模ホテルなど小さな温泉宿の経営者、衛生管理の担当者、経理担当者に向けた運用整理です。泉質の判定方法や分析の技術手順を宿側が自分で行うための資料ではありません。温泉分析書の原本、掲示物の現物、設備図面、営業許可証を手元に置き、管轄の窓口、登録分析機関、設備業者との確認を前提に使ってください。
本文では、分析書・期限確認票、適用範囲・管轄確認票、掲示内容チェック票、見積依頼票、採水段取り票、掲示物差し替え票、届出準備票、10年サイクル台帳、費用記録票、期限超過の初動カードという10点のテンプレートを掲載します。空欄は、自宿の事実と確認回答を書き込む欄です。計算例はすべて仮定であり、実在施設の実績や全国相場を示すものではありません。
法令・公式資料と料金掲載の確認日は2026年9月17日です(checked_at=2026-09-17)。国の制度説明、都道府県・保健所設置市の運用、分析機関の料金掲載は役割が異なります。資料の更新日と本稿の閲覧日を分け、古い資料を現在の義務や現在の料金へ読み替えないよう、出典を添えて説明します。
目次
- 1.まず温泉分析書を出し、源泉ごとに期限を逆算する
- 2.10年ごとの再分析が、温泉法のどの義務なのかを分ける
- 3.掲示に必要な事項を、分析書と運用の事実に分けて棚卸しする
- 4.費用は「分析料・採水と現地調査・掲示と事務」に分けて積む
- 5.登録分析機関の探し方と、採水日の決め方
- 6.分析書を受け取ったら、掲示更新と届出を30日以内に終える
- 7.全国に約2万8千本の源泉|10年サイクルを予算と引継ぎに落とす
- 8.期限に間に合う場合と、過ぎている可能性がある場合を分ける
- よくある質問
- Q. 温泉の成分分析は、何年ごとに受け直すのですか?
- Q. 期限の起算日は、分析書のどの日付ですか?
- Q. 温泉法の再分析の費用は、いくらくらいですか?
- Q. 分析料のほかに、どんな費用がかかりますか?
- Q. 掲示の更新は、いつまでに行いますか?
- Q. 温泉の掲示には、何を書けばよいのですか?
- Q. 加水・加温・循環ろ過・消毒の表示は、分析書を見れば書けますか?
- Q. 掲示内容変更の届出は、どこへ出しますか?
- Q. 分析は、どこへ依頼すればよいですか?
- Q. 掲示をしなかった場合、罰則はありますか?
- Q. 前回から源泉も設備も変えていません。再分析は省略できますか?
- Q. 期限を過ぎていることに気づきました。どうすればよいですか?
- Q. レジオネラ属菌の検査を受けていれば、成分分析も済んだことになりますか?
- 9.今週のうちに、日付と確認先だけはそろえる
1.まず温泉分析書を出し、源泉ごとに期限を逆算する
「うちは前回いつ分析したか」を即答できる宿は多くありません。分析書はフロント裏の棚や先代の書類箱に入ったままで、掲示物だけが浴場の壁に貼られている、という状態がよくあります。費用を調べる前に、原本を探すところから始めてください。
確認するのは、紙の枚数ではなく日付です。温泉分析書には、依頼日、採水年月日、分析終了年月日、発行日など複数の日付が載ることがあります。日本温泉協会は温泉成分の10年ごとの定期的な分析の案内で、温泉分析書に記載されている「分析終了年月日」を確認するよう示しています。
起算日は自分で決めず、分析書と管轄で確認する
佐賀県は温泉成分等の掲示についてで、前回の温泉成分分析を受けた日から10年以内ごとに登録分析機関による温泉成分分析を受けなければならないと説明しています。分析書のどの日付を起算に使うかは、書面の様式や自治体の運用によって説明が分かれることがあります。
そこで、宿の側で「たぶんこの日だろう」と決め打ちしないでください。分析書の写しを持って管轄へ確認し、確認した日付、回答者、回答日を記録します。10年という期間は長く、確認した担当者がその時にいるとは限りません。根拠を残すこと自体が、次の担当者への引継ぎになります。
源泉が複数あれば、期限も複数ある
源泉を2本使っている、隣の施設と共同の源泉から分湯を受けている、混合泉として利用している、という宿では、分析書も期限も一つとは限りません。1枚の分析書が見つかったことで全体の確認を終えたことにせず、利用しているすべての源泉と、それぞれに対応する分析書を突き合わせます。
同じ建物の中でも、大浴場と客室風呂で供給元が違うことがあります。掲示物が浴場ごとに別々に貼られている場合は、どの掲示がどの分析書に基づくのかを対応表にします。掲示の枚数と分析書の枚数が合わないときは、その時点で不明点として管轄へ相談する材料になります。
テンプレート1:温泉分析書・期限確認票
【温泉分析書・期限確認票】作成日: 確認責任者:
施設名/正式住所/管轄保健所:
源泉名(掲示どおりの表記): 源泉の管理番号:
分析書の所在:原本/写し/保管場所:
分析書に記載された日付:依頼日/採水年月日/分析終了年月日/発行日
登録分析機関の名称・登録番号:
起算に使う日付と、その根拠:資料名/確認先/回答日
10年後に当たる年月: 残り期間:
対応する浴場・浴槽・掲示物の設置場所:
飲用に供しているか:有/無/未確認
前回分析後に変えた設備・消毒方法・加温方法:
未確認の項目(推測で埋めない):
次の確認予定日/担当者/代替担当者:
※そのままコピーして使えます
この票は、源泉1本につき1枚作ります。空欄が多くても構いません。むしろ、埋まらない欄がどこかを見えるようにすることが目的です。「分析書が見つからない」という事実も、管轄や分析機関へ相談するときの出発点になります。

2.10年ごとの再分析が、温泉法のどの義務なのかを分ける
「10年ごとの分析」と「掲示」と「届出」は、つながってはいますが別々の作業です。ひとまとめに「温泉の更新手続き」と呼んでいると、どれかが抜けていても気づけません。三つを別の欄に置いて管理してください。
環境省の温泉法の概要では、温泉の利用許可を得た施設は温泉の成分・禁忌症等の掲示が必要であり、その掲示は登録分析機関の行う温泉成分分析の結果に基づくこと、そして10年に一度の定期的な分析を要することが示されています。掲示が先にあり、その中身を支える資料として分析がある、という関係です。
掲示の義務・定期分析の義務・届出の義務
石川県の平成19年10月20日施行の温泉法の改正については、温泉成分の定期的な分析(10年ごと)と、その結果に基づく掲示内容の更新が義務づけられたこと、更新は分析の結果を受けた日から30日以内であること、違反した場合は30万円以下の罰金が適用されることを案内しています。あわせて、改正時の経過措置として、平成12年1月1日以前に分析した場合は平成21年12月31日まで、平成12年1月2日以降に分析した場合は分析終了年月日から10年以内という整理が示されています。
| 管理する義務 | 作業の中身 | 抜けたときに起きること |
|---|---|---|
| 掲示 | 源泉名・泉質・成分・禁忌症・注意等を見やすい場所へ掲示 | 利用者へ必要な情報が伝わらない。罰則の対象になり得る |
| 定期の分析 | 10年以内ごとに登録分析機関へ依頼し、分析書を受け取る | 掲示の根拠が古いままになり、更新もできない |
| 届出 | 掲示内容の変更を管轄へ届け出る | 施設側で掲示を直しても、行政側の記録と食い違う |
三つのうち、宿が忘れやすいのは真ん中です。掲示物は目に入り、届出は書類が残ります。しかし分析は10年に一度しか発生しないため、担当者が交代すると経験として引き継がれません。この記事でカレンダーと台帳を重視するのは、そのためです。
対象になるのは「公共の浴用又は飲用に供する者」
義務の主語は、温泉を公共の浴用又は飲用に供する者です。宿泊者向けの浴場なのか、日帰り入浴も受けているのか、館内に別の許可で営業している施設があるのかによって、温泉法とは別に確認すべき制度が増えます。日帰り利用を受け入れる場合の公衆浴場法まわりの手順は、宿のサウナを外来開放する手順|公衆浴場法の許可7ステップと衛生基準【2026年9月】で別に整理しています。
営業許可そのものが曖昧なままでは、どの窓口に何を確認すればよいかも決まりません。許可区分の考え方は簡易宿所と民泊の違い|許可要件の比較表と選び方チェックリスト【2026年9月】と、和歌山県内の手続きをまとめた和歌山の旅館業許可の取り方|簡易宿所の7ステップと手数料【2026年9月】を先に確認してください。本稿は、すでに温泉を利用して営業している施設の、分析と掲示の更新に絞ります。
テンプレート2:適用範囲・管轄確認票
【適用範囲・管轄確認票】作成日: 確認責任者:
温泉の所在地(住所): 施設の所在地:
営業許可の種類・許可番号・許可日:
宿泊者のみ/日帰り利用あり/館内併設施設あり:
温泉利用許可の有無・許可年月日・許可書の保管場所:
温泉に関する手続きの担当窓口:部署名/電話/確認日
掲示内容の変更届の提出先:
使用する様式の名称・番号・入手先URL:
添付が必要と確認できた書類:
手数料の有無・金額・納付方法(確認した内容のみ):
飲用に供する場合に追加で必要と確認した検査:
確認した担当者名/回答日/記録の保管先:
未確認のまま残っている事項:
※そのままコピーして使えます
問い合わせるときは、「10年経ったので分析すればいいですか」だけで終えないでください。源泉名、利用している浴場の一覧、現在の掲示物の写真、手元の分析書の写しを添えて相談すると、必要な様式や添付書類まで一度で確認できます。回答は口頭の記憶にせず、日時と内容を書き残します。

3.掲示に必要な事項を、分析書と運用の事実に分けて棚卸しする
再分析を頼む前に、現在の掲示物を写真に撮って、項目ごとに分解しておくと後の作業が楽になります。分析書が届いてから「何を書き換えるのか」を考え始めると、30日はあっという間に過ぎます。
佐賀県の案内では、掲示すべき事項として、源泉名、泉質、温度、成分、分析年月日、登録分析機関の名称及び登録番号、禁忌症、浴用・飲用方法と注意、加水・加温の有無と理由、循環利用の有無と理由、入浴剤の有無と名称、消毒方法と理由が挙げられています。様式や記載の細目は自治体で異なるため、管轄の記載例を取り寄せて突き合わせてください。
分析書から写す欄と、宿が事実を書く欄は別
この12項目は、性格が2種類に分かれます。源泉名・泉質・温度・成分・分析年月日・登録分析機関の名称及び登録番号は、新しい分析書から転記する欄です。一方、加水・加温・循環利用・入浴剤・消毒に関する欄は、分析書には書かれていません。宿の設備と日々の運用の事実です。
つまり、再分析を受けて分析書が新しくなっても、後半の欄は自動的には正しくなりません。前回の分析から10年の間に、加温方法を変えた、ろ過装置を入れ替えた、消毒方法を見直した、という宿は少なくないはずです。掲示の更新は、分析書の転記作業であると同時に、設備と運用の棚卸しでもあります。
禁忌症や入浴上の注意の記載は、環境省が定める基準に沿って示されるものです。前回の掲示物の文言をそのまま流用してよいかは、管轄の記載例と最新の基準で確認してください。「前と同じで大丈夫だろう」と考えず、分析書の記載と掲示の文言を1行ずつ照合します。
掲示物の現物も点検の対象にする
内容が正しくても、掲示が読めない状態では意味がありません。浴場の湿気で文字がにじんでいる、脱衣所の棚の陰に隠れている、貸切風呂だけ掲示が無い、といった状態は珍しくありません。掲示の場所と見え方も、更新に合わせて見直してください。
外国語の案内を併記している宿では、日本語の掲示を差し替えたのに、英語の案内だけ古い泉質のままになる取り違えが起こりがちです。掲示物の管理番号を振り、日本語版と外国語版、大浴場と貸切風呂を対応表で管理すると、差し替え漏れを見つけやすくなります。
テンプレート3:掲示内容チェック票
【掲示内容チェック票】掲示物ID: 設置場所: 作成日:
対応する源泉名/対応する分析書の分析終了年月日:
1 源泉名:現在の記載/新しい分析書の記載/要修正
2 泉質:現在/新/要修正
3 温度(源泉・利用場所):現在/新/要修正
4 成分:現在/新/要修正
5 分析年月日:現在/新/要修正
6 登録分析機関の名称・登録番号:現在/新/要修正
7 禁忌症:現在の文言/確認した記載例/要修正
8 浴用・飲用の方法と注意:現在/確認した記載例/要修正
9 加水の有無と理由:運用の事実/掲示の記載/一致・不一致
10 加温の有無と理由:運用の事実/掲示の記載/一致・不一致
11 循環・ろ過の有無と理由:運用の事実/掲示/一致・不一致
12 入浴剤・消毒の有無、名称・方法と理由:運用/掲示/一致・不一致
掲示物の状態:文字の判読/設置位置/外国語版の有無と版
確認者/確認日/管轄へ確認した点と回答:
※そのままコピーして使えます
9番から12番で「不一致」に印がついたら、それは掲示の書き換えだけでは終わりません。設備業者や現場担当者と事実を確認し、いつからその運用になっていたのかを整理してください。掲示の文言を実態に合わせるのか、運用を見直すのかは、管轄への相談を含めて判断します。

4.費用は「分析料・採水と現地調査・掲示と事務」に分けて積む
ここからが費用の話です。結論から言うと、全国一律の金額はありません。分析の種類、源泉の本数、飲用に供するかどうか、現地調査の要否、依頼先によって変わります。まずは公表されている金額の例を、性格の違う2種類で見てください。
公表されている手数料・料金の例
大分県は、県へ温泉分析を依頼する場合の手数料を公表しています。温泉の分析依頼のページに掲載された令和8年4月1日現在の金額は、次のとおりです。公共と個人で区分があり、依頼は温泉所在地の管轄保健所などを通じて行う案内になっています。
| 大分県が公表する温泉分析の手数料(令和8年4月1日現在) | 公共 | 個人 |
|---|---|---|
| 中分析試験(一般温泉成分項目) | 66,400円 | 73,100円 |
| 飲用試験 | 40,650円 | 43,850円 |
| 中分析+飲用試験 | 97,550円 | 106,750円 |
| 可燃性天然ガス測定(一件) | 13,500円 | 13,500円 |
もう一つは、民間の登録分析機関の掲載例です。一般社団法人和歌山県薬剤師会は、温泉水 成分分析のページで温泉水成分分析を99,550円と掲載し、源泉調査と試験室内での水質検査を行って温泉分析書を発行すると説明しています。同会は温泉成分分析機関 第2号(和歌山県)と記載しています。
これらは公表されている掲載例であり、自宿への見積ではありません。 税区分、含まれる作業の範囲、現地までの距離による費用、追加項目の扱いは、掲載ページだけでは確定しません。日本温泉協会も、費用は分析機関によって異なるとしたうえで約10万円程度という目安を示しています。目安は、見積の代わりにはなりません。
分析料の外側にある費用を、最初から欄にしておく
見積書の総額だけを見ていると、後から出てくる支出に驚くことになります。次の3つに分けて、埋まらない欄は「見積待ち」と書き込んでください。
- 分析料:源泉の本数 × 必要な分析の種類。飲用に供する場合は追加の検査が必要になり得る
- 採水と現地調査:現地調査の出張費、採水にかかる時間、容器・送料、立会いに必要な宿側の人時
- 掲示と事務:掲示物の作成・印刷費、外国語版の翻訳、届出書類の作成、差し替え作業の人時
和歌山県の温泉の利用についてでは、飲用に供する場合に、温泉に含まれる一般細菌及び大腸菌群の数並びに有機物の量に関する検査を行い添付するよう案内しています。浴用だけの宿と、飲泉場を持つ宿では、必要な検査も費用も変わるということです。
10年で割って「年あたりの費用」に置き換える
10年に一度の支出は、単年度の予算では突発的な出費に見えます。掲載例で機械的に割ってみると、次のようになります。いずれも計算例であり、実際の金額を示すものではありません。
| 仮の条件 | 10年に一度の支出 | 年あたりに割った額 |
|---|---|---|
| 源泉1本・和歌山県薬剤師会の掲載例99,550円 | 99,550円 | 9,955円 |
| 源泉2本・同じ掲載例を単純に2倍 | 199,100円 | 19,910円 |
| 源泉1本・大分県の中分析+飲用(個人)106,750円 | 106,750円 | 10,675円 |
年あたり1万円前後という見え方になれば、「10年に一度の重い出費」ではなく、毎年積んでおく管理費として扱えます。実際の金額は見積で置き換えてください。重要なのは金額の大小ではなく、予算表に費目として存在していることです。費目がない支出は、期限が来た年に「今年は余裕がないから来年にしよう」と先送りされます。
テンプレート4:再分析の見積依頼票
【温泉成分分析・見積依頼票】施設名: 所在地: 担当者:
依頼目的:10年以内ごとの定期分析/新規/設備変更後/その他
源泉名・源泉の所在地・採水予定箇所:
現在の分析書:分析終了年月日/分析機関名/写しの添付:有/無
利用形態:浴用のみ/飲用あり/飲泉場の有無:
浴場の構成:大浴場/露天/貸切/客室風呂(設備IDを記載)
確認事項:
・分析の種類と含まれる項目、行政提出に使える報告様式か
・現地調査・採水の担当(機関が来訪/宿側で採水)と条件
・現地までの出張費、容器、送料、報告書の部数と費用
・税区分、金額の適用期間、見積の有効期限
・採水希望日から分析書の受領までの日数の目安
・掲示内容の変更届に添付できる書類の形式
・追加費用が発生し得る条件(再採水、項目追加など)
回答期限: 発注担当: 承認者: 管轄へ共有する範囲:
※そのままコピーして使えます
相見積もりを取る場合は、同じ源泉、同じ採水箇所、同じ分析の種類、同じ受渡条件でそろえてください。片方が現地採水込み、もう片方が宿側の採水前提であれば、総額の比較には意味がありません。宿の担当者が立ち会う時間も、年間の人件費から見えなくしないでください。

5.登録分析機関の探し方と、採水日の決め方
温泉成分の分析は、温泉法に基づく登録分析機関へ依頼します。検索して最初に出てきた会社が、所在地で依頼できる機関とは限りません。公的な一覧から確認してください。
環境省は都道府県連絡先一覧のページで、都道府県温泉行政担当部署一覧と登録分析機関一覧を公開しています。まずここで所在地の担当部署を確認し、あわせて登録分析機関の一覧を確認するのが確実です。所在地の温泉組合や近隣の同業者に聞く方法もありますが、最終的な確認は公的な一覧と管轄で行ってください。
価格以外に確認すること
分析機関を選ぶときは、次の点を価格と並べて比較します。安い見積が、結果として手戻りを生むことがあります。
- 行政へ提出できる形式の分析書を発行できるか、管轄の様式に対応できるか
- 現地調査・採水に来訪できるか、その場合の日程の取り方
- 採水から分析書の受領までに要する日数の目安
- 報告書の記載事項について、後から問い合わせに応じてもらえるか
- 再採水や項目追加が必要になった場合の扱いと費用
採水日は、営業カレンダーと設備の状態から逆算する
採水には、源泉の状態や設備の運転条件が関わります。当日の浴場の運用、機械室への立入り、立会い担当者の勤務を、事前に機関と確認してください。繁忙期の土日に現地調査を入れると、立会いに人が出せず、当日になって延期という事態が起こります。
小さな宿では、設備を一番よく知っている人が接客も担っていることが多いはずです。その人が出られる日を先に押さえ、そこから逆算して機関へ日程を相談するほうが現実的です。逆算の起点は、あくまで分析書の期限であり、期限の直前に採水日を置くと、天候や機器の都合で1回ずれただけで間に合わなくなります。
テンプレート5:採水・現地調査の段取り票
【採水・現地調査の段取り票】源泉名: 設備ID:
依頼先の登録分析機関/担当者/連絡先:
期限(起算日+10年): 採水希望日: 予備日:
採水担当:機関が来訪/宿側が採水(指定条件を確認)
当日の立会い担当: 代替者: 所要見込み時間:
立入りが必要な場所:源泉/貯湯槽/機械室/浴場
当日の浴場の運用:通常営業/一部休止/貸切休止
必要な準備:鍵/図面/前回分析書/作業スペース/駐車
機関から指定された条件(容器・量・温度・時間等):
悪天候・機器不調時の連絡方法と延期の判断期限:
分析書の受領予定日: 受領後の掲示更新の着手日:
受領方法:郵送/持参/電子 受領記録の保管先:
※そのままコピーして使えます
6.分析書を受け取ったら、掲示更新と届出を30日以内に終える
分析書が届いてからが、実は一番慌ただしい期間です。東京都の温泉の利用に関する案内では、登録温泉分析機関から通知を受けた日から30日以内に届け出る扱いが示されています。石川県も同様に、分析の結果を受けた日から30日以内の掲示内容の更新を案内しています。
30日は、原稿作成、確認、印刷、差し替え、届出までを含む日数です。掲示物の印刷を外注する宿では、実際に使える日数はさらに短くなります。テンプレート3のチェック票を分析書の到着前に作っておくと、この期間の作業が転記だけで済みます。
届出の様式と添付書類は、自治体ごとに確認する
石川県の温泉成分等掲示内容(変更)の届出では、根拠を温泉法第18条第4項とし、添付書類として掲示場所を明示した温泉利用施設の平面図と掲示物の写しを挙げています。提出先は所轄の保健所長で、市によっては市の保健所が窓口になります。
様式名は自治体で異なります。和歌山県は別記第22号様式「温泉成分等掲示(掲示内容変更)届」を案内し、温泉を公衆の浴用又は飲用のために利用する場合は温泉利用許可申請(別記第19号様式)とあわせて提出するよう示しています。佐賀県は様式第20号「温泉成分等掲示内容届」を案内しています。他県の様式をダウンロードして流用しないでください。
| 確認する相手 | 確認すること | それだけでは決まらないこと |
|---|---|---|
| 管轄の保健所・担当部署 | 様式、添付書類、提出期限、手数料の有無 | 分析機関の日程や分析書の内容 |
| 登録分析機関 | 分析の種類、採水条件、分析書の受領日 | 行政が求める様式や掲示の記載例 |
| 掲示物の制作業者 | 原稿の形式、印刷の納期、素材と耐久性 | 掲示事項の過不足や記載の適否 |
| 設備業者・現場担当 | 加水・加温・循環・消毒の現在の運用 | 掲示の文言として適切な表現 |
テンプレート6:掲示物の差し替え・周知作業票
【掲示物の差し替え・周知作業票】案件番号: 源泉名:
新しい分析書:分析終了年月日/受領日/機関名・登録番号
差し替え対象の掲示物ID一覧(設置場所ごと):
・大浴場(男)/(女)/露天/貸切/客室風呂/飲泉場
・外国語版の有無と対応言語/版数
原稿作成:担当/完成日/管轄の記載例との照合日
印刷・制作:発注日/納期/費用/耐水性等の仕様
差し替え実施:日時/担当/立会い/旧掲示物の回収先
旧掲示物の保管:保管場所/保管期限/廃棄判断の担当
公式サイト・パンフレット・予約サイトの泉質表記の更新:
従業員への周知:実施日/対象/説明した変更点
差し替え後の写真(掲示物IDごと)の保存先:
未完了項目と期限:
※そのままコピーして使えます
テンプレート7:掲示内容変更届の提出準備票
【掲示内容変更届・提出準備票】案件番号:
提出先/担当部署/電話/事前相談の日時・回答:
使用する様式の名称・番号/入手先/版の日付:
分析結果の通知を受けた日: 提出期限(通知日+30日):
記載内容の確認:施設名/所在地/源泉名/泉質/成分
添付書類:
・掲示物の写し(掲示物IDごと):有/無
・掲示場所を明示した平面図:有/無
・温泉分析書の写し(求められた場合):有/無
・その他、管轄から指示された書類:
手数料の有無・金額・納付方法(確認した内容のみ):
提出方法:持参/郵送/電子 提出日: 受付の記録:
控えの保管場所: 次回期限の台帳への転記:済/未
提出後に管轄から指示された事項:
※そのままコピーして使えます
「30日以内」の起算は、分析書に書かれた発行日ではなく、通知を受けた日を基準に説明されています。郵送で届いた日、担当者が受け取った日、責任者が内容を確認した日が違う場合もあるため、受領日を記録に残してください。受領の記録がないと、期限の管理も説明もできなくなります。
7.全国に約2万8千本の源泉|10年サイクルを予算と引継ぎに落とす
「うちのような小さな宿だけが面倒な手続きを抱えているのでは」と感じる必要はありません。規模の話ではなく、温泉を利用する施設に共通する管理サイクルです。
環境省が公表する温泉利用状況等についての令和6年度の集計について、観光経済新聞は最新の「温泉利用状況」 温泉地数は2839カ所 前年から18カ所減少(2026年7月26日)で、2025年3月31日現在の温泉地数2,839カ所、源泉総数2万7,899カ所、年度延べ宿泊利用人員1億2,541万4,300人と報じています。
源泉の数を10年で機械的に割れば、毎年およそ2,790本が期限を迎える規模感になります。これは実際の分布を示すものではなく、割り算にすぎません。それでも、この作業が例外的な手続きではなく、全国で毎年繰り返されている定期業務だということは伝わるはずです。分析機関の繁忙もあり得るので、期限の直前に駆け込まない段取りが役に立ちます。
10年サイクルを、担当者が代わっても回る形にする
10年という間隔は、宿の担当者が1回か2回は入れ替わる長さです。前回の作業を覚えている人がいない前提で、記録を設計してください。必要なのは立派なシステムではなく、次の担当者が見つけられる場所に、日付と根拠が残っていることです。
紙の分析書は、湿気と紛失に弱い書類です。原本の保管場所を決めたうえで、全ページをスキャンし、日付・機関名・登録番号・成分表の数値が読める状態で保存してください。掲示物の写真も、差し替えの前後で撮って残します。写真1枚があるだけで、次回に「前回は何をどう書いたか」を確認できます。
テンプレート8:10年サイクル管理台帳
【温泉成分分析・10年サイクル管理台帳】源泉名: 設備ID:
第◯回:分析終了年月日/分析機関/登録番号/分析書の保存先
掲示更新日/届出日/受付記録/掲示物IDと写真の保存先
費用(分析料/採水・出張/掲示物/その他):実額
当時の担当者/引継ぎメモ(つまずいた点・待ち時間)
次回期限: 逆算した着手予定:期限の12か月前/6か月前/3か月前
期限の12か月前にやること:予算計上/機関へ日程相談
期限の6か月前にやること:見積確定/採水日の仮押さえ
期限の3か月前にやること:採水実施/掲示物の原稿準備
前回以降に変えた設備・運用(加水/加温/循環/消毒):
関連する他の期限(衛生管理の水質検査・設備点検):
台帳の保管場所(紙/電子)/閲覧できる担当者:
※そのままコピーして使えます
テンプレート9:費用記録票(次回の見積根拠にする)
【温泉成分分析・費用記録票】実施年: 源泉名:
分析料:機関名/分析の種類/金額/税区分/請求日
採水・現地調査:出張費/容器・送料/立会いの人時
掲示物:制作費/印刷費/外国語版/設置作業の人時
事務:届出書類の作成/提出の交通費/控えの保管
臨時に発生した費用:再採水/項目追加/その理由
合計: 10年で割った年あたりの額:
次回に向けた申し送り:見積時に確認すべきだった点
予算計上の方法:毎年積立/単年度計上/未計上
※そのままコピーして使えます
費用記録票は、値切るための資料ではありません。次の担当者が、根拠のある予算を立てるための資料です。前回いくらかかり、どこで想定外が出たかが残っていれば、10年後の宿は同じ場所でつまずかずに済みます。
年間の衛生管理の検査計画とあわせて管理したい場合は、温泉のレジオネラ検査|費用・頻度の決め方と小さな宿の年間管理実務で扱う年1回・年2回といった検査の周期と、本稿の10年サイクルを別々の表に置いてください。周期が違うものを一つの表に混ぜると、どちらかが抜けます。
8.期限に間に合う場合と、過ぎている可能性がある場合を分ける
最後に、分岐の話です。テンプレート1で日付を確認した結果、二つのうちどちらかの状態になります。どちらに当たるかで、最初に連絡する相手が変わります。
A:期限まで余裕がある場合
期限までに時間があるなら、順番どおりに進めます。管轄へ様式と添付書類を確認し、登録分析機関へ見積と日程を相談し、採水、分析書の受領、掲示更新、届出と進めてください。この場合でも、採水日を期限の直前に置かないことが重要です。
余裕がある時期だからこそ、テンプレート3で掲示と運用の不一致を洗い出しておきます。加水や消毒の運用が掲示と食い違っているなら、それは分析書の期限とは別に、いま直すべき事項です。分析を待つ理由にはなりません。
B:期限を過ぎている可能性がある場合
分析書が見つからない、日付が10年より前、そもそも掲示の根拠が不明、といった場合です。ここで宿がやってはいけないのは、掲示だけを先に書き換えることと、古い分析書の数値を新しい日付で書き直すことです。掲示は分析の結果に基づくという前提が崩れます。
やることは、事実を正確にそろえて管轄へ相談することです。分析書の写し(見つからない場合はその旨)、対象の源泉、現在の掲示物の写真、営業許可の内容、現在の浴場の運用を整理して持参・送付してください。同時に、登録分析機関へ採水と分析の日程を相談します。相談の順序は管轄の指示で変わることがあるため、まず一報を入れて確認するのが確実です。
慌てて浴場を閉めるべきかどうかも、宿の自己判断で決めないでください。利用者の健康被害に関する情報がある場合は、本稿の期限管理とは別の、衛生上の初動が優先されます。その分岐はレジオネラの記事で整理しているとおりです。
テンプレート10:期限超過・不一致が判明したときの初動カード
【期限超過・不一致の初動カード】判明日: 判明した経緯:
対象源泉名/対象の浴場・掲示物ID:
確認した事実:
・分析書の有無/分析終了年月日/保管場所
・現在の掲示物の内容(写真の保存先)
・掲示と実際の運用の食い違い(加水/加温/循環/消毒)
・営業許可の種類と温泉利用許可の有無
やらないこと:
・掲示だけを先に書き換える
・古い分析書の数値を新しい日付で書き直す
・確認していない内容を「該当なし」と埋める
連絡1:管轄の担当部署/連絡日時/担当者/受けた指示
連絡2:登録分析機関/連絡日時/採水可能日/見積依頼
社内共有:責任者/受付・清掃・設備・予約担当への周知日
是正の計画:採水日/分析書受領予定/掲示更新/届出
記録:指示内容/実施内容/完了日/未完了事項と期限
※利用者の健康被害に関する情報がある場合は、この手順より
保健所への連絡と衛生上の初動を優先する。
※そのままコピーして使えます

期限を過ぎていたこと自体は、隠すほど対応が難しくなります。10年前の担当者がすでにいない宿は珍しくありません。いま把握した事実と、これから行う予定を示して相談するほうが、結果として早く正常な状態へ戻せます。
よくある質問
Q. 温泉の成分分析は、何年ごとに受け直すのですか?
温泉を公共の浴用又は飲用に供している間は、10年以内ごとに登録分析機関の分析を受け、その結果に基づいて掲示の内容を更新する扱いです。環境省は温泉法の概要で、掲示は登録分析機関の行う温泉成分分析の結果に基づく必要があり、10年に一度の定期的な分析を要すると説明しています。起算日と適用は、自施設の温泉分析書と管轄への確認で決めてください。
Q. 期限の起算日は、分析書のどの日付ですか?
日本温泉協会は温泉分析書に記載された分析終了年月日の確認を案内し、佐賀県は前回の温泉成分分析を受けた日から10年以内ごとと説明しています。分析書には依頼日、採水日、分析終了年月日、発行日が別々に載ることがあります。どの日付を起算に使うかは、分析書の原本を示して管轄へ確認してください。
Q. 温泉法の再分析の費用は、いくらくらいですか?
全国一律の金額はありません。公表例では、大分県の温泉分析手数料が令和8年4月1日現在で中分析試験の公共66,400円・個人73,100円、和歌山県薬剤師会の掲載例が温泉水成分分析99,550円です。日本温泉協会は分析機関によって異なるとしたうえで約10万円程度の目安を示しています。源泉の本数、飲用の有無、採水条件で変わるため、実見積で確認してください。
Q. 分析料のほかに、どんな費用がかかりますか?
現地調査や採水の出張費、容器・送料、追加の項目、掲示物の作り直し、届出に伴う事務の人時などが別に発生し得ます。飲用に供する場合は、大腸菌群などの別の検査を求められることがあります。見積書に含まれる範囲と含まれない範囲を、発注前に一つずつ確認してください。
Q. 掲示の更新は、いつまでに行いますか?
東京都と石川県の案内では、登録分析機関から分析結果の通知を受けた日から30日以内に掲示の内容を変更し、届け出る扱いが示されています。分析書が届いてから掲示物のレイアウトを考え始めると日数が足りなくなることがあります。発注の段階で、原稿と印刷の段取りまで決めておいてください。
Q. 温泉の掲示には、何を書けばよいのですか?
佐賀県の案内では、源泉名、泉質、温度、成分、分析年月日、登録分析機関の名称及び登録番号、禁忌症、浴用・飲用方法と注意、加水・加温の有無と理由、循環利用の有無と理由、入浴剤の有無と名称、消毒方法と理由が挙げられています。様式や記載の細目は自治体で異なります。管轄の様式と記載例を取り寄せて突き合わせてください。
Q. 加水・加温・循環ろ過・消毒の表示は、分析書を見れば書けますか?
書けません。これらは源泉の成分ではなく、宿の設備と運用の事実です。分析書が新しくなっても、実際の運用と掲示が食い違えば掲示の意味がなくなります。設備の更新や消毒方法の変更があった時点で、掲示の該当欄を見直してください。
Q. 掲示内容変更の届出は、どこへ出しますか?
温泉の所在地を所管する保健所などが窓口です。様式名は自治体で異なり、和歌山県は別記第22号様式の温泉成分等掲示(掲示内容変更)届、佐賀県は様式第20号の温泉成分等掲示内容届を案内しています。添付書類や手数料の有無も、提出前に管轄へ確認してください。
Q. 分析は、どこへ依頼すればよいですか?
温泉法に基づく登録分析機関へ依頼します。環境省が都道府県の温泉行政担当部署一覧と登録分析機関一覧を公開しているので、そこから所在地で依頼できる機関を確認してください。価格だけでなく、現地採水の可否、日程、報告書の様式、行政へ提出する書類への対応を比較します。
Q. 掲示をしなかった場合、罰則はありますか?
石川県の案内では、違反した場合に30万円以下の罰金が示されています。ただし罰則の有無だけを判断材料にしないでください。掲示は、利用者へ泉質や禁忌症、入浴上の注意を正しく伝えるための表示です。期限管理を、設備点検や検査と同じように運用へ組み込んでください。
Q. 前回から源泉も設備も変えていません。再分析は省略できますか?
変更がないことは、定期的な分析を省略してよい理由にはなりません。温泉成分は経年で変化し得るという考え方が制度の前提にあります。期限が近い、または過ぎている可能性がある場合は、宿の判断で先延ばしにせず、分析書の日付の確認と管轄への相談から始めてください。
Q. 期限を過ぎていることに気づきました。どうすればよいですか?
分析書の日付、対象の源泉、現在の掲示物の写真をそろえ、管轄へ現状を報告して指示を確認します。同時に登録分析機関へ採水と分析の日程を相談します。掲示だけを先に書き換えて日付をさかのぼらせる、古い分析書の数値を書き写して新しい日付にする、といった対応はしないでください。
Q. レジオネラ属菌の検査を受けていれば、成分分析も済んだことになりますか?
なりません。浴槽水などの水質検査と、温泉法に基づく温泉成分の分析は、目的も対象も根拠も別です。年1回・年2回といった衛生管理の検査計画と、10年サイクルの成分分析の期限は、別々の表で管理してください。どちらも管轄と検査機関への確認が出発点になります。
9.今週のうちに、日付と確認先だけはそろえる
温泉の成分分析の費用は、料金表から金額を一つ選んで決まるものではありません。源泉ごとの期限、必要な分析の種類、採水の条件、掲示物の作り直し、届出までを一続きの作業として見て、はじめて必要な予算が見えます。逆に言えば、最初の一歩に費用は要りません。分析書を探して日付を読むところからです。
小さな宿では、設備も接客も経理も同じ人が抱えていることがあります。だからこそ、10年に一度の作業は記憶ではなく台帳に載せてください。次の担当者に残すべきは、完璧な手順書ではなく、日付と、確認した相手と、根拠の所在です。
| 作業の順 | そろえるもの・確認すること | 完了とする状態 |
|---|---|---|
| 1 | 温泉分析書の原本を探し、日付をすべて書き出す | 源泉ごとに起算日の候補と残り期間が分かる |
| 2 | 管轄へ様式・添付書類・適用を確認する | 様式名、提出先、確認日、回答者を記録した |
| 3 | 現在の掲示物を撮影し、12項目を照合する | 分析書から写す欄と運用の事実の欄を分けられた |
| 4 | 登録分析機関へ同じ条件で見積・日程を相談する | 分析料と採水・出張・付帯費用の内訳が比較できる |
| 5 | 10年サイクル台帳へ次回期限と担当を書き込む | 担当者が代わっても期限にたどり着ける |
見積が届いていない欄は「見積待ち」、管轄に確認できていない欄は「確認中」と書いてください。推測で埋めた総額より、確定した金額と未確定項目が分かる表のほうが、経営判断にも引継ぎにも役立ちます。
株式会社Tipは、和歌山を中心に宿泊施設のデジタル面の運用支援に取り組んでいます。予約導線や問い合わせ窓口の整理、館内案内や公式サイトの表記更新など、事業運営の側面についてはご相談いただけます。温泉成分の分析、掲示事項の適否、届出の要否といった制度上の判断は、管轄の窓口と登録分析機関への確認を軸に進めてください。泉質を魅力として伝える発信の設計は、和歌山の温泉旅館SNS集客|予約につなぐ30日運用ガイド【2026年】で別に整理しています。
参照した一次資料と確認日
以下は2026年9月17日に確認した資料です。国の制度説明、都道府県・保健所設置市の運用案内、分析機関の料金掲載を区別して使用しています。所在地や利用形態が異なる施設は、同じ手順や同じ金額をそのまま当てはめず、適用される現行の規定と実見積を確認してください。
- 環境省「温泉法の概要」:掲示は登録分析機関の行う温泉成分分析の結果に基づくこと、10年に一度の定期的な分析を要すること、許可の種類を参照。温泉法の概要(参照日: 2026-09-17)
- 環境省「都道府県連絡先一覧」:都道府県温泉行政担当部署一覧と登録分析機関一覧の掲載を確認。都道府県連絡先一覧(参照日: 2026-09-17)
- 環境省「温泉利用状況等について」:令和6年度の集計の公表ページを確認。数値は下記の報道と併記。温泉利用状況等について(参照日: 2026-09-17)
- 石川県「平成19年10月20日施行の温泉法の改正について」:10年ごとの定期分析、分析の結果を受けた日から30日以内の掲示内容の更新、改正時の経過措置、30万円以下の罰金を参照。温泉法の改正について(参照日: 2026-09-17)
- 石川県「温泉成分等掲示内容(変更)の届出」:根拠を温泉法第18条第4項とし、掲示場所を明示した平面図と掲示物の写しを添付書類として案内。掲示内容(変更)の届出(参照日: 2026-09-17)
- 東京都保健医療局 西多摩保健所「温泉の利用」:登録温泉分析機関から通知を受けた日から30日以内の届出、10年以内ごとの分析を参照。温泉の利用(参照日: 2026-09-17)
- 佐賀県「温泉成分等の掲示について」:掲示すべき12の事項、前回の分析を受けた日から10年以内ごとの分析、様式第20号「温泉成分等掲示内容届」を参照。温泉成分等の掲示について(参照日: 2026-09-17)
- 和歌山県「温泉の利用について」:別記第19号様式「温泉利用許可申請書」、別記第22号様式「温泉成分等掲示(掲示内容変更)届」、飲用の場合の一般細菌・大腸菌群・有機物に関する検査の添付を参照。温泉の利用について(参照日: 2026-09-17)
- 大分県「温泉の分析依頼」:令和8年4月1日現在の手数料(中分析試験 公共66,400円・個人73,100円、飲用試験 公共40,650円・個人43,850円、中分析+飲用試験 公共97,550円・個人106,750円、可燃性天然ガス測定 一件13,500円)を参照。温泉の分析依頼(参照日: 2026-09-17)
- 一般社団法人和歌山県薬剤師会「温泉水 成分分析」:温泉水成分分析99,550円の掲載例、源泉調査と試験室内での水質検査、温泉成分分析機関 第2号(和歌山県)の記載を参照。掲載例であり、現行の受注価格と付帯費用は見積確認が必要。温泉水 成分分析(参照日: 2026-09-17)
- 日本温泉協会「温泉成分は10年ごとの定期的な分析が必要です」(2020年8月28日公開):温泉分析書の分析終了年月日の確認、費用は分析機関により異なり約10万円程度という目安、30万円以下の罰金を参照。温泉成分の定期的な分析(参照日: 2026-09-17)
- 観光経済新聞「最新の『温泉利用状況』 温泉地数は2839カ所 前年から18カ所減少」(2026年7月26日):2025年3月31日現在の温泉地数2,839カ所、源泉総数2万7,899カ所、年度延べ宿泊利用人員1億2,541万4,300人を参照。最新の温泉利用状況の報道(参照日: 2026-09-17)
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※本記事は制度の一般的な整理であり、個別施設への適用、必要な分析の種類、届出の要否を確定するものではありません。金額は公表されている掲載例であり、見積を保証するものではありません。