
結論: 田辺市が2026年9月9日に公表した資料で、田辺扇ヶ浜海水浴場の今季(7月1日〜8月31日)の来場者は41,604人、前年度の34,291人から約2割増えたことが分かりました。ただし同時に公表されたアンケートでは、回答のうち45.6%が「ほかに立ち寄る目的地はない」と答えています。人は増えたのに周遊していない——扇ヶ浜まで徒歩・車で数分の飲食店や小売店にとって、これは「取り逃がしている客がいる」という一次データです。
この記事の要点 対象読者: 田辺市街地(扇ヶ浜・紀伊田辺駅周辺)とその近郊で飲食店・小売店・宿泊施設・体験事業を営む方、南紀エリアで夏季の集客を考えている事業者 読了後にできること: 市が公表した数字のうち自店の意思決定に効く4つを抜き出し、来季(2027年夏)の営業日・営業時間・売り場・案内文を10月中に仮決めできる状態になる
「今年は人が多かった気はするけど、うちの売上は去年とそんなに変わらなかった」
海水浴シーズンが終わったあと、田辺の事業者からこうした感覚的な振り返りが出ることがあります。感覚は間違っていない可能性が高い。今回の資料が示したのは、まさに「浜の人出は増えたのに、浜から先へ流れていない」という構図だからです。
これまで、夏の田辺の人出について事業者が使える公的な数字はほとんどありませんでした。県の統計は市町村や主要観光地の単位で、しかも公表は半年以上あと。だから来季の営業日を決めるときも、仕入れ量を決めるときも、根拠は「去年の体感」でした。
今回、田辺市観光振興課が来場者の実数と来場者アンケートの両方を出したことで、状況が変わります。どこから来て、何で来て、誰と来て、何回目で、泊まったのか日帰りか。これは広告代理店の調査ではなく、自治体が自分の浜で取った一次データです。
この記事では、公表された数字を事業者の意思決定に翻訳します。何が公表されたか、南紀の誰にどう効くか、10月中に決めるべきこと、そして「この数字をこう読むと危ない」という誤解までを、一次資料のリンク付きで整理します。手元に、今年7月と8月の自店の売上と客数を用意しながら読み進めてください。
目次
田辺市が9月9日に公表した数字|夏の来場41,604人・前年度から約2割増
まず事実です。田辺市「令和8年度 田辺扇ヶ浜海水浴場の利用者数及びアンケート結果」(2026年9月9日公表・PDF)によると、今季(令和8年7月1日〜8月31日)の来場者数は41,604人でした。前年度(令和7年度)は34,291人ですから、7,313人・約21.3%の増加です。
増加の理由について、資料は次のように記しています。
今年度は期間中、天候に大変恵まれ、外国人客が増加したことから、来場者は約2割増加しました。
開設期間は62日間なので、1日平均はおよそ670人。前年度は同じ62日で約550人でしたから、1日あたり約120人増えた計算になります。「今年は人が多かった気がする」という体感は、数字の上でも裏付けられていたことになります。
| 年度 | 夏(7/1〜8/31)の来場者数 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 平成21年度 | 114,476人 | 資料中の最多年 |
| 令和5年度 | 54,644人 | 直近で5万人台だった年 |
| 令和6年度 | 30,351人 | 資料中では直近の底 |
| 令和7年度 | 34,291人 | 前年度 |
| 令和8年度 | 41,604人 | 今季(前年度比 約2割増) |

ここで大事なのは、2割増でも水準としてはまだ低いことです。今季の41,604人は、資料中で最多の平成21年度(114,476人)の約36%、令和5年度(54,644人)の約76%にとどまります。「回復の途中」であって「戻った」ではありません。この読み方の違いが、来季の仕入れや人員の判断を大きく左右します。詳しくは後半の「読み違えないために」で扱います。
公表元は田辺市観光振興課で、資料には問い合わせ先として地域観光係(電話0739-26-9929)が記載されています。なお、施設の内容や開設期間は田辺市「田辺扇ヶ浜海水浴場 海上遊具・ビーチスポーツ場」、海の家やレンタル品の詳細は田辺観光協会「田辺扇ヶ浜海水浴場」で確認できます。
現時点で公表されているのはここまでです。 外国人客が「何人増えたか」「どの国から来たか」の実数、月別・日別の内訳、アンケートの回収数の明記、来季の開設方針については、今回の資料には記載がありません。本記事でもそれらは書きません。
アンケートが映した客層|近畿圏65.0%・自家用車81.6%・家族連れ71.8%
同じ資料には、来場者アンケートの集計が載っています。まずは最も多かった回答から見ます。
| 設問 | 最も多かった回答 | 割合 |
|---|---|---|
| どこから来たか | 近畿圏 | 65.0%(67人) |
| 交通手段 | 自家用車 | 81.6% |
| 誰と来たか | 家族 | 71.8% |
| 来場回数 | 1回目(初めて) | 55.3% |
| 日帰りか宿泊か | 宿泊(旅行) | 36.9%(38人) |
| 良かったところ | 無料シャワー | 64.1% |
| ほかに立ち寄る目的地 | ない | 45.6% |

出発地と交通手段:「田辺市外から車で来る客」が主役
出発地は、市内18.4%(19人)、市内以外の県内3.9%(4人)、近畿圏65.0%(67人)、その他12.6%(13人)。つまり8割強が田辺市外からの来訪です。交通手段は自家用車81.6%が圧倒的で、二輪車8.7%、電車6.8%、貸切バス1.0%と続きます。
車で来ているということは、(1)荷物が重くても買える、(2)駐車できる店しか候補に入らない、(3)帰り道にもう1か所寄る余力がある、という3つを同時に意味します。飲食店・小売店にとっては、ここが最初の判断材料です。
来場回数:初めての人が55.3%、常連は27.2%
来場回数は1回目55.3%、2回目12.6%、3回以上27.2%、無回答4.9%。過半数が初来場です。これは「新規が取れている」という良い知らせであると同時に、「その半数以上は、あなたの店の存在を知らない」という意味でもあります。
一方で3回以上が27.2%いることも見落とせません。毎年来ている層が一定数いるので、来季に向けた案内が届けば戻ってくる可能性がある層です。
宿泊か日帰りか:宿泊(旅行)36.9%が日帰り34.0%を上回った
日帰り34.0%(35人)に対し、宿泊(旅行)36.9%(38人)、宿泊(帰省)8.7%(9人)。海水浴の客が、田辺やその周辺で泊まっているという構図です。海水浴場が単なる日帰りスポットではなく、宿泊需要とつながっていることが数字で確認できます。なお資料には「どちらにお泊りか」「何泊か」という続きの設問もありますが、本記事では割合が確認できた項目のみを扱います。
数字を扱う前に:分母は103件です
この記事で扱う割合の分母は103件です(資料に回収数の明記はありませんが、「市内19人=18.4%」「日帰り35人=34.0%」などの人数と割合から逆算できます)。4万人規模の来場に対する103件ですから、傾向を見るには十分でも、金額の計画をそのまま立てるには弱い標本です。この前提は最後まで持ち続けてください。
南紀の事業者に効くのはどこか|「寄り道なし45.6%」が示す取りこぼし
ここからが本題です。公表データのうち、事業判断に直接効くものを整理します。
飲食・小売:45.6%が「ほかに寄る予定はない」と答えている
「ほかに立ち寄る目的地はあるか」への回答は、ある33.0%(34人)、ない45.6%(47人)、無回答21.4%(22人)。浜に来た人の多くが、浜だけで帰っているということです。
回答103件の割合をそのまま4万人に当てはめるのは乱暴ですが、規模感の目安として掛けてみます。41,604人×45.6%=約1万9,000人。1日平均に直すと、毎日およそ300人が「今日はここだけ」と思いながら扇ヶ浜にいた計算になります。仮にそのうち1%が帰りに1軒立ち寄り、客単価800円だとすれば、1日約2,400円、62日で約15万円。1店舗としては小さくても、看板1枚・POP1枚の投資対効果としては十分に成立する規模です(この計算はあくまで仮定の試算で、実績ではありません)。

宿泊:海水浴客は「泊まる客」でもある
宿泊(旅行)36.9%という数字は、南紀の宿にとって意味があります。海水浴は日帰りレジャーだと決めつけて、夏のプラン設計から海水浴客を外している宿があるなら、前提を見直す材料になります。しかも来場者の8割強は市外から、8割超は車。駐車場の有無、クーラーボックスや濡れた水着の扱い、チェックイン前後の荷物預かりといった「海帰りの客が困ること」への対応が、そのまま選ばれる理由になります。
季節波動のある商売で営業日や商品構成をどう組むかは、宿の閑散期対策|予約データ・限界利益・現場負荷から選ぶ90日の実務ガイド【2026年】で扱った考え方がそのまま使えます。繁忙期の設計も、結局は「自店の弱い日と強い日を数字で特定する」ところから始まります。
体験・アクティビティ:評価が集まったのは無料の設備だった
「良かったところ」(複数回答)の上位は、無料シャワー64.1%、砂浜52.4%、水質48.5%、駐車場47.6%、景色43.7%、トイレ35.9%。一方で、海の家26.2%、温水シャワー18.4%、ビーチスポーツ場17.5%、海上遊具10.7%と、有料・体験系の項目は軒並み低いという結果でした。
これは「体験の質が低い」という意味ではありません。複数回答で選ばれる項目は、基本的に「使った人」しか選べません。つまり使われていない=知られていない、あるいは利用のハードルが高い可能性が高い。海上遊具10.7%は、10人に9人は使っていないということです。体験を売る側にとっては、商品の改善より先に「浜にいる人にどう届けるか」が課題だと読めます。
情報源:オンライン起点が47.6%、紙は15.5%
「何で知ったか」は、その他39.8%が最大で、口コミ17.5%、SNS17.5%、HP12.6%、情報誌・新聞9.7%、ホテル・宿4.9%、パンフレット2.9%、看板・横断幕2.9%、TV・ラジオ1.0%。
口コミ・SNS・HPを合わせると47.6%で、情報誌・パンフ・看板の合計15.5%を大きく上回ります。ただし最大は「その他」39.8%です。選択肢に収まらない経路——地元での日常的な認知、家族や同行者が決めた、通りがかり——が4割近くを占めるという事実も、同じくらい重要です。
10月中に決めておくこと|来季の営業日と売り場の仮組み
シーズンが終わった直後の10月は、記憶が残っていて、かつ来季まで時間がある唯一の時期です。ここで決めておくと、来年の6月に慌てません。以下のプロンプトは、ChatGPTなどの対話型AIに貼り付けて使います。( )の中を自店のことに書き換えてください。
自店の7月・8月を2か月分だけ並べる
最初にやるのは、市のデータではなく自店のデータの棚卸しです。7月1日〜8月31日の日別の売上と客数、そして「海水浴帰りらしき客」の感覚値。レジデータがなくても、日報や手書きの売上表で十分です。
あなたは観光地の小売・飲食の経営分析に詳しいアドバイザーです。以下の材料から、私の店の今夏(7月1日〜8月31日)を整理してください。
【材料】
・業種と場所: (例: 紀伊田辺駅近くの弁当・惣菜店)
・7月の売上と客数: (例: 売上◯◯万円 / 客数◯◯人)
・8月の売上と客数:
・特に忙しかった日と曜日: (例: 8月の土日、盆の3日間)
・特に暇だった日:
・営業日と定休日: (例: 水曜定休、8月は無休)
出力: ①7月・8月で最も売上が立った日・立たなかった日の特徴 ②営業日設定で見直す価値がある点 ③来季に測るべき指標を3つ。材料にない数字は使わず、推測は「仮説」と明記してください。
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来季の営業日・営業時間を仮決めする
扇ヶ浜の開設期間は例年7月1日〜8月31日です(令和8年も同様でした)。ただし来季の開設方針は今回の資料では公表されていないため、「例年どおりなら」という前提で仮決めし、市の発表が出たら確定させる二段構えにします。
あなたは海水浴場の近くで営業する店の店長です。以下の材料から、来年の夏(7月1日〜8月31日を想定)の営業日・営業時間の案を3パターン出してください。
【材料】
・業種と席数/売り場面積:
・現在の営業時間と定休日:
・スタッフの人数と、夏に増員できる人数:
・今夏いちばん混んだ時間帯: (例: 15時〜17時の海帰り)
・来場者の傾向: 8割強が市外から自家用車、7割が家族連れ、宿泊(旅行)36.9%・日帰り34.0%
出力: 各パターンについて「営業時間」「定休日の扱い」「必要な人員」「増える固定費の目安の考え方」「向いている店の条件」を表で。人件費の実額は私が入れるので、計算式だけ示してください。事実に基づかない推測は「仮説」と明記してください。
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注意点は、いきなり無休にしないことです。62日間フル稼働は人が持ちません。「8月の土日だけ延長」のように、増やす日を限定するほうが続きます。
「車で来た家族連れ」に向けた商品を1つ作る
自家用車81.6%・家族71.8%という組み合わせは、商品設計にそのまま使えます。重い、かさばる、冷たい、人数分ある——これらは車客だけが買える条件です。
あなたは観光地の商品企画が得意な人です。以下の材料から、車で来た家族連れが「帰りに1軒だけ寄る店」で買う商品のアイデアを10個出してください。
【材料】
・業種と扱える商品:
・調理設備/仕入れの制約: (例: 冷凍庫が小さい、揚げ物はできる)
・想定客単価の上限: (例: 1,500円)
・店から扇ヶ浜までの距離と駐車場の有無:
条件: ①車で持ち帰れる(重さ・かさばりを気にしない)②家族4人で分けられる ③保冷が1〜2時間もつ、のいずれかを満たすもの。新規設備投資が必要なものは除く。原価と売価は私が入れるので、計算の枠だけ示してください。
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もう1本、値付けと売り場の判断用です。
あなたは小売の売り場づくりに詳しいアドバイザーです。以下の商品を、海水浴帰りの家族連れに向けて売るための売り場案を作ってください。
【材料】
・商品名と売価:
・売り場の広さと、レジまでの動線:
・店頭で使える掲示物: (例: A4のPOP、店頭のぼり、黒板)
出力: ①商品を置く位置と理由 ②POPに書く言葉を3案(20字以内・値引き表現は使わない)③レジ横で追加購入を促す小物の候補3つ。誇大な表現や、根拠のない「人気No.1」等は使わないでください。
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初めて来た人に「存在を知らせる」導線を直す
初来場55.3%は、裏返せば「初めての人には店の存在が伝わらなかった」という数字です。浜にいる人が、スマホで「田辺 ランチ」「扇ヶ浜 近く カフェ」と調べたときに出てくるかどうかが勝負になります。
あなたはGoogleビジネスプロフィールの運用に詳しい人です。以下の材料から、海水浴帰りの人に見つけてもらうための改善点を優先度順に10個出してください。
【材料】
・店名と業種:
・扇ヶ浜からの距離と所要時間: (例: 徒歩7分 / 車4分)
・駐車場: (台数、なければ「なし」)
・夏の営業時間:
・現在の写真の枚数と、直近の投稿日:
・口コミの件数と、未返信の件数:
出力: 各項目に「作業時間の目安」「無料でできるか」を付けてください。私の店にない設備・サービスは書かないでください。
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口コミ・SNS・HP合計47.6%という情報源の内訳を踏まえると、発信の設計もここに紐づきます。地域の宿・店の発信の組み立て方は、和歌山の温泉旅館SNS集客|予約につなぐ30日運用ガイド【2026年】で具体的に整理しています。
外国人客への一言掲示を、小さく作る
資料は増加の要因として外国人客の増加を挙げ、自由意見にも「海外の人への注意喚起重要。」という声が載っています。ただし外国人客の実数も国籍別の内訳も公表されていません。だからこそ、最初の投資は小さく始めるのが合理的です。
あなたは観光地の店舗の多言語掲示を作るのが得意な人です。以下の内容を、日本語・英語・韓国語・繁体字中国語の4言語で、掲示用に短く書いてください。
【材料】
・伝えたいこと: (例: 濡れた水着のままのご入店はご遠慮ください / 砂を落としてからお入りください / 店内は禁煙です)
・店名:
・トーン: 禁止ではなく、お願いとして伝わる表現
条件: 各言語15語以内。直訳ではなく、その言語で自然な掲示表現にしてください。訳に自信がない箇所は「要確認」と明記してください。
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メニューそのものの多言語化まで進める場合は、県の仕組みを使う手もあります。手順は和歌山の多言語メニュー作成7ステップ|EAT WAKAYAMA入力・検収・更新ガイド【2026年】にまとめています。受け入れ体制の整え方は小さな宿のインバウンド対策|英語が苦手でも整えられる5場面と実務テンプレ10本【2026年】が参考になります。
来季に「測る方法」を先に決める
今回の記事でいちばん大事なのがこれです。来季も市が同じ資料を出すとは限りませんが、自店のデータは自分で取れます。
あなたは小さな店の数値管理に詳しいアドバイザーです。以下の材料から、来年の夏に記録すべき項目と、その記録方法を設計してください。
【材料】
・業種:
・レジ/POSの有無: (例: 手書きの売上表のみ)
・1日に対応できる記録の手間: (例: 閉店後5分まで)
出力: ①毎日記録する項目を5つ以内 ②記録用の表の列構成 ③シーズン終了後に計算する指標を3つ(例: 海水浴期間の客数、そのうち観光客と思われる比率の推定方法)。手間が5分を超える設計は避けてください。
※そのままコピーして使えます
あなたは接客の設計が得意な人です。レジで自然に聞ける、来店客の来訪経路を把握するための質問を5つ作ってください。
【材料】
・業種と客層:
・レジでの平均対応時間: (例: 40秒)
条件: 質問は1つあたり5秒以内で終わること/個人情報は聞かないこと/答えなくても失礼にならない言い方にすること。記録の取り方(正の字、レジのボタン等)も添えてください。
※そのままコピーして使えます
業種別に見た、このデータの当て方
同じ数字でも、業種によって効く箇所が違います。自分の行から着手してください。
| 業種 | 今季データから読める打ち手 | 10月中に決めること |
|---|---|---|
| 飲食店 | 「寄り道なし45.6%」+海帰りの時間帯。15時以降の集客余地が大きい | 来季の営業時間(延長するか)と、砂・濡れた水着への対応方針 |
| 小売・土産 | 自家用車81.6%・家族71.8%。重い・かさばる・人数分が売れる条件 | 持ち帰り前提の商品を1つ決め、仕入れ先に来季分を相談 |
| 宿泊施設 | 宿泊(旅行)36.9%。海水浴客は泊まる客でもある | 海帰り客向けの受け入れ(荷物預かり・水着の扱い)と夏季プランの骨格 |
| 体験・アクティビティ | 海上遊具10.7%・ビーチスポーツ場17.5%。使われていない可能性 | 浜にいる人への告知手段(現地掲示・当日予約の導線)を1つ決める |

共通しているのは、どの業種も「浜にいる人に、浜にいるうちに知らせる」ことが起点になる点です。初来場55.3%・寄り道なし45.6%という2つの数字は、来てからでは遅い層がそれだけいるという意味でもあります。
来季準備が進んでいる店・止まっている店(チェックリスト)
現在地の確認に使ってください。今夏の記録と来季の段取りを見ながら、当てはまるものにチェックを入れます。
- □ 今年7月・8月の日別の売上と客数が、紙でもデータでも残っている
- □ 今夏いちばん混んだ時間帯を、曜日つきで即答できる
- □ 扇ヶ浜からの距離・所要時間が、店の掲載情報に書いてある
- □ 駐車場の有無と台数が、ネット上の情報に明記されている
- □ 海水浴帰りの客を想定した商品・メニューが1つ以上ある
- □ 砂や濡れた水着への対応方針が、スタッフ間で共有されている
- □ 未返信の口コミがゼロになっている(外国語の口コミも含む)
- □ 来季の営業日・営業時間を、いつまでに決めるか日付が入っている

見落とされやすいのは、上から2つ目の「混んだ時間帯を曜日つきで言えるか」です。ここが曖昧なまま営業時間を延ばすと、人件費だけが増えます。チェックが2つ以下でも問題ありません。この記事の手順は、上から順に進めればチェックが1つずつ埋まる並びにしてあります。
この数字を読み違えないために
公表データは、読み方を誤ると判断を悪化させます。特に起きやすい4つを挙げます。
誤解1: 「2割増だから海水浴需要は戻った」と考える
❌ よくある間違い: 前年度比約2割増という見出しだけを見て、来季の仕入れや人員を「復調前提」で増やす。
⭕ 正しいアプローチ: 水準で見る。41,604人は、資料中で最多の平成21年度114,476人の約36%、令和5年度54,644人の約76%です。増加基調ではあっても、過去の水準には戻っていません。
なぜ重要か: 仕入れと人件費は先に出ていく費用だからです。「増えた」を「戻った」と読み替えた瞬間、在庫とシフトが過剰になります。増分(前年度+約2割)の範囲で設計するのが安全です。
誤解2: アンケートの%を4万人に掛けて売上計画にする
❌ よくある間違い: 「45.6%が寄り道なし、だから約1万9,000人が見込み客」として、その数字で仕入れ量を決める。
⭕ 正しいアプローチ: 割合の分母は103件です。方向性(どちらに寄っているか)の判断には使い、金額と数量は自店の実績から決めます。本記事の試算も、規模感を掴むための仮定として書いています。
なぜ重要か: 4万人に対する103件の標本では、数ポイントの差は誤差の範囲に収まります。「45.6%と33.0%のどちらが多いか」は読めても、「45.6%が46.8%だったら」までは読めません。
誤解3: 「SNSは17.5%しかないから発信は無駄」と結論づける
❌ よくある間違い: 情報源の最大が「その他39.8%」であることを見て、オンラインの発信をやめる。
⭕ 正しいアプローチ: 口コミ17.5%・SNS17.5%・HP12.6%を合計すると47.6%で、情報誌・新聞9.7%+パンフ2.9%+看板・横断幕2.9%の合計15.5%を大きく上回ります。オンライン起点が主流という読み方が自然です。
なぜ重要か: 「その他」が大きい調査で、残りの選択肢を個別に比べて優劣を決めると判断を誤りやすいからです。同じカテゴリはまとめてから比べてください。
誤解4: 「外国人が増えた」を自店の数字として扱う
❌ よくある間違い: 資料の「外国人客が増加」という記述から、来店客の国籍構成や人数を推定して、多言語の大きな投資を決める。
⭕ 正しいアプローチ: 今回の資料には外国人客の実数も国籍別の内訳もありません。分かっているのは、市が増加要因として挙げていることと、自由意見に「海外の人への注意喚起重要。」という声があることだけです。まずは掲示物や短い案内文など、費用の小さいものから始めます。
なぜ重要か: 公表されていない数字を前提に投資規模を決めると、後で検証できないからです。和歌山県全体のインバウンドの推移は別の統計で確認できるので、判断材料を増やしたい場合はそちらと突き合わせるのが筋です。
ここまでの内容は、無料の道具と自店の記録だけで進められます。それでも「日別の記録を取る手が足りない」「掲載情報の直し方が分からない」という場合はあります。私たちは白浜(和歌山)への移住準備を進めながら、観光地の宿や店舗のSNS運用・集客支援に取り組んでいます(株式会社Tip ※当コラムの運営元です)。無料ヒアリングは最大60分、ご用意いただくのは今夏の売上メモだけで、契約前提の営業はいたしません。提案が不要なら30分の情報交換のみでも歓迎です。
和歌山全体の夏の動きと並べて読む
扇ヶ浜の数字を単体で見ると判断を誤るので、県の統計と並べます。
和歌山県「令和7年主要観光地における夏季の観光客入込状況について」(令和7年10月30日・PDF)によると、令和7年(2025年)夏季の主要観光地の観光客入込は、宿泊客数が約791,300人泊(前年比約106.8%)、日帰り客数が約2,579,300人(同約109.5%)、総数は約3,370,600人(同約108.9%)でした。県全体でも、夏の人出は日帰りを中心に増えていたことになります。
ここで注意が必要です。県のこの集計は令和7年(2025年)夏のもので、令和8年(2026年)夏の県集計は本記事の執筆時点(2026年9月16日)では公表されていません。 つまり今回の扇ヶ浜の41,604人は、県全体の同年データと直接比べられる状態にはまだありません。同じ年で比べられるようになるのは、県の夏季集計が出たあとです。
それでも言えるのは、県全体が日帰り中心に伸びていた年の翌年に、扇ヶ浜では宿泊(旅行)36.9%が日帰り34.0%を上回ったという事実です。少なくとも「扇ヶ浜に来る人は日帰りばかり」という前提は、今季のデータでは支持されません。
和歌山県全体の観光客数の調べ方や、速報値と確定値の違いについては和歌山県の観光客数と統計|3,392万人の内訳と調べ方7ステップ【2026年9月】で整理しています。自店の事業計画や融資の申請書に数字を書く場面では、こちらの手順で一次資料に当たってください。
よくある質問
Q. 2026年の扇ヶ浜海水浴場の利用者数は何人ですか?
41,604人です。令和8年7月1日から8月31日までの期間で、田辺市が2026年9月9日に公表しました。前年度(令和7年度)は34,291人で、約21.3%の増加です。
Q. アンケートの回答は何件ですか?
資料に回収数の明記はありません。ただし「市内19人=18.4%」「日帰り35人=34.0%」といった人数と割合の対応から、割合の分母は103件と分かります。4万人規模の来場に対する103件なので、傾向を掴む用途に限って使うのが妥当です。
Q. どこから来た人が多いのですか?
近畿圏が65.0%(67人)で最多です。田辺市内は18.4%(19人)、市内以外の県内は3.9%(4人)、その他が12.6%(13人)。市外からの来訪が8割強を占めます。交通手段は自家用車が81.6%です。
Q. 日帰り客と宿泊客はどちらが多いですか?
宿泊(旅行)36.9%が、日帰り34.0%をわずかに上回りました。ほかに宿泊(帰省)が8.7%です。宿にとっては、海水浴客を夏季プランの対象から外さない根拠になります。
Q. なぜ今年は増えたのですか?
資料には「今年度は期間中、天候に大変恵まれ、外国人客が増加したことから、来場者は約2割増加しました。」と記載されています。天候と外国人客の2点が市の説明です。それ以上の要因分析や、外国人客の実数は公表されていません。
Q. 来季の営業日は、この数字だけで決めていいですか?
いいえ。市のデータは「浜にどれだけ人が来たか」を示すもので、自店に何人来たかは分かりません。来季の営業日は、今夏の自店の日別売上・客数と突き合わせて決めてください。季節による繁閑の設計は宿の閑散期対策|予約データ・限界利益・現場負荷から選ぶ90日の実務ガイド【2026年】の考え方が飲食・小売にも応用できます。
Q. 白良浜など他の海水浴場と比べられますか?
本記事の執筆時点では、同じ基準で比較できる公表値を確認できませんでした。和歌山県の夏季の入込統計は主要観光地の単位で集計されており、海水浴場ごとの来場者数は掲載されていません。比較したい場合は、各市町村の公表資料を個別に確認する必要があります。
Q. 資料の原本はどこで見られますか?
田辺市の報道資料PDFで全文が公開されています。内容の問い合わせ先として、資料には田辺市観光振興課 地域観光係(電話0739-26-9929)が記載されています。
まとめ:10月のうちに終わらせておくこと
- 今日やること: 今年7月・8月の日別の売上と客数を1枚にまとめ、いちばん混んだ時間帯を曜日つきで書き出す
- 今週中にやること: 扇ヶ浜からの距離・所要時間と駐車場の有無を、自店の掲載情報に明記する
- 今月中にやること: 車で来た家族連れ向けの商品を1つ決め、来季の営業日・営業時間の案を3パターン作って仮決めする
来季の開設方針も、外国人客の実数も、現時点では公表されていません。分かっているのは、今季4万1,604人が浜に来て、その半数近くが「ここだけ」で帰ったという事実です。この1点だけでも、10月に動く理由としては十分です。
参考・出典
- 田辺市「令和8年度 田辺扇ヶ浜海水浴場の利用者数及びアンケート結果」(2026年9月9日公表/田辺市観光振興課 地域観光係): https://www.city.tanabe.lg.jp/material/files/group/1/20260909kankou.pdf(参照日: 2026-09-16)
- 田辺市「田辺扇ヶ浜海水浴場 海上遊具・ビーチスポーツ場」(開設期間・施設): https://www.city.tanabe.lg.jp/soshiki/shokokanko/2/5/1/1397.html(参照日: 2026-09-16)
- 和歌山県 地域振興部観光局観光振興課「令和7年主要観光地における夏季の観光客入込状況について」(令和7年10月30日資料提供): https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/062400/doutai2_d/fil/R7kaki.pdf(参照日: 2026-09-16)
- 和歌山県「和歌山県の観光客動態」(調査報告書の一覧): https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/062400/doutai2.html(参照日: 2026-09-16)
- 田辺観光協会「田辺扇ヶ浜海水浴場」(海の家・レンタル・ビーチスポーツ場の内容): https://www.tanabe-kanko.jp/view/sizen/ogigahama-beach/(参照日: 2026-09-16)
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※本記事の数値は、上記の公表資料に基づく2026年9月16日時点の内容です。試算として示した金額は仮定の計算であり、実績ではありません。実績は代表およびメンバー個人としての活動を含みます。